作品タイトル不明
正位置・逆位置
俺は故郷で起こったスタンピードを、ボスになっていたヘルハウンドを討伐して終わらせた。
故郷は壊滅状態で再起不能と判断して、近隣で一番大きな都市であるモラーザへ村人の護衛をしながらやって来た。
コレまでの処理と今後の行動があるので、翌日に冒険者ギルドに訪れる約束をして宿へやって来た。
そこでアオイにヘルハウンドを吸収して取り込んで貰い、俺は『天のささやき』を聞いていた。
〘ユニークスキル 運命の輪(ウィール・オブ・フォーチュン) が規定値に達しました。ユニークスキル 運命の輪(ウィール・オブ・フォーチュン) が使用出来るようになりました〙
おお、何か分からんけど、凄そうなスキルだね。確か運命の輪って、タロットカードとかじゃなかったっけ?
良く分からんけど……しかもユニークスキルなのか……
〘ユニークスキル 運命の輪(ウィール・オブ・フォーチュン) が発動します〙
どういう事だろうか? 詳細鑑定してみよう……
運命の輪……世界に存在する十番目の超越したユニークスキルで、人生の転換点、大きな変化、チャンスの到来、不可避な運命を教えてくれます。ポジティブな流れ(好転・転機)や運命的な出会い を示唆し、状況が自力では抗えないほど強制的に、あるいは急激に変わるタイミング を表します。これには逆位置も存在して全てが逆転します。しかし、所持者はそれに介入する事が出来る。
…………?
どういう事だ? スキルが運命を教えてくれるのかな? しかも超越したユニークスキルって凄そう。十番目という事はいくつあるのか分からないけど……九は確実にあるんだろうな……
よし、とりあえず凄そうなのは分かった。しかも発動してるらしいしな。自分でコントロールは出来ないみたい。体調なんかも別に変わらないし『天のささやき』さんがそのうち教えてくれるだろう。
明日に備えて休んで冒険者ギルドへ……
翌朝、よく晴れ渡った空の下で、冒険者ギルドを目指して歩いている。村人達の今後とかも、決まるのだろうか?
冒険者ギルドの扉を開けて、中に入ろうとすると……
〘ユニークスキル『運命の輪』が発動しました。運命の輪が逆位置にて回り始めます〙
なんだ? え〜と、運命の輪が発動していたんじゃ……いや、それよりも逆位置って事は、運命の輪の効果が逆になるんだよね。
運命が逆回り。ラッキーの反対アンラッキーだよね。
危機的な状態になるのかな?
まぁ、天のささやきは俺にしか聞こえて無いはずだから、様子を見てよう。
「おっ、来てくれたね。確かルディ君だったかな? 改めてキミのおかげで、このモラーザも助けられた。本当にありがとうございました」
ん〜、感謝だよね。アンラッキーな状況ではないな。
「ああ、俺の目的の為だから構わないよ。それで村人はどうなるのでしょうか?」
「それだが……まあ、当事者だしコッチらの部屋へどうぞ」
案内された特別室では……扉を開けた瞬間にまさに、修羅場と言っても過言ではない。
俺が助けた村人達と、村中の財産を持ち逃げして一番に逃げ出した、村長一派が激しく罵り合っていた。
これを教えてくれていたのだな……運命の輪ってすげー。
「お前達のせいで村がメチャメチャだ。しかも逃げ出した上に、俺達の金まで勝手に持ち出して……」
「ワシらが居れば、また村は再建出来るんだ。安全な場所に身を隠して何が悪い」
アハハ、今回の事件でやっぱり俺の元婚約者クリスティの実家である村長達が、村人に詰め寄られている。
今にも乱闘になりそうな雰囲気だ。
でもね……
「ギルドの職員さん。いくらスタンピードだからって村の責任者が村を放置して、逃げ出して村人の財産を持ち逃げするのって犯罪なんじゃないのですか?」
俺は事実を確認してあげる。だってコイツらが逃げないで村に残ってスタンピードを対処していたら、まだ生存していた村人もいただろうに……
「村の管理は、領主様より村長が預かっている事。よってそれを放棄した時は厳罰です。また、財産の持ち出しは立派な窃盗になります」
一応、この国は法治国家ではあるんだよね。だからこんな理不尽は許される理由は無い。というか、これが許されてしまうと国は揺らぐよ。
犯罪王国になってしまうからね。
「だってさ。あっ、そうそう。さっきアンタが『ワシが居ればまた村は再建出来る』ってヤツだけどね。どうやってやるのかな〜? 誰もアンタに、着いていかないと思うけど。一度でも村を見捨てた村長の下で、村民になりたい人なんていないと思うけどね。そもそも、アンタが村に帰る事なんて無いんだから……」
俺はギルドの入り口方向から人が来る気配を感じて、そちらを指差す。
そこには領主様の騎士と思われる、甲冑姿の人が数人入って来た。
「どうやら、お別れの時間が来てしまったようだね。ほ〜ら、見てご覧よ。こ〜わ〜い、騎士様のご登場だよ。クリスティと婚約者破棄しといて良かった。俺まで疑われかねないし……」
村長は下唇を噛み締めている。そこから血が滴り落ちる。握った拳が白くなり、プルプル振るえている。
「アハハ、ザマァないな。お前が嫌っていた『スライム』みたいにプルプルして。オッサンが振るえても可愛くないし……」
村長は怒り狂ったように俺に飛びかかってきた。俺は数発殴られ……逆に殴り返した。そりゃ、ボコボコだよ。殴らせてあげたから、正当防衛で〜す。
「ヴェ〜、もゔ、ゆずじでぐれ〜。ワシが、悪がっだがら〜」
アハハ、足までプルプルしてるし。コイツの最後に殴れて良かった。