軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十八話 奇襲(後編)

夜陰に紛れて、王都中から冒険者たちが一斉に動き出した。俺たちの部隊も、斥候リネットを先頭に王都の夜道を進む。

俺たちが目指す王城に到着したときには、王城の門兵はすでに倒れていた。手筈通り、順調だ。

リネットと何人かの身軽な冒険者たちが城壁を器用によじ登っていき、警戒しながら城壁の上に立つ。

しばらくすると、大きな音を立てて城門がゆっくりと開いた。

「侵入者だ!」

さすがにバレずにはいられないか。

すでに百人を超える冒険者が集まっている。

「行くぞ!」

俺の宣言とともに、冒険者が一気に城門へ突撃して行く。

城門の中の敷地内には、王国騎士たちがまばらに集まり始めていた。

必要のない戦闘をする必要はない。

「 濃霧(ミスト・ヴェール) 」

魔導士ノクティアが魔法を使い、騎士たちの視界を塞ぐ。

「走り抜けるぞ」

俺たちは王城本体を目指す。逃げられたら厄介だ。全速力で向かわなければ。

王城の建物に近づくほど、王国騎士が増えてくる。

冒険者の複数の部隊が騎士たちに向かい、道を開き、他の部隊が先に進んでいく。

やがて建物に到達すると、今度は門兵たちが襲いかかってくる。

「ここは私が」

剣を抜いたクローデリアが門兵たちに向かうと、瞬く間に全ての門兵が地面に倒れる。

「峰打ちよ。かなり手加減したのだけれど、大丈夫かしら」

ただでさえ強いクローデリアが聖女の 強化(バフ) を受けているのだ。もはやその強さは人間の域ではあるまい。

重戦士ガルドが城の門に突進する。

激しい音を立てて、門が砕け散った。

「こりゃすげえ」

確かに聖女の加護の威力は凄まじいのだな。

俺たちは城内に侵入する。

近衛兵、王国騎士に加え、宮廷魔導士たちも集まってきて応戦の構えを見せる。

また冒険者たちが引き剥がされて行くが、俺たち主力部隊は構わず前に進む。

「奥よ!」

クローデリアが指示するのは、国王の寝所。これだけ騒がしくなっていれば避難している可能性もあるが、それでもまだ付近にいる可能性は高いだろう。そのための夜の奇襲なのだ。

城内の狭まった通路を塞ぐように兵士たちが押し寄せる。

「俺に任せろ!」

重戦士ガルドが盾を構える。

「聖女様ほどではなくとも、私だって補助魔法は得意ですよ」

神官セシルが魔法を発動する。

「 聖盾(ホーリー・シールド) 」

淡い光がガルドを覆う。

「うおぉぉぉ!」

ガルドが兵士たちに突進すると、面白いように兵士たちが弾き飛ばされて行く。

俺とクローデリアはガルドが作った道を進む。

「もうすぐよ」

クローデリアが言う。

「よし、ここで俺たちが兵どもを止めておく。あとは頼んだぞ」

ガルドが後ろに振り向き、盾を構えて仁王立ちする。その後ろにセシルとノクティアも待機する。

「すぐ済むから、足止めは少しの間でいい。危なくなったらすぐに降伏してくれ」

それだけ言い残して、クローデリアと俺は国王のもとに進む。

「おそらく、あそこの兵士が守っている部屋よ」

ついに来たか。皆、ありがとう。

そして俺たちが小走りして進もうとしたところに、柱の陰から、一人の男が現れた。

勇者ソウマ!

国王の護衛をしているのか? それが勇者のやる仕事なのか?

「『剣姫』クローデリアではないか」

勇者ソウマが下品に舌なめずりする。

「まったくいい女ではないか。おまえは俺の女になるべきだ」

クローデリアが口元を抑えてる。具合が悪そうだ。

「クローデリア様、大丈夫ですか?」

「この男が吐き気を催すほど気持ち悪くて憎いの……。ごめんなさい、ユウマ。でもこの男だけは殺してしまうかもしれない」

「うーん、王国のためにも、その方がいいかもしれないですね」

そう俺が答えるなり、クローデリアが渾身のスキルを発動する。

「 滅却の(アナイアレイト・) 宣告(センテンス) 」

スキルを発動した瞬間、そこにいたはずの勇者ソウマが霧散し、消えた。焦げ臭い匂いと煙のようなものだけが上がった。

「これ以上ないくらい細切れにしてやったわ」

え? 斬ったってレベルじゃないでしょう? 素粒子レベルまで細かく切り刻まれてない?

「行きましょう」

「は、はい」

クローデリアが近衛兵を瞬時に倒し、俺たちは国王の寝所の前に立った。

俺はクローデリアに向けて頷く。

クローデリアが扉を開ける。

国王フリードリヒは……いた。

国王はベッドから立ち上がろうとしているところだった。

これだけ騒いでいるのに、すぐに逃げようともしていないとは。ひどい平和ボケだ。

「な、なんだ、貴様らは?」

国王が間抜けな声を出す。

「あなたを殺しに来たのですよ。この王国をまっとうな国にするために」

俺はそう国王に通告し、スキルを発動する。

罪状は、「民を虐げた罪」だ。

「 断罪の石投げ(コンデム・ストーン) 」

俺の手から放たれた石がまっすぐ飛翔し、国王の額の真ん中に当たる。

「ぐわっ!」

国王の額から血が流れる。

手加減はしたつもりだけど、大丈夫だよね? あなたには生きて終わりを見届けてもらわないと。

間もなく、国王の寝所に、次々と王国騎士や近衛兵が集まってくる。

ここまでだ。

俺は両手を上げ、降参の意思を示す。

それを合図に、クローデリアも剣を地面に放り投げた。

そして俺は捕縛された。