軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

113話 女神ユゴス、転生者を集めるがナメられる

勇者エレンが、世直しの旅を決意した、一方その頃。

邪悪なる女神ユゴスは、打倒エレンのために動き出していた。

白い何もない空間にて、ユゴスは立っている。

目の前には水晶玉があった。

これは、映像を記録する魔法道具だ。

「ごきげんよう、転生者の皆さん。あなたたちをこの世界に招いた、女神ユゴスです」

水晶玉に向けて女神がしゃべる。

「この映像は、全転生者に送られるようになっています。さて、あなた方に、わたくしからお願いがあります」

パンッ、とユゴスが手をたたく。

すると、目の前に魔法の鏡が浮かび上がる。

鏡の中には、幼い顔つきの少年、エレンが写っていた。

「あなたがた転生者に、この少年を殺してもらいたいのです。彼はエレン、この世界において非常に危険な存在です」

女神は語る。

・エレンは魔王を殺すほどの強大な力を持っている。

・放置すればいずれ第2の魔王となる危険性が高い。

・そこで第2の魔王エレンを討伐して欲しい。

「あなた方には唯一無二の力……俗に言うチート能力を授けてあげました。その恩恵で良い思いをしていることでしょう。その恩を今返すチャンスがやってきたのです」

お願いというのには、あまりに上から目線の物言いだった。

だがこれは映像を転生者に送りつけるもの、反論は何も上がってこない。

「立ち上がりなさい、女神に選ばれし戦士達よ。あなた方を異世界に招いてあげた、女神のために。まずは顔合わせのために一度わたくしのもとへやってきなさい。集合日時と場所は送ります」

そう言って、ユゴスは通信を切る。

「ふぅ……。これでなんとか、エレン討伐の戦力は集まるでしょう」

ユゴスは真顔でそんなことを言う。

この女神は、本気で、転生者達が自分に感謝していると思っているのだ。

「エレン……覚えてなさい! わたくしの転生者軍団が……あなたを抹殺しにやってきますからね……!」

凶暴な表情で笑うユゴス。

エレンを倒すため、本来ならば異世界より転生者を呼び寄せようとした。

しかし精霊王ルルイエによって、転生者召喚の権限を剥奪された。

新しい兵士は集められないため、ユゴスはすでにこの世界に来ている転生者達を利用しようと考えたのだ。

数日後。

ユゴスはとある神殿へとやってきた。

この世界には神々を奉る神殿が各所に存在するのである。

「いくらエレンが強かろうと、物量で押せば勝てるのです……! わたくしが作った転生者軍団の恐ろしさを、とくとご覧じるがよいのです……!」

ユゴスは集合場所となっている、神殿の最奥へとやってきた。

扉を開けると、そこには大量の転生者が……。

「なっ!? なんですか、これは!?」

その場にいたのは、たったの四人の転生者達だった。

「おっせーぞタコ。いつまでまたせんだよ」

柄の悪そうな金髪の青年が、ユゴスを見るなり不愉快そうに顔をしかめる。

残りのメンツも彼同様に、女神に対して尊敬の念を抱くものはいなさそうだった。

「の、残りの者たちはどこにいるのですっ? まさか遅刻ですかッ? この女神の参集に遅れるなど万死に値しますよ!」

転生者達がきょとんとした表情になるも、一転して大笑いしだした。

「何がおかしいのです……!」

「ばーか、ここにいるやつらで全員だよ」

「全員……って、嘘でしょう!? 転生者はかなりの数いた! それがたった四人ですって!」

「四人も来てやったことに、むしろ感謝してほしーけどね」

生意気そうな少年が、ガムをくちゃくちゃとかみながら言う。

「四人……このわたくしが、呼んでやったというのに……四人しか集まらないなんて……」

呆然とつぶやくユゴスの前に、四人の転生者達が集まってくる。

「いちおー自己紹介してやっか。おれは【ハジメ】」

しょっぱなに話しかけてきた金髪の青年、ハジメが言う。

「ボクは【ニコ】。よろしく~オバサン」

さっきの小生意気な少年が、ニコ。

「でゅ、でゅふふっ……! せ、拙者【サブロー】でごわす。でゅふっ、けっ、結構タイプでござるなぁ……ぬほほほほっ!」

眼鏡をかけてふとった青年、サブロー。

「…………」

最後に、黒コートに、黒いフードをかぶった小柄な人物。

この四人が、今回ユゴスの集まりに応じた転生者の全てだった。

「つーかよぉ、ババア。来てやったんだから礼の1つでも言えやごら? あ?」

ハジメがすごんで言う。

「礼、ですって……。なぜわたくしが礼など言わねばならぬのです。あなた方を呼んだ恩人である、わたくしが?」

ユゴスは気を取り直し、胸を張って言う。

「社会的底辺のあなたがた屑どもに再起のチャンスを与えてあげたのです、むしろあなた方がわたくしに感謝するべきでは?」

四人は顔をあわせて、ぷっ……とまた笑う。

「誰が感謝するかよバーカ!」

「そーそー、ボクらを外れとか言ってポイ捨てしたくせに」

「い、いざ必要になったときになって呼び出すとかちょっと虫が良すぎるのではないですか、ユゴス氏~?」

まったくもって、彼らの言うとおりだった。

「知り合いの転生者連中に聞いてみたらよー、みーんな呆れてたぜ、てめえの傍若無人っぷりによ」

「ぷぷっ! オバサン人望なさ過ぎない~?」

かぁ……! とユゴスは羞恥で耳を赤くする。

「め、女神を愚弄するとは無礼千万! 万死に値しますよ!」

「ほー、んじゃ殺してみろよ」

「言っとくけど、ボクら相当強いからね~」

くっ……! とユゴスは歯がみする。

女神としての威厳をしめそうにも、ルルイエから魔法の使用権限も剥奪されている。

転生者達はそのことを知らない。

純粋に、自らのチート能力に自負を覚えており、女神程度に負けないと思っているのだ。

「ま、まあいいです。無礼な発言は、寛容な心で許してあげましょう」

「どこまでも偉そうな女だなぁ」

「でゅ、でゅふふっ! そういう気の強い女拙者き、嫌いでないでござるよぬほほほほっ!」

サブローを見て、ゴミを見るような目を女神が向ける。

「さて、あなたたちにはエレンの討伐を依頼したいのです」

「あんな弱そうなガキを倒すのに、ボクらみたいな転生者って必要なの?」

「子供だからとあなどってはいけません。魔王や魔王軍幹部を屠るほどに、あの男は強いのです」

ふーん、と興味薄そうに転生者達が言う。

「そんでよぉババア。倒してやったら、もちろん報酬は出るんだろうなぁ?」

「は……?」

女神ユゴスは、目を点にする。

「出るわけないでしょう?」

「「「は……?」」」

転生者達もまた、目を丸くしていた。

「あなた方を異世界に招いて、しかも比類なき力までも与えてやったのです。報酬としては十分すぎるものでしょう? それ以上に何かを欲するなんて強欲もいいところだとは思いませんか?」

彼らは顔をつきあわせると、はぁ……と呆れたようにため息をつく。

「なーんだ、がっかり。てっきり追加で転生者特典くれるのかってちょっぴり期待したのになー」

「…………」

ニコと黒コートは、きびすを返して、部屋から出て行こうとする。

「ま、待ちなさい! きゃあっ!」

ハジメは女神ユゴスの腹を蹴飛ばした。

「ガハッ……!」

ユゴスは地面に崩れ落ち、げほげほと咳き込む。

「め、女神に何をするのです! 無礼者!」

「礼儀を欠いてるのはてめえのほうだろうが、ああぁ!?」

ハジメの体から、莫大な量の魔力が吹き荒れる。

「なっ!? なんて魔力量……魔王を軽く凌駕している……! わ、わたくしが呼んだときよりも多いですって!?」

女神ユゴスは知らない。

人間はどこにいようと、進化する生き物だとということを。

「てめえババア、黙って聞いてりゃ調子載りやがって……上から目線がむかっつくんだよ!」

ハジメが手を伸ばすと、ユゴスは地面にぐしゃり、とたたきつけられる。

「なんて……パワー! なんなの、この力!?」

「てめえ様が授けてくれた外れスキルもよぉ、【奈落の底】で鍛え上げたことで、こんなに強くなったんだぜぇ」

「奈落の底……ですって……」

ハジメの力がユゴスを押しつぶそうとする。

「い、痛い痛い痛いぃいいいいいい!」

「まずはあんなところに飛ばしてごめんなさいだろうが! あぁ!?」

「て、転移先はランダムで……わたくしが意図して飛ばした訳じゃあ……」

「口答えすんじゃねえ! どっちが上なのか体で教えてやるか!?」

「まーまー、まつでござるよハジメ氏~」

サブローがハジメを呼び止める。

「んだよデブ、止めるンじゃあねえよ」

「でゅふ、この女、腐っても女神ですぞ? 確かにこいつが無能かも知れませぬが、上司的な存在から報酬をもらえるやもしれませぬぞ?」

「そりゃ……確かにそーかもな。でもむかっつくんだよこいつはよぉ!」

「でゅ、でゅふふ、せっ、拙者も同様でござる。だからこ、ここで体で払ってもらうのはどうでしょう……でゅふふふ♡」

サブローの背後から、ぬめぬめとした【タコの触手】が無数に生える。

黒く太いそれらが、ユゴスを拘束した。

「なっ!? 何をするのです! 離せ! わたくしは女神ですよ!? こんなことして許されると思ってるのですか!?」

触手の粘液はユゴスの衣類を溶かす。

「ちっ、ババアを抱くとか趣味悪いなーてめえ。興が冷めた。おれは帰るぜ」

ハジメは呆れたようにため息をつくと、きびすを返す。

「でゅ、でゅふふっ。わかってないでござるなぁ。このくらいの女の方が、だ、抱いてて気持ちが良いってう、薄い本でもいってましたぞぉおお! ぬぽぽぽぽっ」

「勝手にやってろクソ童貞。じゃあなババア。エレンとかいうガキのことは、ま、気が向いたらやってやんよ」

ひらひら、と手を振ってハジメが出て行く。

「ま、待ちなさい! わたくしを置いてくなど許しませんよ! 恩人を助けないなんて無礼だとは思わないのですか!?」

「まずはそのえらっそうな態度なんとかしろやババア。そしたら考えてやってもいいぜ? じゃあな」

フッ……とハジメが消える。

あとにはユゴスと、そしてサブローだけが残される。

「でゅふっ♡ せ、拙者をご満足してくだされば言うこと聞いてあげてもいいですぞぉ? ぬぽぽっ、こぽぉ……!」

「い、いやぁ……や、やめ、やめなさい! やめろぉおおおおおお!」

そして数時間の後、サブローはエレン討伐を了承したのだった。

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うっわ、気色の悪いもの見ちゃったよ。

次の相手は転生者のサブロー、か。

ま、別に誰が来ようが関係ないよ。

エレンを敵視した人間がどうなるか、教えてあげるよ。

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