軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22話 ご指名

ぼくがSランク冒険者に認定されてから、数日が経ったある日。

冒険者ギルドにて。

『若様、なにやら受付のほうが騒がしい様子でございます』

受付の前では、フードをかぶった人が、受付嬢さんにくってかかっていた。

「だから! 不死鳥をつれた精霊使いがいるんでしょ!? 出しなさいよ!」

声からして、女の子のようだ。

『なんじゃあの小娘、エレンに用事かのぅ?』

「ですから、そんな人は当ギルドにはおりません……」

受付嬢さんが困惑していた。

『なんじゃ、ギルドはどうしてエレンだと言わぬのじゃ?』

『若様はギルドでは【テイマー】として登録しているのです。不死鳥のことも伏せております』

『なるほどのぅ。悪人に利用されぬように対策をしておるのじゃな。さすがはエレンじゃ♡ かしこいのぅ♡』

一方で女の子はヒートアップしていた。

「つべこべ言わないで出しなさい! 親友が……アタシの親友が瀕死の重傷を負ってて、不死鳥じゃないとなおせないの!」

受付嬢さんを掴んで、がくんがくんと揺らす。

涙が、きらりとこぼれていた。

それを見てぼくは、可愛そうだと思った。

「あの……ちょっとキミ」

「なによ!?」

ハッ……! とした表情になる。

ぼく、というよりは、カレンを見て目を丸くしていた。

『エレンよ。こやつわらわに気づいたぞ』

「あなた不死ちょ……」

ぼくは女の子の口を塞いで、カウンターを離れる。

「もが……! はなしな……もががっ!」

ぼくたちはいったんギルドを出て、建物の裏へとやってきた。

「あなたね、森の精霊たちが言っていた、精霊使いの少年って」

女の子が腕を組んで、ぼくを見上げてくる。

「う、うん。きみも精霊使いなの?」

「まさか、そんなレアな職業なわけないでしょ。ところであなたのそれ、不死鳥よね? お願い! 力を貸して!」

ガシッ! と女の子がぼくの手を握ってくる。

「あなただけが頼りなの!」

「ちょ、ちょっと相談させて……」

ぼくはいったん離れて、アスナさんと相談する。

「どうしよう?」

「あまり精霊使いのことを他人に知られるのはまずいわ。本当なら断るべき、けど……エレンは助けたいのよね?」

「うん。泣いてる子、ほっとけないし」

アスナさんは微笑むと、うなずく。

「わたしも同意見よ。さすがねエレン。優しくて素敵よ♡」

ぼくの頭をスリスリとなでてくれる。

子供扱いされるのは嫌だけど、アスナさんにこうされるのは好きだ。

ぼくたちは女の子の元へ行く。

依頼を受けることにしたと伝える。

「ありがとう! じゃあさっそくいきましょう!」

女の子は、懐から宝石を取り出す。

「【 転移(テレポート) 】!」

カッ……! と宝石が光る。

粉々に砕け散ると同時に、魔法陣が展開する。

ぐらり……と視界が歪んだ。

だがすぐに、元に戻る。

「ここは……森の中?」

「エレンの 大翼(テレポート) みたいなことができるみたいね」

ジッ……とアスナさんが女の子を見やる。

「でも転移魔法ってたしか、高度な魔法って聞いたことがあるわ。一般人じゃ使えないはず……あの子、何者かしら?」

「そんなのどうでもいいでしょ! ほら早く! こっちよ!」

女の子に連れられて、ぼくらは森の中を歩く。

「今更だけど……自己紹介しとくね。ぼくはエレン。彼女はアスナさん。キミは?」

「アタシは【ティルティーナ】。【ティナ】で良いわ。さんもいらない」

「わかった。ティナ、よろしくね」

ティナは急ぎ足で、森の中を歩いて行く。

「依頼ってどういう内容なの?」

「ケガした親友がいるの。不死鳥の炎じゃないと治せない毒を受けたわ。その子を治して欲しいの」

『わらわじゃないと治せぬ毒……? そうとう強力な毒の使い手が近くにおるのじゃな』

『ケガしたと言うことは、近くにその毒使いがいるのではないのですか?』

精霊2人に尋ねられ、ティナはうなずく。

「ええ、【 毒大蛇(ヴァイパー) 】っていう、強力なモンスターよ」

ギリッ、と歯がみする。

「……毒大蛇に襲われたのはアタシなの。それを親友がかばってケガを負った。【姉さん】みたいに、魔法が使えれば……こんなことには」

「でもさっきのキミ、転移魔法つかってなかった?」

「【魔宝石】。これには魔法が閉じ込められているの。アタシの力じゃない」

その話を聞いて、アスナさんが首をかしげる。

「それ確か希少価値が高くて、一般には出回らないはずよね? どうして持っているのかしら?」

「……どうでもいいでしょ。そろそろ到着するわ」

森を抜けると、そこは美しい湖があった。

「わぁ、綺麗……ここにキミの親友がいるの? 湖畔には誰も居ないけど……」

そのときだった。

『若様、敵が近づいております』

ランが鼻をひくつかせながら言う。

『強力な毒と、蛇の匂いがします……』

ガサッ……! と茂みが大きく揺れ動く。

そこから出てきたのは、見上げるほどの大蛇だ。

「【 毒大蛇(ヴァイパー) 】よ! そんな! 追い払ったはずなのに! どうして!?」

「たぶん、精霊使いの魔力を嗅いで来たのだと思う」

精霊だけじゃなくて、モンスターもぼくの魔力が大好物だって、前にカレンが言っていた。

「お、終わりよ……手持ちの魔宝石じゃ対処できないわ……」

毒大蛇が口を大きく開き、体をのけぞる。

先読みスキルによると、毒のブレスを放って来るみたいだ。

「アスナさん、ティナを連れて退避!」

「了解!」

彼女はティナを抱きかかえると、大きくジャンプ。

「ちょっと! エレンが! あの子1人じゃ危ないわよ!」

「大丈夫よ、エレンは強い子だもの」

毒大蛇は口から、大量の毒の霧を放つ。

地面をドロドロに溶かすほどの毒だ。

「カレン、いくよ! 【 不死鳥の羽撃(フェニックス・ブロウ) 】!」

ぼくの肩から、炎の翼が生える。

翼を打つと、広範囲に炎の嵐が吹き荒れる。

それは毒大蛇の毒すらも焼き、さらには敵の体をも焼く。

「信じられない! あの蛇の溶解毒は万物を溶かすほど強力なのよ! それを燃やすなんて……すごすぎるわ!」

「ジュラララララッ!」

炎でのたうち回っている毒大蛇が、ぼくに向かって突撃してきた。

ぼくは風神の剣を取り出し、剣を一閃させる。

ばらっ……! と大蛇の体が、なで切りにされる。

「う、うそぉ……相手は、Sランクモンスターよ? それを、こんなあっさり倒しちゃうなんて……?」

呆然とするティナとともに、アスナさんが近寄ってくる。

「お疲れ様、エレン。さすがSランク冒険者、これくらい余裕ね」

「え、Sランク!? あんた……こんな若いのに……す、すごい……」

「えっと、それより親友の子なおすんでしょ? どこにいるの?」

すっ、とティナが湖を指さす。

「湖の上に、何か居る? あれは……角のある白い、馬? って、まさか!」

ティナがうなずいて言う。

「アタシの親友は、【ユニコーン】よ」