軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

深夜だよ!全員集合!

男達を何かが倒していく。男達が持っていたランタンの明るさでは全貌を捉えることが出来ない。

そのランタンですら男達が倒される度に1つ、また1つと数を減らしていく。

その何かは、真っ黒だった。夜の闇に紛れ、よくよく目を凝らさなければ、男達が勝手にぶっ飛んで落ちていく様にしか見えない位に真っ黒。

とうとう、何人も何人もいた男達の最後の一人が……。

ブゥゥン

とぶっ飛んで……。

ドサッと落ちた。

最後の男が持っていた最後のランタンの灯りも消え、辺りは暗闇に包まれた。

アーオ

今までで一番近くから、エマの真後ろから、猫の声が聞こえる。

振り向くと大きな金色に光る両の目が此方を真っ直ぐ見つめている。

頭ではそんな筈はない……と思いながら自分の感覚、感情、期待を優先し、金色の目に尋ねる。

「……コーメイ……さん?」

コーメイさんは港が高校最後の年に死んだ。

あの時はおかしくなるくらい沢山泣いた。苦しくて、痛みすら感じる喪失感。ペットロスなんて言葉あの頃には無かったけど、あんな言葉では表現出来ないくらいの悲しみが港を襲った。

誰よりも解っている。あの痛みは、あの悲しみは今でも不意に港を動けなくしてしまう。

でも目の前の金色の目はコーメイさんの目だ。大好きな、間違えようもないコーメイさんだ。

「にゃー」

あの日のように、金色の目が応える。

こんな奇跡あるのだろうか。

「本当にコーメイさん?」

もう一度、夢じゃないと言って欲しくて金色の目に尋ねる。

「にゃー」

もう一度、金色の目が応える。

両の頬を思いっきりつねりながら、こんな期待だけさせるような残酷な、残酷過ぎる夢ではないと確認しながらもう一度金色の目に尋ねる。

「本当にホントにほんとにコーメイさん?」

我慢できずに、涙が頬を伝う。

ずっと会いたかった。

無理だと解っていた、けど、ずっとずっと会いたかった。

大人になっても、仕事から帰ったら家の門で迎えてほしかった。

会社で嫌なことが遭った日はにゃーと一言添えて慰めてほしかった。

ずっとずっと一緒にいたかった。

「ほっ本当に?……ひっく……ホントに……ほんとに?」

うまく言葉が出なくなる。涙が後から後から溢れてくる。

今夜中、隠れていた月がエマの涙に応えるように顔を出す。

本当だよ……とエマに教える様に月明かりが目の前の猫を照らす。

「にゃー」

「っっ!コーメイさん……!」

三毛猫がゆっくりと近付いて、力いっぱいつねったせいで赤くなった頬を、大粒の涙で濡れた頬を舐める。

相変わらずのザリザリとした感触。ふふふっと笑って思いっきりコーメイさんに抱きついた。

「でっかくなったね」

「にゃん♪」

金色の目も、ちょっと平たい顔も、三毛の模様も、思い出のままのコーメイさん。

ただ、サイズだけが……一回りどころか、二回りどころか、ラブラドールレトリバーのラブよりも、エマよりも大きくなっていた。

例えるなら、馬とポニーの間位の大きさで、猫としては有り得ないサイズだ。

抱き締める腕に更に力を込める。ちゃんと温かい。

ただ、ただ、平凡な田中家の異世界転生はコーメイさんにまた逢うために在ったんじゃないか。

ゴロゴロ喉を鳴らすコーメイさんの首に腕をまわし幸せを噛み締める。

……と、後ろからスンスンとエマのにおいを嗅ぐ気配がした。

抱きついたままで顔だけそちらに向けると、コーメイさんと同じ位大きな真っ黒な猫の顔があった。

全身真っ黒で、オレンジ色の目が

エマにすり寄ってくる。

「にゃーん」

「もしかして……もしかしてもしかして……かんちゃん?」

「にゃーん」

顔をエマの体に擦って甘えてくる。

かんちゃんもまた、田中家が飼っていた猫だ。

真っ黒で甘えん坊な猫が目の前にいる。

「さっき助けてくれたのかんちゃんだったのね」

男達は、かんちゃんの繰り出すネコパンチに次々と倒されたようだ。多分、柔らかな肉球が繰り出すネコパンチは当たった時の衝撃音すら吸収し、肉球から離れた男達がぶっ飛んでいく音と落下した時の音しか聞こえなかったんだと思われる。

「かんちゃんありがとう!」

コーメイさんの首から離れ、かんちゃんの鼻の上辺りを撫でる。

コーメイさん……かんちゃん……!

「チョーちゃんとリューちゃんは?」

もしかしたら……と、田中家で飼われていた残り二匹の猫の名を挙げる……。

「「ニャー!」」

コーメイさんの後ろから二匹の猫が現れる。

一匹はふわっふわの長い毛を持った白猫。

一匹はコーメイさんと同じ三毛猫。

先に白猫のチョーちゃんがエマに近寄る。ふわっふわの毛がエマを包む。

「チョーちゃん!」

「にゃーん♪」

チョーちゃんは日本猫ではなく洋猫のようなふわっふわの毛並みをしている。毛の薄い耳や鼻はピンク色で、父の一番のお気に入りだった。

そんな毛並みに反して顔が、和顔なのが若干の残念感を誘う。

チョーちゃんを見て、猫も和顔とかあるのね、と家族で笑ったことを思い出す。

「チョーちゃん、お父さんも喜ぶよ!」

チョーちゃんの鼻先も撫でる。

「リューちゃん!」

エマが呼ぶと、三毛猫のリューちゃんもエマに近寄る。

高校を出て、就職したての港をコーメイさんの代わりに支えてくれたのはリューちゃんだ。

リューちゃんはコーメイさんの子供で、かんちゃんとチョーちゃんはリューちゃんの子供。

リューちゃんの鼻先も撫でてエマはふふふっと笑う。

ヨシュアを虜にしたあの天使スマイルで。

「お父さん、お母さん、航兄、ぺぇ太、コーメイさん、リューちゃん、かんちゃん、チョーちゃん……田中家これで全員集合だね!」

「「「「にゃーん♪」」」」