軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14話 ザックの失敗、ディーナの忠告

エレンがゴブリンの巣を破壊した、一方その頃。

ザックはディーナの泊まっている宿を訪れていた。

「おいディーナ、なんだよおれを呼び出してよ?」

エルフ女は、単刀直入に言う。

「エレンに土下座して」

「はぁああ!? なんだいきなり!」

「興奮しないでちょうだい。順を追って説明するわ」

ディーナにさとされ、ザックはおとなしく椅子に座る。

「現状を整理しましょう。現在、あなたは保釈金や賠償金などで、全財産を失った。さらに多額の借金を背負う羽目になった」

「ああそうだよ。くそっ! なんでてめえの保釈金まで払わないといけねえんだよ……!」

「同じパーティなのだから当然でしょ。構成員の不始末はリーダーの責任でもあるのだから」

実行犯は確かにディーナだが、命令したのはザックである。

そういう理屈で、彼女の借金を肩代わりする羽目になった次第。

「借金が返せないと犯罪奴隷として売り飛ばされる。つまりあなたはより多く金を稼ぐ必要がある。けれどあなたは、まともに迷宮に潜れない」

「まあな、武器も防具もアイテムもねえしよ」

「いいえ、違うわ。聞いて、ザック。ここからが重要なことなの」

とても真剣な表情のディーナに、ザックはただごとではないと感じる。

「ザック、あなたは精霊の加護を、全て失っているの」

「は……? なんだよ、そりゃ……?」

ディーナは机の上に、水晶玉を置く。

「これはギルドにある【真実の目】という魔法道具、その簡易版よ」

「確か、対象となるものの価値を鑑定するアイテム……だったか?」

「そう。アイテムの鑑定や、冒険者の強さの鑑定などに使われるわ。ザック、これに触れてみて」

言われるがままに触れてみる。

すると……ザックのステータスが表示される。

「……ねえ。おれのスキルが、何も表示されねえ!」

食い入るように見ても結果は同じだ。

もっていたはずの、勇者の職業のスキルがなくなっているのである。

「ダンジョンから戻ってくる際に苦戦していたのは、精霊の加護を失ったからよ」

「け、けどよ! どうして!? 精霊の加護は生まれたときに受けて、そのあと一生変わらないんだろ!?」

「そう……本来なら、ね。ここからはわたしの推論となるのだけれど、エレンは【精霊使い】だったのよ」

「せいれいつかい……? なんだよそれ?」

「精霊に愛され、その力を引き出すことに長けた職業よ。無限のスキルを精霊から引き出せる、と文献にはあるわ」

初めて聞いた職業だ。

とんでもない力を持っているようだ。

「精霊の加護を失うことは絶対にあり得ない。ただし、精霊に愛された人間に、嫌われると、加護を失う」

「エレンがその精霊使いで、おれが追い出して嫌われたから、精霊にも嫌われたってことか?」

「残念ながら、失った時期や状況から、そうとしか考えられない」

ギリッ……とザックは歯がみする。

「うそだ……あのお荷物のゴミが、そんなすげえ職業な訳がない……」

「取り返しがつかなくなる前に、エレンに謝ってパーティに戻ってきて貰うべき。でないと今後、一生スキルなしとして生きてく羽目になるわ。これはあなたのためなのよ?」

ディーナはザックにだけ謝罪させるつもりだ。

プライドの高いエルフである彼女は、人間ごとき下等生物に、頭を下げたくないのである。

リーダーである彼が謝り、エレンが戻ってくれば、ディーナが謝らずとも力が戻ってくる。

だからこうして、ザックにエレンの元へ行くよううながしているのである。

さも、ザックを気遣っているようなふりをして。

「さぁいきましょう、エレンの元へ」

「……いかねえ」

「え?」

「いかねえよ!」

ザックは声を荒らげる。

「どうしておれが、エレンごときに頭を下げなきゃあいけねえんだ!?」

「……あなた、バカ? わたしの話聞いてた? エレンに嫌われたから力を失ったのよ?」

「うるっせぇえええ! そんな話信じるか! 精霊使い? そんな化け物みたいな職業があるわけねえだろ!」

ザックは立ち上がると、部屋を出て行こうとする。

「ま、待ちなさいザック! どこへいくのっ?」

「決まってんだろ、装備を調えてまたダンジョンに潜るんだよ。てめえも準備しておけよ」

「無理よ! スキルも魔法も使えないのよ!? いくら装備を調えても無駄! それよりエレンに謝って……」

「エレンエレンエレン! どいつもこいつもうっせぇぇぇんだよぉおお!」

ザックはディーナの髪の毛を掴んで、持ち上げる。

「痛いっ! なにするのよ! 汚い手で触るな人間!」

「うっせえ! おれに命令すんじゃねえ長耳女ぁ!!」

乱暴に、ザックは彼女を投げ飛ばす。

「誰がなんと言おうとおれは! あのガキに謝ることなんて絶対にしない! 絶対にだ! 下げたきゃてめえが頭下げろボケ」

「嫌よ! エルフとしてのプライドが許さないわ!」

「勝手にしろクソ女! スキルがないからなんだ、おれはSランクなんだぞ! 装備が整ってりゃあ、ダンジョンなんて楽勝だっつーの!」

ザックはきびすを返して、ディーナの部屋を後にする。

「人の忠告を聞かないで! バカな人!」

かくして、ザックは再び、ダンジョンに潜ることとなる。

だがその先に地獄が待ち受けているのは、火を見るよりも明らかだった。