軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟。

陛下が目を覚ましたと連絡が入り、ガディエルは急いで陛下の元へと向かった。

まだ身体が重いらしく、寝台の横に来るようにとガディエルを呼んだ。

「陛下、お加減は如何ですか」

「……ガディエルは大丈夫なのか?」

「はい。私はもう何ともありません」

「そうか、ならいい……。私はもう少しここから出られそうにないな……」

頭痛に抗いながら寝台から上半身だけでも起こそうとしたが、痛みに耐えられず微かなうめき声がした。青い顔をした陛下を見て、ガディエルは無理はいけませんと陛下を寝台に戻した。

「……報告は聞いたか」

「はい」

「行けるか」

「お任せ下さい」

「我々が直接向かえに来たと分かれば、こちらに帰れば処刑される事くらいは分かるだろう。アミエルは敵を手引きし、前王を殺している」

「はい」

「情けは無用だ」

「はい」

真っ直ぐとガディエルは頷いた。その覚悟はとうに出来ている。

アミエルは敵と手を組み、テンバール王国の民を危険に晒している。王家の者である以上、絶対にしてはならない事であった。

ガディエルは産まれた瞬間から王族としての教育を施されている。陛下が使えるものは全て使い、手段を選ばないのも、全ては背負う民を思っての事だった。

アミエルの裏切りは、テンバール王族を根絶やしにする事を前提としている。

情けをかければ、守るべき民を残してこちらが死ぬだけなのだとガディエルは分かっていた。

「お前の苛立ちは分かる。アミエルは交渉にロヴェルとエレンをヘルグナー王に差し出したのだから」

「……はい」

自分達が助かるためにエレンを。そして報酬としてロヴェルを要求したのだろうと陛下は言った。でなければ、ヘルグナー王が食いつく程の価値などアミエルには存在しなかった。

ガディエルの怒りが透けて見えた陛下はくすりと笑う。場違いな笑いに、ガディエルは虚を突かれた。

「先程ロヴェルがここに来た。もしかしたら、お前の代で呪いは終わるかもしれないと言っていた。その証拠に、呪いの影響がお前には軽かっただろう?」

「え……」

驚きにガディエルは目を見開いた。頭の中が真っ白になる。呪いが終わるとすれば、それはエレンの傍にいられるということではないだろうかと嬉しさが込み上げてきた。

「ただし、お前だけかもしれん」

「……どういうことですか?」

「そこの判断は私にも分からない。私はこの呪いを精霊魔法使いの対策として扱う事に決めていた。お前もそれは分かっていただろう?」

「勿論です」

「違うな。お前は思っていたはずだ。エレンの傍にいたいと」

「!」

「お前の気持ちには気付いていた。人の良いエレンは呪いがあろうとも無碍に出来ないだろうと宛がったのは私だ。……まさか、こんな効果をもたらすとは思わなかったが」

くすくすと笑う陛下に、ガディエルは混乱した。

「どういう……ことですか?」

「王家の誇りは忘れるなと言いたいが、エレンに関してはお前の思うように行動しろ」

「!?」

「ロヴェルはアミエルの迎えにエレンは連れて行かないと言ったが、エレンは勝手に行くだろう。エレンは家族を愛しているからな」

「なぜ、エレンが……」

「お前はアギーを覚えていないか?」

「叔母上は……噂だけしか存じません」

「くっくっく、教育に悪いと離されていたのか。あれを見ていれば分かる。……苛立って仕方ない」

懐かしそうに笑う陛下は、次第に悲しみとも取れる感情を目元に浮かべていた。

「そう育ててしまったのは前王と私だ。歪むと分かっていて昔の私は面白がってしまった。その内、自ら王族の誇りに気付くだろうと高を括っていた」

ロヴェルには悪い事をしたと陛下がぽつりとこぼす。

「エレンを守れ。何があってもだ」

「勿論です」

「そうか。お前の働きに期待している」

「はい!」

ガディエルは一礼して部屋から出て行った。

その後ろ姿を見送った陛下は、ぽつりと零す。

「頼む。無事で帰ってきてくれ……」

王である以前に、私も人の親なのだとラヴィスエルは思うのだった。

***

数日後、ガディエルを指揮にアミエルの迎えの部隊が編成された。その中にはサウヴェルもいる。部隊の転移を手伝うために、ロヴェルも大精霊達を数人引き連れて立ち会った。

作戦会議の後、ガディエルは部隊を、王家を代表してロヴェルと大精霊達を前に頭を下げた。

「多大なるご協力、感謝致します」

「…………」

大精霊達は返事はしなかったが、以前のようにガディエルの傍から逃げようとはしなかった。

ガディエルにとっては、それだけが嬉しい。

「配置に付け! これから作戦を開始する!!」

「はっ!!」

ガディエルを見たロヴェルと大精霊達は、内心で驚いていた。

ガディエルの行動と想いは、呪いにも影響している事が今やはっきりと見えている。

(ロヴェル様、あの者……これから迎えに行くという王族と引き合わせてはなりませんぞ)

(やはりか……思っていたより早かったな)

大精霊から念話が届き、ロヴェルは苦笑する。

転移の前にロヴェルはガディエルに、その魂を守るようにと結界を施した。

(だが……何か嫌な予感がする)

何かを忘れている気がするとロヴェルは思考を巡らすが、頭の片隅に引っかかっていた何かに気付く事は出来なかった。

その様子を双女神が見守っているのも気付かずに、ロヴェルは皆と一緒に歩き出した。