軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

112話 これからの方針

ぼくがサイトーを退けてから、1週間ほどが経過した。

朝、ぼくがお風呂に入りに行くと、露天風呂にはたくさんのお客さんがいた。

みんな笑顔で湯船に浸かっている。

泥水だった湯船のお湯はすっかり元通りになっていた。

「いやぁまたここのお湯につかれるとは思わなかったよ」

「妙なチンピラもこなくなったし、今後は前みたいに利用しようかねぇい」

お客さん達の明るい笑顔を見て、ぼくはうれしくなった。

あまり長湯していても他のお客さんに迷惑だと思って、着替えて外に出る。

「あ! エレン様!」

脱衣所を出ると、女将さんの娘、ハナちゃんが笑顔で近づいてきた。

「あ! ご、ごめんなさい……お忍びでしたね……」

口を押さえて、キョロキョロと周囲を見やる。

廊下にいたお客さん達が目を丸くしていたが、特に気にもとめていなかった。

「ううん、気にしないで」

ティナからもらった変装の魔法道具のおかげで、 勇者(ぼく) に気づかなかったのだろう。

ぼくらは廊下を歩きながら会話する。

「エレン様、ありがとうございました。お風呂も元通りになりました! すごいですね、浄化の炎!」

ヘドロまみれだった温泉は、不死鳥の炎で焼くことで元通りになった。

「それにお客さんも前よりたっくさん来るようになりました! エレン様のおかげです!」

サイトーはあの後、この町から出て行ったらしい。

チンピラが出歩かなくなったおかげで、お客さんが元に戻ってきたそうだ。

それにどこからか【勇者の立ち寄った温泉宿】というウワサが広がったこともあって、以前より盛況なんだって。よかったよかった!

「やっぱり勇者様ってすごいです! みんなを幸せにしてくれるんですから!」

「そんな、大げさだよ」

そう言って、ぼくは少し沈んだ面持ちになる。

「みんな幸せ……か……」

「エレン様? どうかしたのですか?」

「あ、ううん! 何でもないよ! 忙しいのに時間取らせてごめんね」

ハナちゃんはお母さんのお手伝いをしている。

お客さんが増えたことで、毎日本当に忙しそうだ。

「これで失礼します! エレン様、いつまでもここにいていいですからね!」

彼女は笑顔で手を振ると、駆け足で去って行った。

「いつまでもここにいていい……か」

と、そのときだった。

「ふふ、だーれだ♡」

急に後ろから目を隠された。

「わわっ! ええっと……ルルイエさん?」

「おっ! よくわかったね! さすがエレンだ!」

ぱっ、と手を離すと、白髪の長身美女が立っていた。

彼女は精霊王、ルルイエさん。

精霊の神子たるぼくに、力を与えてくれる優しい人だ。

「ルルイエさん! お久しぶりです! どうしてここに?」

「ちょっと忙しくしていてね、暇ができたから湯治に来たのだよ」

ルルイエさんは着物を着ていた。

「すっごく似合ってます!」

「…………………………」

くら、っとルルイエさんは後ろに倒れると、そのままごんっ……! と頭をぶつけた。

「だ、大丈夫ですか!?」

ぼくはすぐさまルルイエさんを介抱し、頭に治癒の炎を使う。

「ふひっ♡」

「ふひ?」

「ああうん! 何でもない、心配かけてごめんね」

にっこり、とルルイエさんが上品に笑う。

いつ見ても、神秘的で大人な雰囲気の人だなって思う。

「そうだ! ルルイエさん、ありがとうございました!」

「ん? どうしたんだい急に」

「力を与えてくれてありがとうございます! 精霊の神子の力がなかったら、魔王を倒せませんでした」

魔王軍幹部、そして魔王も、ぼくひとりだけじゃ倒せなかった。

アスナさん達仲間と、ランたち精霊のみんな、そして精霊王さんがいてくれたから。

「ほんとうに、ありがとうございました!」

バッ! とぼくは深々と頭を下げる。

「うひょ……♡」

「うひょ?」

「ああうん! なんでも……くひ♡ な、ないよ……くふっ♡ くふふふふっ♡」

ルルイエさんは口元を手で隠して、上品に笑う。

びくんびくんと体を震わせているのはなんでだろう?

「ルルイエさん。魔王を倒すのに協力してくださって、本当にありがとうございました。なにか、お礼をしたいのですが」

「マジで!? いいの!?」

鬼気迫る表情で、ルルイエさんがぼくの肩をガッ……! と掴む。

「は、はい……。なにがいいですか?」

「む、むむむむっ! ちょ、ちょっと時間くれないかな!? 真剣に考えたいから!」

「いいですよ。決まったら教えてください!」

ルルイエさんは後ろを向いてグッ! グッ! と両腕を上げたり下げたりしていた。

「ところでエレン、浮かない顔をしているね。なにか気がかりなのかい?」

「え? そう、ですか」

「うん、お悩み相談には乗るよ」

ぼくらは廊下の端っこに置いてあった椅子に座る。

「魔王を倒して、本当にそれで世界は平和になったのかなって」

諸悪の根源たる魔王を倒せば、みんな幸せになると思った。

けれど現実は違った、サイトーのような悪人がまだいたんだ。

「そうだね。この世には数多の邪悪が存在する。世界に人がいる以上、弱者を踏みにじって私腹を肥やす存在が出てくるのは必然さ」

「そう……ですよね」

おとぎ話のように、魔王を倒して全てが丸く収まるなんて、世の中都合良くできていないのだ。

「エレン、そんな浮かない顔をしないでおくれよ」

ルルイエさんは微笑んで、ぼくの頬に触れていう。

「君が悲しい顔をしていると、僕も悲しい」

彼女に指摘されて、ぼくは自分が沈んだ表情をしていたことを自覚する。

「悪人がはびこる世の中が嫌ならば、君が世界を変えていけば良い。それだけの力は、君の中に眠っている」

「ぼくが……世界を……」

ルルイエさんは微笑むと、ぼくの前で言う。

「不条理にぶち当たったとき、一般人は【世の中そういうもんだ、仕方ない】と自分を騙す。けれど君は違う。世界を変える力を持っている」

くしゃ、とルルイエさんはぼくの頭を優しくなでる。

「よく考えなさい、自分がこれから何をするべきか。何をしたいのか」

「……そう、ですね。わかりました! アドバイスありがとうございます!」

ニコッと笑うと、ルルイエさんは目の前から一瞬で消えた。

「何をするべきか……か。うん!」

ルルイエさんとの会話で、これからの方針を決めた。

ぼくはさっそく部屋に戻る。

「エレン、どこ行ってたの?」

アスナさんがティナとお茶を飲んでいた。

「あのね、ふたりとも、聞いて欲しいことがあるんだ」

彼女たちが首をかしげる。

「これからのこと、なんだけど。旅に出ようと思うんだ」

「「旅?」」

「そう、世界を回って、困っている人を助ける旅」

ずっと考えていた、与えてもらったこの最強の力、魔王を倒した後……どう使うべきかって。

「勇者の力は、みんなの幸せのために使うべきだと思うんだ」

アスナさんは微笑むと、うなずく。

「良いと思うわ、素晴らしいことよ。さすがエレンね♡」

「ん、あんたらしい答えだと思うわ」

ティナもまた賛同してくれた。

「えっと……それでね、わがままになっちゃうんだけど……できれば一緒に、旅についてきて欲しい、です」

ふたりは笑顔でうなずく。

「もちろんよ♡」

「ま、まあ他でもないあんたの頼みだし……一緒にいたいし……」

ぼくはホッと安堵の吐息をつく。

良かった、駄目って言われたらどうしようって思ってた。

「じゃ、これからも勇者であるってことを隠しつつ、お忍びで世界を旅して、困っている人を助けていくのね」

「うん! ランたちも……協力してくれるかい?」

部屋の隅で控えていた、 神狼(フェンリル) のランは、人間の姿でうなずく。

「はい! 若様のゆく場所、どこまでもお供させていただきますよ!」

「わらわも力を貸そう。疲れたときは大翼でいつでもトーカの街へ戻れるしのぅ」

こうして、ぼくは仲間達とともに、今後の方針を固めるのだった。

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エレンにありがとうって褒めてもらったぁあああああああああああ! やったぁああああああああああああああああああああああああああああああ! うれしいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

これからもガンガン力貸すし、悪人にはペナルティ、よりいっそう気合い入れて与えていくぞおおおおおおおお! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

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