軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

*創造物語集・第一章『六つの精霊と罪(デラキュソス)』後編

「食べられちゃう!」

「嫌だ!」

なんと五つの精霊が作ってしまった黒い精霊は、五つの力を持ってしまったのです。

火も水も地も雷も風の力もすべて持ってしまった黒い精霊には、五つの精霊たちがどんなに頑張っても、とても敵いそうにありませんでした。

「氷がワタシのトコロへクルナラバ、イツツにはテヲ出さないでやろう。ワタシのアラタナチカラとナルのだ」

五つの精霊たちがとらわれている中、氷は言われるがままに、黒い精霊へ近づいていきました。

「氷! 駄目だぞ!」

「でも、そうしたら火たちが」

「構うもんか! 俺たちが氷に内緒でやったんだ! 自業自得なんだ!」

今にも食べられてしまいそうな火が、氷に向かって叫びました。

みんな同じように叫びました。

だれもが仲間をきけんな目にあわせてまで、助かりたいなんて思わなかったのです。

「やだ、やだ、みんなをたべないでっ」

「ナニヲ――――グギャァ!!?」

けれど氷は全部の力を振り絞って、その大きくて黒い精霊をカチコチに凍らせました。五つの力を持った黒い精霊は、火の攻撃も、水の攻撃も、地の攻撃も、雷の攻撃も、風の攻撃も、全て使って氷の力を破壊させようとしましたが、唯一その氷の力を持っていなかった黒い精霊がそれを解くことはできませんでした。

一方、力をたくさん使ってしまった氷は、黒い精霊にひびが入ったころ、キラキラの結晶となって空へと登って行きました。

へとへとになるまで黒い精霊をやっつけた氷の精霊は、この世から体が無くなってしまったのです。

カチコチになっていた黒い精霊も、パンッ、とはじけて割れてしまいました。そしてその黒い精霊の無数の欠片は、地上の空を流れ星のように滑り、あちこちに欠片を落として消えていきました。

五つの精霊たちは、もう赤くない空を見上げて泣きました。

たくさん、たくさん、泣きました。

「氷の気配が消え去ったのを感じました」

しばらくすると、精霊たちの前に、光輝く雲が降り立ってきました。

「生み出してしまったものは仕方ありません。生むのは簡単ですが、完全に消すことはとても難しい」

それは、みんなを生んだ神様でした。

神様はけして、みんなを怒ることはしませんでした。

何故ならみんなは、もうとりかえしのつかないことをしてしまったのだと、分かっていたからです。

「あともう少しすれば、君たち以外の生命がこの世に誕生します。そうしたら、みんなに力を分けてあげなさい」

「力を?」

「分ける?」

神様は言いました。

「黒い精霊、いいえ、あれは精霊とは呼べません。これからは、まがいもの――魔物と呼びましょう」

「まもの?」

「砕け散った結晶は、きっとまたどこかで芽を出すはずです。だからその時の為に、仲間を守るために、力を分けてあげてください」

「でも氷がいなくなちゃった」

「どんなに仲間が増えても、氷がいなきゃ、俺は、俺達は」

神様は微笑みました。

「今度は大事にするのですよ」

神様の声と共に、小さな淡い光が、火の手の中に落ちてきました。

それはとても冷たくて、火の手が消えてしまいそうな、そんな存在でした。

この似たような存在を、火は知っていました。

かつて一度だけ、火はある精霊の手を握りたくなった時がありました。

とても楽しくて、幸せで、この気持ちを誰かと共感したくて、たまらなかったときです。

火はいつも、風と雷と地だけには触れていました。三つの精霊とも、触れてもあまり燃えることがなく、自分にも害が無いからです。地の精霊は少し火傷をすることはありましたが、それでも触れられる精霊の一つでした。

けれど水と氷だけは別です。

火が水に触れてしまえば水はシュワシュワと蒸発してしまい、自分も消えかかってしまう。

火が氷に触れてしまえば氷は溶け、自分も弱ってしまう。

『氷! 楽しいな!』

『わぁっ』

でもそんなことを分かっていても、その時だけはどうしても氷に触りたくて仕方がなかったのです。

氷は堪ったものではありませんでしたが、火は自分の手が消えてしまいそうでも、幸せな気持ちになりました。

「もうけして、氷を仲間外れにしてはいけませんよ」

火は、手の中にいる氷を見ました。

それはとても小さくて、まだ目も開いていませんでした。

火は、火なのに、涙が止まりませんでした。

「その子はもう、あなたたちの知る氷ではないけれど、大切にしてあげてくださいね」

それから百年が経つと、地上には動物が誕生し、精霊たちは動物たちにそれぞれ力を分け与えました。

そしてまた百年が経つと、地上には人間が誕生しました。精霊たちは、人間にも同じように力を分け与えました。

すると、精霊たちの姿が、だんだんと透けてきてしまいました。

もともと小さかった氷は力を分け与えることも精一杯で、もう消えてしまいそうでした。

「氷! 嫌だ! また消えてしまうの? 嫌だ!」

地が氷を見て泣き出してしまいます。

「みんな、ありがとう」

「だめだよ!」

「きえても、人間やいきものたちのなかに、わたしは残ってるよ。みんな残ってるよ」

氷は笑いました。

「だからさみしくないよ。また、一緒にあそぼうね」

――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――

――――――――――……

昨今、氷の魔法使いは少ない。

原因は何なのか。

誰も知る術はない。

(創造物語集・第一章 一部抜粋)