作品タイトル不明
126話 カダス、主からパワハラを受ける
勇者エレンによって、支部長キンマンが撃破された、一方その頃。
その様子を、白い空間で見張るものがいた。
「くそっ、役に立たない豚め!」
彼の名前はカダス。
邪神将がひとり、力の邪神だ。
2対の腕を持つのが特徴的。
「あんな非力な小僧ひとりに何を言いようにやられているのだ! くそっ!」
キンマンの敗北にカダスは苛立つ。
「やはり 人間(サル) は弱い。なんという弱さだ。見ていて腹が立ってくる……!」
超越した存在であるカダスにとって、人間はあまりに脆い存在だった。
「あんな弱者が猛威を振るっているのが我慢ならぬ……! クソッ……! こうなったら直接おれが出向いて……」
と、そのときだった。
「カダスよ」
一瞬で視界が切り替わる。
そこは廃城だった。
玉座には彼らの主、イグが座っている。
「い、イグ様!」
「頭が高いな」
その瞬間、凄まじい力で、頭を押さえつけられた。
ぐしゃり、と顔面を地面に押しつけられる。
「い、イグ様……突然どうしたのですか……?」
「誰がしゃべって良いと言った?」
ゴボッ……! とカダスの全身の穴から血が噴き出す。
体中の血管をズタズタに引き裂かれたのだ。
「……す、すみません」
だが邪神は人間より遙かに高い再生能力を持っているので、すぐに元通りになる。
自分を押さえつけていた重圧が途絶える。
「げほっ! ごほっ!」
強力な攻撃を受けても、しかしカダスは心の中で歓喜していた。
やはり尊敬するイグは、絶対なる力を持った、自分たちの支配者なのだと。
「カダスよ。発言を許そう」
「はっ!」
」
「なぜエレンに手を出した。どうしてルルイエ様に背くようなマネをする?」
「…………」
……だからこそ、イグの態度が気にくわなかった。
「恐れながら、わが主よ。なぜルルイエに、あんな魔女にあなた様がそこまでへりくだった態度を取るのですか……!?」
立ち上がって、カダスはイグに訴える。
「あなた様は十分にお強い! この世界の支配者にふさわしいほど! なのに! なぜルルイエの軍門に降るようなマネを」
「死ね」
パァンッ……! とカダスの体が、内側からはじけ飛ぶ。
だがまたすぐに再生する。
それでも、肉体にダメージが残る。
「あ、主……?」
「死ね、死ね、死ね」
パァンッ! パァン! と連続して死と再生を繰り返す。
「げほっ! ごほっ! う、う、うげー!」
一度の死ですら、耐えがたい苦痛を発生させる。
それが幾度となく繰り返された。
その痛みは想像を絶する。
「愚か者め。おまえはルルイエ様の力を知らぬから、そんなバカなことが言えるのだ」
「あの魔女の……力?」
「至高なるあの御方は、この世の奇跡全てを司る。彼女の機嫌ひとつでこの星を消すことも可能」
「そ、そんなことが……誠に可能なのですか?」
尊敬する人物を否定され、イグは顔をしかめる。
「おまえは、私が嘘をつくというのか」
「め、滅相もございません! ただ……にわかには信じられぬかと」
いくらルルイエが凄いと主が言ったところで、所詮カダスは精霊王の強さを目の当たりにはしていない。
「愚かな。スキルを剥奪され、死んでいった愚者達を見てきたのではなかったのか?」
「だとしても、あなた様がおっしゃっているような、強大な力があるとはとても思えません!」
所詮はスキルを奪ったり与えたりしかできない。
カダスは、ルルイエの力がその程度だと思っているのだ。
ビキッ……! とイグが憤怒の表情を浮かべる。
「……地の底でわびろ」
その瞬間、カダスの視界がまた切り替わる。
そこは地の底、この星の中心。
「うぎゃぁあああああああああ!」
超高温のマグマに身を焼かれる。
体を焼かれ、灰になるが、すぐに再生。
しかしまた焼かれ……と死と再生を強制される。
「お、おやめください! 戻してください!」
『ならぬ。ルルイエ様への侮辱を撤回しろ』
「いいえ! 撤回しませぬ! 絶対に! なぜならば!」
そう、なぜなら……。
「あなた様の方が、何万倍も凄まじい力を持っていらっしゃるではありませぬかぁ!」
そう、言葉一つで神を殺し、地の底へ転移させる。
それほどまでの強い力を、実際に長年見続けてきた。
だからこそ、カダスにとっての力のピラミッドの頂点にたつのはイグであった。
……だからこそ、その上にルルイエがいることが、我慢ならないのだ。
「おれはあなた様の忠実なるしもべ! 死ねと言えば喜んで死にましょぉお! しかし! しかしあなた様が誰かのシモベとなることを、どうしても許容できないのですうぅううううううううううう!」
また、一瞬で視界が切り替わる。
古城へと戻ってきた。
「ゲホッ……! ゴホッ! ゲッ、ゲッ、うげぇ……!」
カダスはその場で吐瀉する。
「や、やはり……われらの頂点に立つのは、イグ様……あなた様がふさわさしい……」
ここまで酷いことをされても、カダスの忠誠心は揺らぐどころか、むしろ力を見せつけられて尊敬するばかりだった。
「眼の曇った愚者が」
だがそんな忠臣たるイグに対する評価は、酷い物だった。
尊敬する人物にコケにされ、泣きそうになる。
だがグッと我慢して、カダスは言う。
「おれの目は決して曇ってなど、いません! それを証明して見せましょう!」
「ほぅ、どうするのだ?」
「おれがあの女を! ルルイエをぶち殺して見せます!」
イグは、目を丸くした。
ぽかーん……と口を開いている。
それはまるで、幼い子供が、見当違いな発言をしているのを、耳にした大人のような表情だった。
「おれならあの女を! そしてあのガキを殺せます! 必ず、あのふたりの首をとって、あなた様のもとへ献上してみせましょう!」
「…………」
イグは怒りを通り越して、呆れていた。
「……もうよい。好きにしろ」
「ハッ……! ありがたき幸せ……!」
立ち上がったカダスは、勝ち誇った笑みを浮かべていう。
「ではお待ちください! この力の邪神カダスめが! あの魔女と勇者を打ち倒すことをお約束しましょう!」
「……もういい。さっさと行け」
カダスは、主が自分のことを認めてくれたと思った。
自分の力を信頼し、ルルイエを倒してくれるのだと、期待してくれているのだと、思った。
「おれが絶対にあいつらを殺して見せます……!」
フッ……! とカダスは煙のように消える。
イグは深々と、ため息をつく。
「度し難いほど、バカな男だ」
カダスの忠誠など、ルルイエに対する信仰と比べればミジンコみたいなもの。
「言葉で言って聞かぬと言うのならば、実際に体験するのが一番であろう。ルルイエ様ならば、絶対的な力をもって、あの愚者を 教育(ころ) してくださるはず」
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うっわ、きも。
全員キモいわ邪神って。
こう、何かを盲信して周りが見えてないやつってマジで気持ち悪いよね。ヘドが出るよ。
しかしあの 邪神(むし) 、僕を殺すだって?
まあ別にそれは良い。やれるものならやってみるがいい。
だがあの愚か者はエレンを殺すと言った。
君程度ができるとは到底思えないけど、エレンの敵に回った以上、僕は容赦しないよ。
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