軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81話 魔王子、城下を炎上させ永久追放

テイマーのエレンが、魔王子のほとんどを倒した、数日後。

第2王子セコンズは、父である魔王との謁見を終えて、自分の部屋にいた。

「くくく、あーはっはっは! やったぞ! 次の魔王は僕だぁ!」

セコンズが勝ち誇った笑みを浮かべた、そのときだ。

ぱち、ぱち、ぱち、と部屋の隅にいた人物が、手をたたく。

「おお、【ふくろう】!」

「……セコンズ様。次期魔王選定戦、みごと勝利をおさめたこと、心よりお喜び申し上げます」

ぼろいマントをすっぽりとかぶった謎の人物、ふくろう。

セコンズは喜色満面で近づく。

「おまえからもらった魔法道具の数々、実に役に立ったぞ! ほめてやってもいいな!」

「……お役に立てたようで、光栄でございます」

ふくろうはセコンズの協力者だ。

「特に超高性能小型爆弾、実によかったぞ。これであのエレンをアーシアごと吹っ飛ばすことができたからね!」

「……前回の魔王子たちによる襲撃時に、撤退の際に小型爆弾をエレンにつけておいたのですね。見事な手際でした」

その後、爆弾を遠隔発動。

使い魔に爆発現場を確認させたところ、トーカの町はまるごと吹っ飛んでいた。

アーシアはこの爆発に巻き込まれたことで、死亡。

他の魔王子はエレンによって始末された。

よって最後に残ったのは、第二王子セコンズ。

……だと、魔王も彼も【誤解した】。

結果、次期魔王にセコンズが選定された次第だ。

「良い仕事だったぞふくろう! しかもどうやったか、失われた 魔核(イビル・エレメント) まで戻してくれるとはな!」

エレンに敗北後、セコンズは自分の力が失われていることにようやく気づいた。

ふくろうに相談したところ、消えたはずの魔核をどうやったか知らないが、復元したのである。

「やるじゃねえか。おまえのこと、使えるやつって覚えとくよ」

「……今後ともごひいきに、セコンズ様」

ふくろうは頭を下げると、煙のようにその場から消えた。

「怪しいヤツだったが、ま、利用するだけ利用して、使えなくなったら捨てれば良い」

さて、とセコンズは気色の悪い笑みを浮かべる。

「次期魔王の姿を城下の愚民どもに、披露してやろうかな!」

セコンズは着替えると、城下町へと向かう。

魔王が治めるこの領土は、魔界から進出してきた魔族が多く生活している。

民達のほとんどは城で働くものたちと、その家族だ。

「あっはっはー! 聞け! 魔王の民たちよ! 次期魔王がここに決定したよ!」

大通りで、セコンズは高らかに言う。

「セコンズ様だ」「どうしたんだろう?」

民達の注目が彼に集まる。

にぃ……と笑うと、胸を張って言う。

「王位継承戦に勝利したのはこの僕! セコンズ様だ! 祝え!」

民達は突然の宣言に困惑する。

「祝えと言っているのだよ! 祝わぬやつは死刑にするぞ!」

殺されたくない民達は、ぱちぱち……とまばらだが拍手をする。

「……何あいつ、偉そうに」

「……てゆーかセコンズかよ。意外だったわ」

「……第二王子って能力も性格も第一王子と比べて劣ってるからな」

ぴくっ、とセコンズはこめかみを動かす。

「今僕の悪口を言ったヤツら、全員牢屋いきな」

「「「なっ!? なぜ!?」」」

フンッ……! とセコンズは鼻を鳴らしていう

「当然だろう! 次期魔王に楯突いたのだ! 反逆罪で逮捕してやる! おい、衛兵! 何してるんだ。さっさとこいつらをとっ捕まえろ!」

近くに居た兵士達が、戸惑いの表情を浮かべる。

そのときだった。

「お、おやめください!」

女の魔族が、セコンズの前に躍り出たのである。

「なんだぁ貴様は……?」

「このものの妻でございます!」

楯突いた魔族の配偶者のようだ。

「お願いします! どうか夫を許してください! うちには生まれたばかりの子供がいて、夫が居なくなっては生活できません! なにとぞ!」

魔族の妻はセコンズの前に跪いて、深々と頭を下げる。

「ふぅむ……そうだなぁー……。おい女。僕の女になれ」

「は……? 女になれ、とは?」

セコンズは舌打ちをして言う。

「鈍いね。僕の奴隷になれって言ってるんだよ。次期魔王の性奴隷になれるんだ、光栄だろう?」

彼はもう、すっかり魔王になった気分でいた。

まだ正式な魔王からの任命を受けてないというのに、である。

「や、やめろ! やめてくれ! 妻だけはどうか! おれは捕まっても良いから!」

「そうだなぁ……よし、良いだろう! 決定だ」

セコンズはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべると、妻を立たせる。

「うひひ……よく見りゃいい顔してるじゃねえか。胸もデケえし最高の性奴隷だぜぇ……」

無遠慮に妻をひきよせて、その乳房を抱きながら、頬を舐める。

「……わたしのことはどうにでもしていいです。だから、夫と、子供だけは」

「よぉし、いいぜ。おい、離してやれ」

妻の犠牲によって、夫とそのほか、先ほどセコンズに影口を言った魔族達が解放される。

「すまねえ……! おれがふがいないばかりに!」

「……あなた、良いのです。子供達を任せましたよ」

夫婦が涙を流しながら言う。

「おら行くぞ、城のベッドで可愛がってやるぜぇ」

「……はい」

楯突いた魔族の妻を連れて、セコンズは自分の城へと戻ろうとする。

「おい、そこの衛兵。剣を貸せ」

「は、はあ……セコンズ様、いったいなにを……?」

困惑する衛兵と、そして妻をよそに、セコンズは先ほどの夫の元へ行く。

「おら死ねぇ!」

ドスッ! とセコンズは旦那の心臓を、剣でひとつきした。

「え……………………?」

ぽかん、と目を口を大きく見開く、妻。

「うそ……いや……いやぁあああああああああああああああ!」

妻は夫の突然の死に取り乱す。

「あなたぁあああああ! あなたぁああああああああああ!」

「ぎゃははっ! 魔王に逆らった罰だぁ!」

愉快そうにセコンズが笑う。

妻は半狂乱になって、事切れた夫の死体にすがりついて泣く。

「せ、セコンズ様……これはやり過ぎでは……?」

「あぁ!? 僕に逆らうのか!? クビだ! クビ!」

「そ、そんな……! 理不尽すぎます!」

衛兵達の非難の声に、セコンズは気分を害する。

「あームカついた! てめえら全員クビだ!」

「王子には我々をクビにする権限はないはずです……!」

衛兵のひとりが声を荒らげていう。

「うるさいよ! 次期魔王が言うんだ! クビと言ったらクビなんだ!」

ふらり……と残された妻が立ち上がり、夫に刺さった剣を引き抜く。

「この……人殺しぃいいいいいいい!」

妻がセコンズを刺そうと、かかってくる。

「僕に逆らうとは良い度胸だ! おまえも死刑だ!」

バッ……! とセコンズが右手を前に出す。

「魔核もふくろうのおかげで戻ったことだし、見せつけてやろう! 次期魔王に楯突くと、どうなるかをなぁ!」

セコンズが右手を前に出し、そして魔法を発動させる。

町中の、ど真ん中で。

「【 火球(ファイア・ボール) 】!」

町を破壊してはいけないため、手加減をした……そのときだった。

キィイイイイイイイイイイン!

突如、身体の奥から、信じられないほど、莫大な魔力が吹き出す。

「なっ!? なんだこれは……制御でき、ぐわぁああああああ!」

セコンズの右手から、極大の魔法が発動する。

ドガァアアアアアアアアン! と激しい音を立てて、大爆発が起きた。

「え……? うそ……? 火球の魔法……使ったはず、なのに……」

セコンズが使ったのは、火球のさらに上位の魔法である、極大魔法【 煉獄業火球(ノヴァ・ストライク) 】

一撃で地形を変えるほどの威力を持った魔法だ。

しかも、なぜか知らないが、威力が普段よりも倍増していた。

その結果、どうなったかというと……。

「あ……、あぁ……」

魔王の領土、城下町は……大爆発を受けて吹っ飛んだのだ。

建物も、住民も、その周囲には何も残っていない。

「う……うう……」「いてえ……いてえよぉ……」

遙か遠くに、吹っ飛ばされた魔族達がいた。

彼らは人間よりも、高い魔法防御力を持っている。

それでも、【精霊によって強化された】極大魔法を受ければ、ただではすまない。

みな、瀕死の重傷を負って、うめいていた。

「ち、ちが……僕じゃない。僕はこんなのやってない! 魔法が暴発したんだ! 僕じゃないんだ!」

そのときだった。

「セコンズ……! 貴様ぁああああ!」

「ち、父上!」

騒ぎを聞きつけて、魔王が転移してきたのだ。

「これは……どういうことだぁ!」

消し飛んだ城下町、そして遙か彼方でうずくまる瀕死の民達。

「ち、違うんです父上! ぼ、僕じゃない! 僕じゃあないんだ!」

「黙れ! ではなぜ貴様だけが無事なのだ!」

「そ、それは……」

魔王の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。

「制裁! 制裁だぁああああああ!」

手に持った錫杖で、魔王はセコンズをたたきつける。

「うぎゃぁあああああ!」

錫杖はぶつかった瞬間、雷の魔法を発動させる。

電流によってしびれたセコンズが、その場に倒れる。

「しかも貴様! 領土に張っていた結界までもご丁寧に消し飛ばしたな!」

「ぞ、ぞんな……ごど……じで、ない……です……」

「うるさい! 貴様の魔法が消したのは事実だ! 罰を与える! 貴様は……王位継承権、剥奪だ!」

さぁ……とセコンズの顔色が青くなる。

「い、いやだ……いやだぁああああ! 僕は魔王に、なるんだぁあああああ!」

「黙れ痴れ者が! 次に貴様にこれを使う!」

取り出したのは鳥籠のような魔法道具だ。

魔力を流すと、セコンズは鳥籠の中へと吸い込まれていく。

身体のサイズが小さくなると、檻の中にすっぽりと収まった。

「ち、父上……これはなんですか?」

「【永遠の時牢獄】。この中に入っているものは永久に、無限の時を生きることとなる。そして決して外へは出られぬ!」

「そ、そんな!?」

さらに、と魔王が錫杖を持ち上げる。

雷の魔法が発動し、鳥籠の中に収まっているセコンズに落ちる。

「うぎゃぁあああああああ!」

「その雷は相手が死ぬまで貴様を攻撃する特別な魔法じゃ!」

さて。

永久に死ねない牢獄内にいて、そこに死ぬまで収まらない雷を落とされればどうなるか。

「いやあああああ! やめでえええええ! たすけてくれぇえええええええ!」

「貴様は死ぬこともできず、永遠に雷でその身を焼かれ続けるが良い!」

セコンズは死ぬほどの激痛を味わう。

だが牢獄に閉じ込められている以上、決して死ぬことは許されない。

「貴様はそうやってずっと苦しんでおれ! 馬鹿者が!」

魔王は鳥籠を放り捨てる。

「せっかく作ったわしの領土が台無しじゃ! くそっ! このわしが魔界に撤退するハメになるとは! このバカ息子め!」

魔王はゲートを作ると、領土と瀕死の魔族達を捨て、ひとり魔界へと帰っていった。

更地になった元城下町に、ひとりのフードをかぶった男が現れる。

「……さすが精霊王。凄まじい威力でございますね」

その背後には、精霊王ルルイエがいた。

ルルイエの権限で、セコンズの魔力量を一時的に底上げしたのである。

「君にしては良いアシストだったよ。王子に取り入って、偽の道具と情報を渡してさ」

そう、セコンズが使った高性能爆弾は、実は偽物だったのだ。

あとは死んだという偽の情報を、魔王子の使い魔に流させただけ。

「実際にはエレンは無事。あれでもし本物を渡していたら、今頃貴様を切り刻んでいたところだよ、ふくろう」

「……そんなことはしません。魔核を取り戻し調子に乗った魔王子が、永久の牢獄に閉じ込められて死ぬまで雷に焼かれ続ける。あなたの筋書きをアシストしただけでございます」

「ま、別に頼んでいないけどね」

ルルイエは実に嫌そうな顔で言う。

「……君が何を考えてるのかは知らない。けど、エレンを危険に晒さない限りは、殺さないであげるよ」

と、そのときだった。

「母上、お久しゅうございます」

バサッ……! と翼を広げてやってきたのは、赤髪の美女カレンだ。

「誰だい、君?」

「あなたが生んだ子ども、でございますじゃ」

うーん……? とルルイエは首をかしげる。

「ああ! 僕が生んだ精霊核から生まれた子だね、君!」

ルルイエは自分の娘ですらも、興味が無い様子だった。

「へぇ、孵化したんだ。名前は?」

「カレン、とつけていただきました」

ルルイエがそれを聞いて、声を震わせる。

「ずるい!」

「え?」

「ずるいずるいずるぅううううい! なんだい君は! エレンに名前をつけてもらえるなんて! 超羨ましいよ!」

精霊王は子供のように駄々をこねる。

「僕だってエレンに名前をつけてもらいたかった!」

「……まあまあ。そう気を落とさずに」

ふくろうが精霊王をたしなめる。

「まあいいさ。せいぜい調子に乗っているがいいよ。いつか絶対、エレンは僕の行いに気づいて、感謝とともに僕の方が良いって言ってくれるもん!」

カレンはそんな母の姿を見て、神妙な顔で尋ねる。

「母上……あなたは一体何をなさっておるのじゃ?」

カレンが懸念しているのは、前回の不可思議な現象のこと。

魔王子達は戦う前から魔核を失っていた。

「エレンがやったのではなく、母上がなさったのですか?」

「……さぁね。君には関係ないことだ」

ふんっ、とルルイエがそっぽを向く。

「ありますじゃ。エレンはわらわのパートナーじゃ。勝手なことをされては、困りますゆえ」

「くそっ! 僕もエレンの身体に宿りたかった! エレンに産んでもらいたかった! 畜生!」

カレンの元となる精霊核を生み出したのは、たしかにルルイエ。

しかし孵化させたのは、魔力を供給したエレンだ。

「ま、まあいいさ! 今は負けを認めよう。けどね! 僕はエレンを渡す気はさらさらないから!」

ふんだ、とルルイエはそっぽを向いて言う。

「わらわも同じじゃ。エレンはわらわのエレンじゃ。母とは言え決して渡さぬからな!」

親子のやりとりを見ていたふくろうが、愉快そうに笑う。

「……さすがエレン様、おモテになりますね」