軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 第八話 変わらぬ日常

七歳の疫病除けの儀式も終え、村は長く続いた雪の季節を終え、春の温かな日の光が続き、積み重なった雪がようやく溶け始めた。

朝の鍛錬と、朝食を終えたあたしたちは、当番である動物たちの世話を行っているところだ。

「メリー、もっと草をいっぱい食べないと。最近、食べる量が減ってるよ。お腹空かないのかな? もうすぐ毛刈りの時期だし、毛を刈って寒くなり過ぎて病気ならないといいけど」

「メェエエ」

フィーンは、世話している動物に名前を付けるのが癖らしく、今も世話をしている羊に名前を呼びかけながら毛に付いた汚れを拭く。

彼は当番の時以外も、時間を見つけてはちょくちょく家畜小屋に顔を出して、飼っている動物たちの世話をするのを楽しそうにしている。

羊以外の動物たちもフィーンが一生懸命に世話してくれる人だと分かるみたいで、彼の顔を見るとすぐに小屋から顔を出して近寄ってきた。

「んもー」

「コケコッコッコ」

「ほらほら、すぐに世話してあげるから並んで、並んで。アルフィーネは小屋の中の掃除頼めるかな?」

「はぁーい」

小屋の中にいる動物たちが、フィーンの近くに寄ってきたので、あたしは箒を持って家畜小屋の中を掃除を始めた。

古い敷き藁の上のフンの始末をして、新しい敷き藁を敷いていく。

うちの孤児院は、食糧の自給自足を行っているため、家畜たちからは卵や牛乳、チーズ、羊毛など色々な物を提供してもらう。

動物好きなフィーンと違って、あたしは動物のお世話するのはめんどくさいなぁと思うけど、サボるとフィーリア先生に剣術の練習しちゃダメって言われるから、渋々お手伝いをしてる。

新しい敷き藁を敷き詰め終えると、糞尿混じりの古くなった敷き藁をまとめて堆肥を作っている場所に運び込む。

これが一番嫌いな作業だ。

匂いがすごくきつい。鼻が曲がりそうになる。

でも、フィーンがやってる動物たちの身体の拭きは、あたしがやろうとすると動物たちが逃げていく。

自然と当番の時は、あたしが小屋掃除にすることになっていた。

「フィーン、小屋の掃除終ったよー」

「あ、うん。ありがとアルフィーネ。もうじき乳しぼりも終るし、もう少しだけ待ってて」

あたしが小屋の掃除をしている間に、すでに家畜たちの身体拭きを終えたフィーンが、牛の乳を搾っていた。

「フロリス、今日もいっぱい出してくれるね。調子は良さそうだ。餌を変えてみたのがよかったのかい?」

「んもー」

「そうか、よかったのか。じゃあ、他の子たちもあっちの餌にしてみるようダントン院長先生に頼んでみるよ」

「んもー」

フィーンがニコニコと笑いながら、牛と語り合っている。

なんでかは不明だけど、昔から動物との会話ができるらしい。

あたしは動物たちが何を言ってるかなんて、さっぱり分からないや。

相手が繰り出す剣の軌道の想像なら、いくらでもできるんだけどなぁ。

「よーし、終わり。フロリスもありがと。みんな、小屋に戻っていいよ」

フィーンの号令に従い、家畜たちは機嫌よく小屋に戻っていく。

「たっぷり牛乳も搾れた。卵は取れた?」

「うん、掃除のついでに取っておいた」

「これでフィーリア先生の美味しいご飯が食べられるね。片付けして、牛乳と卵を食堂に持って行ったら、みんなが種まきしてる畑に行こう」

「うん」

今日は教室での授業はなくて、みんなで夏に向けての小麦や野菜の畑作りを行っている。

畑の出来次第で自分たちのお腹が満たされるのかも決まるため、孤児院の子供たち総出で作業を行っているのだ。

あたしたちは家畜小屋を後にすると、食堂に食材を置き、皆が作業している畑に顔を出すことにした。

「フィーリア先生、ダントン院長先生! フィーン君とアルフィーネちゃんが戻ってきたよ」

「おや、もう、家畜小屋の掃除は終わったのかい?」

あたしたちの姿に気付いたダントン院長先生が声かけてたきた。

ダントン院長先生は成人して卒業間近の男子たちと、冬の間に固くしまった畑の土をクワを振るって掘り起こしいたようで、汗だくになっている。

「ええ、もう終わりました。卵の回収と牛の乳しぼりもついでにやっておいたので、食堂に置いてあります」

「あら、そうなの!? フィーン君、ありがとうね。アルフィーネもありがとう」

剣術の練習のことで、叱られることが多いフィーリア先生に褒めてもらえた。

たまには先生たちの機嫌も取っておかないと、フィーンとの剣術の練習もできなくされちゃう。

今日はいっぱいお手伝いしておいた方がいい気がする。

「フィーリア先生、まだやることありますか?」

「え? あら、アルフィーネが農作業お手伝いを自分から申し出るなんて、珍しいわね。いっぱいあるわよ。雑草も生えてきてるからみんなで引っこ抜いてたところ。手伝ってくれるの?」

あたしは頷くと、すぐに畑の畔に生えた雑草を引き抜き始めた。

「ダントン院長先生、俺も畑の掘り起こし手伝います!」

「おぉ、それは助かるよ」

フィーンも近くにあったクワを手にして、年上の子たちに交じって土を掘り返し始めた。

自分たちが食べるために、農作業をして一日を終える。

孤児院生活の変わらない一日を今日もまた過ごした。

成人した後は、自分で食べていくため、仕事をして稼がないといけないって先生たちに言われてるけど、あたしは農作業があまり好きじゃないし、やっぱり王都に出て冒険者になった方がいいかもしれない。

冒険者は剣の腕があれば、稼げるって卒業した人が言ってたし。

成人したらフィーンも誘って、王都で冒険者になるのも悪くない選択肢かもしれない。

夕食を終え、自室に戻ったあたしは、日記を書き終えると、農作業で疲れた身体をほぐしてから、ベッドに入って眠った。