作品タイトル不明
61話 犯罪ギルド、壊滅
テイマーのエレンが、犯罪ギルド【 六眼(りくがん) 】のヴァーガンを撃破した。
数日後。
騎士団の詰め所、地下牢にて。
「クソッ……! おれさまをこんな陰気な場所にぶち込みやがって……!」
牢屋の奥で、ヴァーガンは不満げにつぶやく。
エレンに倒された後騎士に拘束され、この地下牢へと連行されたのだ。
「この程度で勝った気になるなよ、ガキ……。こんな場所、おれさまの権力を使えばすぐにでれるんだぜ……?」
にやぁ……と邪悪にヴァーガンが笑う。
「裏社会のトップなめんじゃねえぞ。騎士団内部にだって六眼の権力は及ぶんだ。この騎士団長だっておれさまの言うことを聞くんだよ……」
だからこそ、ヴァーガンは大人しく捕まったのだ。
「ここをでたら覚えとけよ……六眼が総力を上げて、てめえを潰しにいくからなぁ……エレンぅー……」
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
犯罪ギルド【六眼】へのペナルティを実行します。
→ギルドは壊滅しました(進行度100%)。
→鬼族の紫音と通信しました。彼女にヴァーガンの居場所を精霊を通じて教えました。
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かつん、かつん、と通路の奥から足音がする。
「おっ、さっそく来やがったなぁ、騎士団長ぉ……」
ヴァーガンが立ち上がり、ぐいっとのびをする。
そこへ、ぶくぶくに太った中年の男がやってくる。
「おっせーぞ騎士団長。何グズグズしてやがったタコが。さっさとここから出しやがれ」
騎士団長は懐からたばこを取り出すと、火をつけて、ふーっと吐き出す。
「んだよその態度は! さっさと出せや!」
「ふむ……それは無理な話だ」
「は……?」
騎士団長の言葉に、ヴァーガンが耳を疑う。
「い、今……なんつった?」
「聞こえなかったか犯罪者? おまえを、ここから、出さない」
ギリッ……! とヴァーガンが歯がみする。
「てめえ……なに調子乗ってやがるんだ!」
がしゃんっ! と鉄格子を殴りつける。
だが騎士団長は動じることなく、悠然とたばこを吸っている。
「おれさまにどれだけカリがあると思ってやがる!? あぁ!?」
「さぁ……ってね。犯罪者にカリなどないつもりだが?」
ビギッ! と血管を浮かび上がらせる。
「調子乗るなよてめえ! これ以上おれさまをここに縛り付けてみろ! 六眼が報復活動にくるぞ!?」
「報復ぅ~? ぷっ……! どうやってだね?」
騎士団長が小馬鹿にしたように笑って、言う。
「犯罪ギルド六眼は、壊滅したよ」
「………………………………は?」
あまりのことに思考が停止する。
「なに……言って……」
「ふむ、実際に見る方がいいか。これを見たまえ」
騎士団長は小脇に抱えていた新聞を、ヴァーガンに差し出す。
ヴァーガンは見出しに目を通す。
【犯罪ギルド六眼・ついに壊滅!】
【ギルド幹部6名、逮捕!】
【ギルド本部にいた構成員全員摘発!】
【闇カジノその他すべて倒産!】
新聞が示す内容は、六眼の壊滅という厳然たる事実だった。
「そ、そんな……そんなばかなぁ……」
ぐにゃり、と視界がゆがむ。
そのばにしゃがみ込んで、愕然とした表情になる。
「これでわかっただろ? もうおまえらは終わりなんだよ、終・わ・り」
ふぅーっと、騎士団長がたばこの煙を吹きかけてくる。
「おまえらの全ては崩壊した。もう誰も六眼の名前にビビることはない。無論ワシもだ。だからおまえをここから出せと脅されても全然怖くないわけだ」
ニヤニヤと笑いながら騎士団長が言う。
「ちなみに貴様の私財も全て没収させてもらった。ああ、良い小遣い稼ぎになったよ」
「金も……裏社会の……地位も……ぜんぶ、なくなったのか……?」
騎士団長が醜悪に笑う。
「そのとおり! 今の貴様は豚箱に入ったただの非力な豚だ! 一生そうやってぶーぶー文句を垂れてるがいいさ! あーはっっは! いい気味だバーカ!」
そう言って、彼は笑いながら立ち去っていく。
あとにはヴァーガンだけが残された。
「ちくしょ……」
ぐしゃっ、と新聞を握りつぶす。
「畜生……どうなってやがるんだ……なんでこんな急に、ツキに見放されたんだよぉ……」
否、ヴァーガンはツキではなく、精霊の王に見放されたのだ。
精霊王は、人が生まれてくるとき、可能性をスキルという形で与える。
それを使って世のため人のために尽くすようにと願いを込めて。
だがいつだって、その可能性を悪用するのは、人間の邪悪なる意思だ。
力を与えた精霊王が悪いのではない、それを悪事に使う彼等の性根が腐っているのだ。
「くそっ! くそっ! くそぉおおお!」
ヴァーガンは壁を殴る。
「覚えてろ! 見てやがれ……絶対にここを脱獄してやる! 裏社会のトップにのし上がったおれさまの底力、なめんじゃねえ!」
瞳には復讐の炎がメラメラ燃え上がっている。
……だが、そのときだった。
「意外に元気そうじゃあねえか、クソガキ……」
「あ……あぁ……」
そこへやってきたのは、鬼族の女性・ 紫音(しおん) だった。
「よぉ……久しぶりだなぁ……」
「て、てめえ……どうして、ここが……」
「お導きがあったんだよ、神様ってやつのかな?」
鬼の男は2メートルの巨漢となるが、女は一見すると普通の人間に見える。
だが外見が普通であっても、貧弱であることの証左にはならない。
彼女から放たれる強烈な殺気は、人から戦意を根こそぎ奪う。
「あひゃ……ひぃ……」
ぺたん、とヴァーガンはへたり込む。
紫音は腰の刀を抜いて、構える。
超高速で刀を振る。
バツンッ! と、地下牢の壁に斬撃が走る。
「ひぃいいい!」
紫音は連続で刀を振る。
地下牢にあった物がすべて切り刻まれる。
しかし鉄格子はいっさい、傷ついていなかった。
静かに、紫音が刀をしまう。
「脱獄してやる……だっけかぁ? やってみろよ……ただし!」
圧倒的殺意を込めて、紫音はヴァーガンをにらみ付ける。
「外に出た瞬間、あたいはてめえを殺す。ただ殺すんじゃない。考え得るありったけの手段を用いて、散々苦しませたあと殺す……」
「あ……あぁ……」
じょぼぼぼぼ……と情けなく小便を漏らす。
下の方からも【中身】がでてしまった。
それほどまでに、この鬼の少女の怒りは激しいものだった。
鬼の少女に気圧され、ヴァーガンの髪の毛が真っ白になり、しおしおにしおれていく。
「あたいらは鬼術っていう特殊な技をつかえる。遠方から貴様をいつだって見張っている。一歩だ。一歩でもここを出た瞬間……鬼族はおまえに報復を行う」
「あびゃ……あぴゃぁ……」
へたり込むヴァーガン。
暴力的な雰囲気はなりをひそめ、そこにいたのはしおれた【抜け殻】だった。
「そこで一生そうしてろ。死にたくなければ、妙な気は起こさないことだな」
紫音はそれだけ言うと、立ち去っていく。
「あ、あはは……あびゃびゃびゃびゃあああああああああああああああ!」
ヴァーガンは壊れてしまった。
金も名誉も組織も失い、さらに鬼族の強い恨みを買ってしまった。
彼は悟る。
ここにいることが……最善と言うことを。
「終わりだぁあああ! おれちゃまもうおしまいでぇえええええす!」
かくして、巨大犯罪ギルド六眼、とその幹部であるヴァーガン達は、歴史から退場させられた。
その陰の功労者が精霊使いの少年であることを……彼自身、自覚していないのだった。