作品タイトル不明
185話 霊王はすべてを回帰させる【後編】
全てを破壊し、無かったことにするのが、 運命破棄(フェイト・ディストラクション) 。
強力な技ではあるんだけど、破壊されたものは、二度と元には戻らない。
一方で、 回帰(リバース) は違う。
全てを元の状態に戻すのだ。
『こんなふうに、ね……!』
ぼくは地上へと戻り、霊王の剣を地面に刺す。
魔竜の射撃によって、穴のあいた大地。
それが、みるみるうちに塞がって行くではないか。
『霊王の力が触れたもの全てを、元通りにする。穴が開き、朽ち果てる寸前だった星はこうして元に戻る。そして……』
ぼくは母さんに近づく。
「母さん。信じてくれる?」
「ったりめーだろ」
ぼくは母さんの心臓に、剣を突き立てる。
『気でも触れたか!? 最愛の母を殺してぇ!』
「いいや、元に戻すのさ」
その瞬間、霊王の剣が光り輝く。
母さんの肉体が、ぶれる。
影が2つに分かれて……そこにいたのは、全く同じ顔の、2人の女性だ。
「お、ふくろうじゃーん。ひさしぶり」
「か、カルラ様……いったい、なぜ?」
「ま、うちの可愛いベイビーが、上手いことやってくれたんだろ。な?」
母さんは肉体を失い、ふくろうさんの体を依り代にして、この世に顕現していた。
ぼくは母さんの魂を、 回帰(リバース) させる。
失ったはずの肉体を取り戻し、母さんは再び現世に、戻ってきたのだ。
『そんな……魂だけとなった存在を、復活させるなんぞ……神の所業ではないか……』
愕然とするクトゥルーに、ぼくは強く言い放つ。
「神じゃない、精霊王。これが、本来の力なんだ!」
全てを 無(ゼロ) にするのではない、全てを 初め(イチ) に変える力。
皆平等に、ひとしくやり直させるだけのチャンスを与える。
それが、 精霊王(ルルイエさん) の力の本質だった。
「さぁ、始めようか未来神」
『いっとくけど、君にやり直しはさせない。これできっちりと終わらせてやるよ』