作品タイトル不明
130話 無能なる邪神、アーカム
精霊王ルルイエの手により、邪神カダスは抹消された。
話は数日後、白い空間にて。
邪神達が、円卓の前に腰を下ろし、膝をつき合わせていた。
「さて、どうする……?」
最年長の邪神が、残りの神々を見渡していう。
「精霊王の強大かつ邪悪な力の恐ろしさ。……みなも見たことだろう」
沈鬱な表情の邪神達。
「ああ、おぞましいことしてくれるぜ、あの女」
「おれたち邪神よりも邪悪。まさに邪悪の権化にふさわしい」
多くの邪神たちが力強くうなずく。
「主さまの判断は正しかったのやもしれぬ。われらも、精霊王の軍門に降るべきでは……?」
と、そのときだった。
「おいおいおい、なーに弱気になってんだよぉてめえら」
円卓に足を乗せ、ふんぞり返っている男の邪神がいた。
彼を言い表すのであれば……普通。
そう、何か語るべき特徴が、何一つとしてない邪神だった。
中肉中背、黒い髪に黒い目。
ふてぶてしそうな表情で、邪神達を見下している。
「邪悪なる神が女とガキにビビってるなんてな。おたくら、神としてふがいないとはおもわねーのかい?」
うぐっ……と邪神達が言葉を詰まらせる。
「【アーカム】、口を慎め」
「へんっ、やなこったびびり野郎ども。どいつもこいつも腰抜けばっかりで嫌になるぜ」
「ならばアーカム、貴様なら精霊王と勇者を討ち取れると?」
にぃ……とアーカムが笑う。
「あったりめえだろ。オレ様を誰だと思ってやがる? 人間の体で、神を殺して神になったアーカム様だぜ? てめえら三下とは格が違うのよ」
そう、このアーカムという邪神は、元はただの人間だ。
「【無能者】の分際で……! いい気になるなよ!」
邪神の1人が憤り、彼に向かって魔法の炎を放つ。
「ハッ……! 効かねえよ!」
アーカムは握りこぶしを作り、炎を殴りつける。
パキィン……! とまるでガラスを砕いたように、炎が砕け散った。
「なっ!?」
驚く邪神の懐にもぐりこみ、ミゾオチに掌底を入れる。
邪神はその場に倒れ込み、動けなくなった。
「てめえらのようなスキルや魔法に頼って、最初から神だったてめえらと、最初からなにも持たずに生まれ、おのれの肉体のみで神になった人間。さてさぁて、どっちが強いかなぁ~?」
アーカムは邪悪に笑い、邪神達を見渡す。
「無能者……最初は文字通り、スキルも魔法も魔力も持たぬ、ただの能なしのクズと蔑まれていた。だが……鍛錬の末に非力さを克服し、恐るべき強さを手に入れた男……か」
そう、このアーカムという男は、もとより奇跡の力をなにも持たずに生まれた忌み子。
「そんなオレ様からよぉ、果たして精霊王様は、いったいなにを奪えるっていうんだろうなぁ~? ぎゃはぎゃはっ!」
アーカムの強さは外部に依存しない。
だからいつだって自分が強者と信じて疑わない。
「オレ様が身に付けた力はよぉ! どんなときだって、なにがあろうと、絶対になくなんねーもんなんだよぉ!」
「確かに、ルルイエの力は厄介だ。しかしアーカムならば……勝てるかもしれぬ!」
おお……! と邪神達の表情に、希望の光がともる。
「よし、アーカムよ。さっそく奴らを倒してくるのだ!」
ニコッ、とアーカムは笑う。
「じゃあ、土下座♡」
「「「なっ?!」」」
「人に物を頼むときゃよぉ、土下座して誠意を見せてもらわねえとなぁ?」
グッ……! と邪神達が歯がみする。
「貴様に頼めば……本当にエレン達を倒せるのだな?」
「ったりめーだろ。てめえら力に頼ってばかりのノーナシどもとオレ様を一緒くたにするんじゃねえ。100%確実に、絶対、エレンもあの邪悪女も倒してみせるぜ~」
邪神達は顔を見合わせる。
ユゴス、カダスと次々葬り去っていった災禍の魔女と厄災の勇者。
彼らの強さと力は厄介そのもの。
邪神達ですら、挑戦を躊躇してしまう。
それほどまでに彼らは強く……精霊王によるペナルティは邪悪極まるものだ。
しかしもとよりなにも持たぬアーカムならば……。
「どーすんの? するの、しないの? 土・下・座」
邪神達が歯がみしている。
元人間の分際で、調子に乗るなというのが彼らの本音だ。
「よい、皆の者……わたしが、代わりにやろう」
最年長の邪神が、アーカムの前で膝をついて、頭を下げる。
「お願いしますの一言もいえねえのかぁ~? 礼儀がなってねえなぁ」
「……お願い、します」
「【お願いします、臆病な我らの代わりに、勇気あるアーカム様、どうかエレン達を葬ってください】。はい復唱♡」
最年長邪神は、声を震わせながら……しかし、きちんとやりきった。
アーカムはにやりと笑うと、その神の頭を思い切り踏みつける。
グシャッ! と凄まじい音がすると、頭部が破壊された。
無論邪神は、この程度では死なない。
「しっかたねえなぁ! ふがいない同胞諸君のために、一肌脱いでやるかぁ~」
ポキポキと指を鳴らすアーカム。
「ここまで言って負けたら、承知しないからなぁ!」
頭部を復活させた邪神が叫ぶと、嘲るように言う。
「オレ様が負けるわけねーだろ。天地がひっくり返ろうと、あんなやつらに敗北するなんてあり得ないわ」
そう言って、アーカムは神々の前から消えるのだった。
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まだエレンに逆らうやついたんだ。
逆にびっくりだよ、この世界バカって多いんだね。
スキルなし、魔法なしの、元人間の神ねえ。
だからなに?
君がエレンに敵対する者であるならば、どんなやつだろうと容赦はしない。
僕は平等さ。
愛するエレンの敵は皆平等に、葬り去ってあげるよ。
たっぷりと苦しめてね。
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