作品タイトル不明
受付嬢三年目・魔法世界の悪魔
「力を貸してください」
座り込んだまま、ロックマンを取り囲んでいる皆に声を掛ける。
防御膜は今、ボリズリーさんが張っていた。所長は力尽きてしまい今は騎士団長の隣で目を閉じて氷に包まれている。
ゾゾさんやアルケスさん、ハリス姉さんもいつなんどき何があってもいいようにとボリズリーさんの傍で待機をしていた。
マリスはロックマンにしがみついて泣いている。
王様は深刻な顔をしてそれを見ている。
貴族達の中には外で戦うことを選んだのか、数が減っているのが分かった。
氷漬けになっている人数が増えている。
ゼノン王子は片足が動かせなくなっている。
「どうすればいいの、ナナリー」
ベンジャミンがしゃがんで私の瞳を見つめた。
彼女の言葉に全員が私へ耳を傾けた。
「無理にとは言わない。危険なのも分かってる。それでも誰か、私と一緒にシュテーダルへ守護精の呪文で、攻撃をしてほしい」
勢いを止めるだけでいい。
気をそらすだけでいい。
体勢を崩すだけでいい。
「ここで仕留めるんだな」
ゼノン王子が私に確認をとった。それに首を頷ける。
「分かった、力を貸そう」
「殿下、その身体では無茶です!」
ゼノン王子の肩を支えるニケが叫んだ。彼女がそう言うのも無理はない。ただでさえ王子の片足は凍りかけているのだ。そんな状態で魔法を使うとなれば、その後は目に見えていた。ニケはロックマンの姿を見て、王子まであの状態にさせることはできないと一生懸命に彼を引き留めている。
「できる奴がアレを止める。そうしなければどのみち、俺もお前も、全員終わりなんだ」
どうしても意思を曲げないゼノン王子に、ニケも涙目になって反論するが、彼が首を縦に振ることはなかった。シュテーダルを倒したからと言って、皆が元の状態に戻るのかは定かでない。
そんな不確定の中、自殺行為にも似たことをさせる身として、やめてくれ、いや出てくれ、なんて言うことはできない。
騎士の中には本当にそれで倒せるのかと反論する人もいた。
「それが一番良い方法だと、僕は思うがな」
「なんだと! そんなわけ……ん?」
僕は、と上から聞こえてきた声に皆が反応したが、聞き覚えの無い声に皆首を傾げる。
上? と不思議に思い全員が顔を真上に向けると、そこには意外な人物がいた。
「マイティア王子!?」
「来てやったぞ、人間ども」
「ゼノン久しぶりね!」
「ベラ!」
セレイナ王国で出会ったベラ王女と、そのベラ王女の使い魔らしきものに乗せられたマイティア王子がふよふよとそこに浮いていた。
意外な組み合わせでの登場に私は開いた口がふさがらない。
海の王国へ行ったことのある私や他の五人以外は、ベラ王女はともかく魚人であるマイティア王子の姿に目が点になっている。
「ベラ、お前無事だったのか。それよりどうしてここに」
「海王様の命令でこのマイティアっていう魚人が、大陸が異変を起こした直前に王都の人間と王族を海の王国に匿ってくれたのよ。それからしばらくして氷漬けになった人たちが魔物に破壊されそうになっているから、それを阻止するために地上に魚人たちが出て、今このドーランにも着いたってわけ。彼らって、地上に出ると魔法が自分にしか効かなくなるんですって」
「ようはお前たちの魔法や魔物にやられはしないが、逆に魔法をかけることもできない。魔法の理がずれているからな。素手で戦うことになるぶん幾分か面倒だ」
マイティア王子は自分の身体を浮かせて私の目の前に降りてくる。他の人達は「人魚?」「海の王国?」と困惑気味に彼らを見ていた。
「このドーランの王は誰だ」
「……私だが」
ゼロライト国王が前に出てくる。王様は海の王国の王子である彼を信じられない物でも見るかのように目を見張っていた。そして何故王子自ら、ここへわざわざ来てくれたのかと疑問をぶつける。
「それは、海王の血縁者がこの王国にいるからだ」
「血縁者?」
「かつて海王の娘が王国を飛び出し、そしてどうしてか奇跡的に人間へと変身を遂げた。その娘は僕の姉にあたる人物だが、どうやらこの国で子をもうけたらしいのだと、海王である父から先日やっと聞くことが出来た。――そしてお前はやはり、姉上の娘であったか」
マイティア王子が私の頭を、その鱗だらけの手で撫でつけた。