軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話:ロセナの冒険者ギルド

「わあ、本当に大きな町だなあ。それにちゃんとしてる」

ロセナに到着したフーカは感心した。

行き交う人の多さもそうだが、街がぐるっと頑丈な柵で囲われているからだ。

きっと魔物が出るためだな。

魔物には注意しないと、とフーカは気を引き締めた。

門番に声をかける。

「こんにちは」

「うむ。子供一人か?」

「あたしはナグ村の者だよ。一二歳になったからロセナに来たんだ」

「ああ、洗礼式明けか」

門番は納得した。

辺境一大きな町であるロセナには求人も多い。

必然的に求職者も多く集まるのだった。

「職が決まっていないのだったら、商工会事務所を訪ねるといい。求人が山ほど出ているからな」

「ありがとう。冒険者ギルドの場所はどこかな?」

「冒険者ギルド? 冒険者になりたいのか?」

「うん」

門番は思った。

一二歳の女の子が冒険者?

難しいとは思うが、敏捷性と協調性はありそうだ。

適性がないわけじゃないな。

諦めたら転職してもいいわけであるし

「門から入って正面左の大きな建物が冒険者ギルドだ」

「ありがとう! 行ってみる」

「冒険者に拘ることはないんだぞ。ロセナには仕事はいくらでもあるからな」

「村長さんにも似たようなこと言われたな。親切にどうも」

フーカは冒険者ギルドを訪ねた。

受付で挨拶する。

「こんにちは」

「やあ、いらっしゃい、お嬢ちゃん」

「あたし冒険者になりたいの」

「ほう? 女の子なのに冒険者志望って珍しいな。理由を聞いていいかい?」

「洗礼式で風の神様の加護をいただいたの。役立てたくて」

「神の加護? マジか!」

「加護を存分に使えるようにするためには、レベルがどうしても必要でしょ? そうなると魔物退治が早道だから」

女の子が冒険者ギルドに何の用だと注目していた周りの冒険者が色めき立つ。

風の神の加護だって?

神の加護を得られること自体が、数十年に一人と言われるほどのの希少さだ。

中でも風の神の加護は、強力な魔法にも似た攻撃を使い放題になることが、伝承として知られているからだ。

そんな加護持ちが王都でもない田舎町ロセナに現れるとは。

「風の神の加護なんてすげえじゃねえか!」

「まあ待て。まず鑑定のオーブで能力を調べる」

名はフーカ。

レベル一。

ゼフノボレロスの加護。

加護持ちであることが本当だと明らかになるとお祭り騒ぎになった。

「おい、風の神の加護持ちって確か、持ち魔力を使用することなしで風魔法相当の攻撃撃ち放題なんだろ?」

「伝説ではな。しかしそれはレベルが上がればの話だ」

「うん。まだあたしはちょっとした風を吹かせるくらいしかできないの」

「やってみてくれ」

フーカがびゅっと風を吹かせると歓声が上がった。

「使える使える! 魔獣の目に吹きつけてやれば怯ませられるし、植物系魔物の状態異常花粉も怖くねえ。飛行魔物のバランスを崩すこともできる!」

「なあ、フーカ。うちのパーティーに入ってくれよ」

「バカ野郎! ギルド皆で育てるんだよ!」

「あのう、あたしはあんまりお金を持ってないんだよ。装備品もないし、最初はお使いとかお掃除とかの簡単な依頼をこなしていこうかと思ってたんだけど」

しかし冒険者達がフーカの真っ当な意見を笑い飛ばす。

「フーカ。才能とやる気があることがわかってるのに、雑用はムダってもんだぜ」

「おう、ギルマス。お古の装備品出してやってくれよ」

「武器なんか一応ダガーだけ持ってりゃいいぜ」

「準備できたか? 近場の魔物の森行くぞ」

「誰か風魔法使えるやつ、ついて来てくれ。攻撃魔法のイメージを見せてやりてえ」

「その前にフーカ。お前宿決まってるのか?」

「決まってない。さっきロセナに着いたばかりだから」

「ギルドと提携してる適当な宿を決めといてやるよ」

「ありがとう!」

「よーし、行くぞ!」

あれよあれよという間に魔物退治に行くことになった。

ロセナの冒険者は親切な人ばかりだなあと、フーカは感動した。

その日の内にフーカはレベルが一つ上がり、カマイタチ様の真空攻撃を使えるようになった。

次の日からは真空攻撃を使いまくる。

「おいおい、疑似魔法攻撃使い放題のやつがいるとこんなに戦闘が楽なのかよ?」

「冒険者二日目だろ? もうエース級以上の働きじゃねえか」

「神の加護って伊達じゃねえなあ。ビックリしたわ」

「えへへー」

「フーカちゃん。ゼフノボレロスの加護持ちなら、空気の動きから魔物の気配を辿れるはずよ。感知できると不意打ちを受けなくなるから、とても便利なの」

「お姉さん、ありがとう! 覚える!」

すぐに感知を使えるようになり、また風向きを変えて魔物に気取られるのを遅くする技をも使えるようになった。

冒険者達は魔物の生息場所や性質、あるいは剥ぎ取りの仕方など、経験の足りないフーカに様々なことを教え込んだ。

また物理攻撃力や防御力に劣るフーカに魔物の攻撃を通すことがないよう、さりげなくカバーした。

もっとも感知で魔物の存在を知り、速攻で退治するフーカが攻撃を受けることなどなかったが。

「すげえな。もうフーカは一人で十分戦えるだろ?」

「でもあたしだけじゃあんまり素材もお肉も持って帰れないし。誰かと一緒に探索行きたい」

「ハハッ、そうかそうか」

フーカは自分を育ててくれた皆に、強い感謝の気持ちを持っていた。

恩返しがしたかったので、探索時には必ず誰かに同行してもらい、剥ぎ取り素材や肉を分けた。

フーカは皆に可愛がられた。

「買い取り頼むよ」

「おう、毛皮か。これフーカが仕留めたやつだろ?」

「わかる?」

「わかるさ。フーカは一発で正確に首を刎ねるから、毛皮が奇麗なんだよな。高く買い取れる」

「やったぜ! フーカ様々だ!」

この頃ロセナは質のいい毛皮が手に入るとして、商人達の間でも評判になり始めていた。

圧縮空気を習得すると、防御面でもフーカに隙はなくなった。

カマイタチが通用しない一部の硬い魔物に、圧縮空気をぶつけることもできるようになった。

さらに範囲攻撃を会得すると、フーカが最早田舎町ロセナに収まらない器であることは明らかだった。

「おい、フーカ」

「なあに?」

「もうロセナじゃ学ぶことはねえよ。王都に行け」

冒険者全員がフーカを可愛がっていた。

フーカがいたほうが稼ぎがいいことも事実だった。

現在ロセナの景気がいいのも魔物の脅威が激減しているのも、フーカの功績が大きいことなんかわかっていたのだ。

それでもフーカを田舎町に縛りつけるのは、フーカのためにもクドナック王国全体のためにもならないというのが、ロセナの冒険者ギルド構成員の総意だった。

「うーん、でも皆にお世話になってるし」

「フーカがどこまで名を轟かせるか、見てみてえんだよ」

「おう。活躍すればロセナまで噂が聞こえてくる。そしたら俺らは自慢できるのさ。あのフーカは俺達の仲間なんだって」

「そお? じゃあ王都に行って勉強してくる。覚えることなくなったら戻ってくるよ」

冒険者ギルドの面々は頷きながらも苦笑いした。

風の神の加護持ちが覚えることがないくらい成長したら、王都の冒険者ギルドが手放すはずはないから。

「王都の冒険者ギルドには転送魔法陣があって、ロセナに一瞬で帰ってこられるんだぜ」

「そうなの? 王都の冒険者ギルドすごい!」

「ああ。しかし転送魔法陣は王都の冒険者ギルドに所属していないと使えねえんだ」

「教えてくれてありがとう!」

フーカは安心した。

王都で暮らすようになっても、すぐロセナに帰ってくることができると知ったから。

「あたしは王都に行く。またねー」

フーカは王都に旅立った。