作品タイトル不明
逃げられなかった勇者君
【勇者ランドルフ視点】
俺の罪を村長達が、肩代わりしてくれる事になった。いや〜、国家権力は怖いね〜。だから俺様を守ってくれる、国王陛下や国のお偉いさんには、尻尾を振っておかないとね。いずれは、俺が王になってやるけどな……だって、勇者だもんな。
まあ、メンドーだけど冒険者ギルドへ向かった女達を、追いかけてる事にした。冒険者ギルドに着くと……
騎士様に、連行されそうになってる村長家族。それを必死に引き離そうとする、クリスティ。笑顔で、手を振っているルディ。
「お祖父様、お父様、お母様どうして?」
連行してる騎士も、少しムッとした顔をしている。
「ルディ? 何で家族が、連れて行かれそうになってるのに止めないのよ。ほら、アナタからも、騎士様に説明してあげて……」
クリスティに話を振られたルディは、
「んー? 騎士様……村長一家は村を守るどころか村が襲われている時に、村中の金銭を持ち逃げしました。それにより村人には多数の犠牲者が出て、私が村に駆けつけなければ全滅でした。全てが村長一家の責任放棄と、敵前逃亡によるものです」
顔色が悪くなっていくクリスティ。そうだぞ、村長達が罪を被らないと俺達まで……クリスティには、後で言っておかないと。
「ルディ? 何でそんな事を言うの? 家族でしょ?」
ルディはヤレヤレと、手でジェスチャーする。クリスティも一緒に、連れて行かれたようだ。全く、女は感情的でダメだな。俺様を見習え〜。
次はルディの両親かぁ……まあ、俺の雇い主でもあった。そして、ウルリケ・ルイーゼ姉妹の親でもある。
「じゃあ、もう会うこともないだろうな。俺はクソ親父が嫌っていたこのスキルで、冒険者として成り上がってやるさ。これが俺の生き方だからな」
「そうか、ガンバれよ」
、とだけルディに言うと、騎士に手を出して連行されていく。代わって母親が、ギャアギャア煩かった。
「私達を助けなさいよ。そんなんだから……せっかくあの女から奪ったのに……」
なんだ? 面白そうな話を始めそうだな。
「アンタは、知らなかったのね。本当にマヌケ。お前の母親……あの女は、私が殺してやったんだ。アンタの父親を、手に入れる為に。私よりも何をやっても、優れていたあの女を……」
アハハ、そうだったんだ。ルディよ、ザマァないな。思わず、ニヤニヤしてしまうな。
「アハハ、マルクスと、私と、アンタの母親マリナは幼馴染だったのよ。でもマリナは抜け駆けして、私からマルクスを奪ったのよ。赦せるワケないじゃない。だから……」
「何か分かった顔ね。そうよ。アンタの母親だけでなく元夫も……」
すげーな、オバハンなのにえげつない。ルディが妖怪ババアって言ってたけど、正解かも。
その言葉を聞いていた、姉妹がいるんだけどな。
二人は呆然としたまま、立ち尽くしていた。
「そんな目で私を見るな……コノヤロー」
何やらツボのような物を、ルディに投げつけた。
床に落ちて、それは割れたが中身は砂かな? なんだろう? と思っていたら……ルディの肩に乗っていたスライムが、突然飛び降りその灰? を全て自分に取り込んだ。意味が分からん。
「そうか、ロランダが持っていたのか。隠していたんだな……ルディ、それはお前の母親の、マリナの遺灰だ」
遺灰って? 死んだ人を火葬したときに出るアレかな? 汚いな〜。スライムが掃除してなければ、俺様が汚れるかもしれないだろうが……
「そう、マリナのな。ロランダの心を見抜いて、ケアしてやれなかった俺が悪い。恨むなら俺にしろ…………最後にお前の母親マリナは、美しかったぞ」
騎士に連れて行かれる元雇い主と、少し遅れてウルサイ母親も連れて行かれる。ウルリケ・ルイーゼ姉妹も、後をついていった。それでは……世話になったな。
当然、村長達と逃亡した者達や、ラウラの父親も、同時に連れて行かれた。まあ、しょうがないな。俺の罪と一緒に死んでくれ……なんちゃって。
ああ、俺のオヤジだけは、罪を免れてるぞー。勇者の親族が罪人じゃ、格好つかないからな。
だから、可哀想な彼女達には、俺様がジックリと後で可愛がってやろう。
全く世話の焼ける、女達だな。グフフフ。
股間を膨らませながら、俺はギルドを後にする事にしたが……後ろからルディが騎士に詰め寄ってる。
「なぜ、勇者達は裁かれないのですか?」
アハハ、それは勇者だからだよ。そんな簡単な事も分からない、バカなルディ君よ。
俺は最後にルディの目の前で、ニッコリと笑ってやる。ヤツの悔しそうな顔は、いつ見ても楽しいな。
ああ、素晴らしい見世物だったよ。立ち去る俺の目の端でルディが空中に手をかざして、何かを回すような動作をしていた。なんじゃそりゃ。
相変わらず、ワケの分からないヤツだな。
※この時ルディの頭には天のささやきが……
〘ユニークスキル『運命の輪』の効果が発動しました。運命の輪が逆位置から正位置に変化して回り始めます〙
俺は気味の悪さを感じて、足早にギルドを去る事にした。勇者である俺を引かせるとは……アイツとはもう、会うこともないだろう。
俺は勇者だ。アイツはただの平民。所詮は、住む世界が違う。精々地べたを這い回るスライムのように、しぶとく生きろよ。
罪を逃れ俺はしばらくたったある日、モラーザの街中を歩いていると、『ドス、ドス、ドス』と腹の辺で……衝撃が……
なんだ?
俺は手で腹を抑えて……赤い?
血だ。
なんで血が……
目の前を見ると、
そこには……