作品タイトル不明
イキる勇者君
【勇者ランドルフ視点】
俺の名はランドルフ。いわゆる奴隷というヤツだ。
俺が奴隷ではなく、親が奴隷だから自然と子供の俺も同じだった。
まあ、俺が世話になってるご主人様というか雇い主に近いかな? 大型の牧場と農地を持つ主人に仕えて、物心つく時には俺も畑や家畜の世話などをやっていた。
人口も三百人程しかいない小さな村だから、自然と同じくらいの年齢でつるむようになる。
俺達の場合は主人の息子ルディを中心に、子供達が集まっている。
ハッキリ言おう……俺はこのルディが、大キライだった。
いつも、アイツは良い子ちゃんで点数稼ぎをしている。しかも周りに女達を侍らして、偉そうにしている。村人達からも評判が良い。村では有力者の親は金持ち、本人は優秀だ。
カワイイ婚約者や、美少女姉妹や、幼馴染までいる。そんなの男として赦せるか?
俺には無いモノばかり、ルディは持っている。
毎日が退屈で何をやってもルディに劣る俺は、完璧にルディの腰巾着だった。境遇にも不満だ。
そんな俺にも、ようやくツキに恵まれる事になった。
スキル鑑定の儀……年頃の子供には天からスキルなる不思議な力が与えられるとか、偉そうな坊さんが言ってたっけ。
俺は最初は、全然期待してなかった。そうだな、飯の種になるようなスキルなら、良いなと思っていた。それが……
「奴隷の子、ランドルフ……スキルは『勇者』だ……伝説の……」
会場になっていた村の広場はざわつく。俺は後から聞いたんだけど『勇者』というのは、特別な意味があるらしい。昔、世界を恐怖に包んだ魔王から世界を救ったのが、勇者だったらしい。
それから俺の人生は、まさに真逆になった。
勇者様々だな〜。イヤ、これが本当の俺だったんだな。
逆にあの気に入らないルディは、最弱の魔物スライムしかテイム出来ないスキルだったらしく、村中の笑い者になっていた。ザマァないな。
それとは別に女の子達は勇者程ではないが、それなりに良いスキルだったらしい。
あのルディばかりに近づいていた女達の、俺を見る目が変わっていた。
最高のスキルを手に入れ、村人達は『勇者』を有難がる。牧場の主人は、終始羨ましそうに俺を見ている。村長なんかは領主様より褒美を貰ったらしいし、俺に媚を売ってくる。
領主様の使いより『王国最高の学園へ行かないか?』と打診もあった。学園は選ばれた者だけが、入学を許される。
この学園を卒業すると、お金もたくさん稼ぐ事が出来るらしい。そこで俺は思いついたんだ。
「女の子達もなら学園へ行ってやる」と……ルディはダメだけどな。
早速、村長と領主様の使いが話し合い、俺達の学園入学が決まる。これでルディと女の子達は進路が別々になり、俺がルディが今まで居た場所に座る事が出来る。アハハ、ザマァないなルディ。
ヤツの情けない姿を見るのが、最近の俺や女達の娯楽になっていた。
スキルを得てから、身体の調子が良い。これも勇者の効果らしい。全く素晴らしいな、スキルってヤツは。
女の子達に日々、ルディの情けない姿を見せて逆に俺は活躍して見せた。
やっぱり女の子は強い男が好きみたいだな。
「アハハ、チョロいな。所詮、良いスキルの無いヤツなんて、勇者の俺様の足元にも……そうだ、そろそろ人気をルディから奪ってやるかな……それには……」
その頃村では、俺が国王陛下から学園入学への特待生へなる推薦状とかってモノが送られるとあって、お祭り騒ぎ。そこで俺は、
「ルディと仲良くするヤツは、勇者ランドルフの敵になるからな……国王陛下や領主様に、言いつけてやるかな……」
少しボソッと、村人の前で話をしたら……効果てきめん。皆でルディに強く当たり始めて、凄い笑えた。本当にスライムみたいなヤツ。地べたを這いずり回っているのが、お似合いだぜ。アハハ。
あー、毎日が楽しいな〜。最高の気分だぜ。村人だけでなく、女の子達もルディに冷たくしだした。ここは、俺がルディから奪ってやらないとね。
最近の女の子達の発育も良くて、ガマンするのも大変だし……上手くすれば、ウシシ。
「ランドルフ、どうしたの? 急に……」
ここは普段は、倉庫になっていて誰も近づかない。若い連中の逢引き場所になってるって、同じ奴隷から聞いた。そこにあのスライムヤローの婚約者で、村一番の美少女クリスティを呼び出した。やる事はなんて……決まってるだろう。
「ああ、クリスティ。実は……俺はクリスティが、好きみたい。今まではルディに遠慮していたんだけど、俺も勇者になったからキミに釣り合いが取れると思う。ルディはあの通り、スライムだからな……これからの事を考えるとな。当然、婚約者のキミも大変な思いをすると思うし、今なら勇者ランドルフがキミを守る」
最初は困った顔をしていたが、やはり思う所があったのだろうな……少し考えさせてと……
辺りは暗くなり、空は今にも泣き出しそうな雰囲気だ。
俺は構わず、クリスティを抱きしめて口づけをした。
数秒毎に空は光る。雷が近づいて来ているのだろうな。
「あっ、もう。ウフフッ、ランドルフ。何だか恋人みたい」
「ああ、俺は好きだから、大丈夫、俺が幸せにするよ。クリスティ」
クリスティはされるがまま、口づけを何度も繰り返す。その柔らかさと熱い吐息を感じる。
ついに雨が降り出し、すぐに本降りになる。俺とクリスティは濡れてしまうので、クリスティの家に行く事になり急いで帰る事にした。
その時、クリスティがいつもしていたリボンが取れて、地面に落ちる。
「あっ、リボンが……」
「泥だらけじゃん。無くした事にすれば? アイツはお人好しだから、キミが言えば信じるし。それにいつまでも持ってるワケには、いかないだろう?」
「うん、そうだね……バイバイ、ルディ」
クリスティが去るのを見てから、足で落ちたリボンに泥を掛けてクリスティの後を追った。
本当に勇者様々だぜ〜。クリスティの唇は柔らかかったぞ〜。なぁ、ルディごちそうさま。