軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十六話 北方辺境伯の不可解な断罪(前編)

王城前広場の断罪台の周囲にはすでに多くの観衆が集まっていた。やはり注目の断罪らしい。

俺はクローデリアのご機嫌を伺いながら断罪の開始を待った。

やがて観衆がざわつきはじめた。

断罪の被告人と思われる人物が、断罪台に登場したのだ。それは壮年の貫禄のある人物だった。身なりは貴族のようにも見えたが、体つきは武人のようにたくましかった。

「ローゼンヴァルト辺境伯……?」

クローデリアが呟く。

辺境伯といえば、もちろん貴族で、名前のとおり伯爵相当の爵位だ。

しかし、王都の人間からすると、たとえ俺のようなモブ平民であっても、「辺境」と名前がつくだけで忌避し、蔑みの対象となる。それがたとえ貴族であっても、だ。

「なかなか面白い断罪になりそうですね」

「……」

ローゼンヴァルト辺境伯に続いて、いつものように宰相ジークフリートと王太子レオンハルトが登場し、歓声が上がる。

レオンハルトが手を振り、観衆に応え、静まるように手で示す。

そして、そのレオンハルトの口から断罪が宣言される。

「アルベルト・ローゼンヴァルト辺境伯。貴様を連続猟奇殺人罪でここに断罪する!」

観衆がざわつく。

連続猟奇殺人? その何か禍々しい響きに胸がざわついた。

「ではここからは私のほうで引き継がせていただきます」

真打ちジークフリートの登場だ。

「ローゼンヴァルト辺境伯。あなたは王都からの客人、しかも王政府の要人である三名を次々と殺害した。それもひどく猟奇的な方法で」

観衆は静まりかえり、ジークフリートの次の言葉を待つ。俺も思わず生唾を飲み込む。

「いずれの犠牲者も、両手足と首を切断され、目はくり抜かれて耳も舌も切り取られていたのだ。これはもはや人間の所業とは言えん!」

うわぁ、凄惨だな……。辺境の人間のやることは本当に理解できない。

「私はやっていない……」

ローゼンヴァルトは犯行を否定したが、ジークフリートは落ち着き払って続ける。

「あなたは王都の人間をあまりよく思っていないそうですね?」

ジークフリートの言葉にローゼンヴァルトが鼻で笑う。

「それは王都のやつらが辺境をバカにするからだ。必死に王国の国境を守る私たちを見下すやつらを好きになれると思うのか? 挙げ句の果てに、無実の罪で断罪されているんだぞ?」

ジークフリートが不敵な笑みを浮かべる。

「つまり、動機はあるということですね」

「ああ、王政府のやつらは殺したいくらい嫌いだ。だが、それでも私には理性がある。私はやっていない」

ローゼンヴァルトは改めて、はっきりと犯行を否定した。

「北方辺境伯領は、隣国と接する重要な拠点です。そのため、屈強な兵士も多い。しかし、それでも今回の犠牲者のように、首と四肢と胴体をも一刀のもとに切断できるのは、北方でも最強の剣士であるあなただけなのです。検視官からも、剣によるたった一撃での切断面で間違いないと報告を受けています」

「王都には『剣姫』がいるだろう?」

クローデリア? 確かにクローデリアならできるだろうけれど、クローデリアは絶対に無意味に人を殺さないし、そんな残虐趣味もないことは俺が誰よりもわかっている。

とんだ言いがかりだ。

「『剣姫』クローデリア様は、犯行の日時に、パーティーメンバーとダンジョンに潜ってらした。犯行は不可能だ」

さすがジークフリートだ。

「辺境伯ごときが、王都の人間を欺こうとするでない!」

王太子レオンハルトが突然一喝した。今回は相手が男で婚約破棄の 件(くだり) ができなかったから苛ついているのか?

しかし、王太子といえば、王都の華ともいうべき存在だ。観衆もレオンハルトに扇動されて、ローゼンヴァルトに向けて怒号を上げる。

俺もそろそろ気分が乗ってきた。

猟奇殺人犯の辺境人となれば否が応でもヘイトは高まる。その上、俺の相棒でありご主人様のクローデリアに嫌疑をかけようとしたことが何よりも許せない。

俺は腰の石袋を探り、石を取り出す。

【スキル: 断罪の石投げ(コンデム・ストーン) 】【効果:悪人に必中……スキル使用者が視認可能な範囲内で、設定した罪状に最も近い者が「悪人」とされる。同等の罪状の者が複数人いる場合はランダムの一人に当たる。該当者がいない場合は自らに石が向く】

罪状はもちろん「連続猟奇殺人罪」だ。

「いけ! 『 断罪の石投げ(コンデム・ストーン) 』」

俺の手から放たれた石が、断罪台に向けて飛んで……

行かずに逸れた……。