軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての1位

2月の終わり、最後のテスト結果が張り出されていた。マゼンダさんと談笑しながら、無遠慮な視線を無視して廊下を進んだ。人だかりが私が通ろうとするとサッと道が開いた。

国王陛下からの王太子妃の打診があってからおよそ1カ月。クリス王太子殿下は定期的にバージェス公爵閣下と王宮で話し合って、国王陛下の説得をしているらしい。そのため王宮の正式な場ではそのような話は出ていないそうだが、国王陛下の周辺からその話が漏れ出ていて、それがまことしやかに噂として流れていた。陛下が発生源というのが本当に厄介で、王命でもあれば私に選択肢はなかった。

いまだラペット王太子妃が療養中となっていた。事件の詳細が分かっている一部の者たちはラペット妃の王太子妃の復帰は厳しいと知っていたため、『第二王太子妃が王妃陛下となる』ことは周知の事実で、高位貴族の中でその座の争いが過熱してきているらしい。あと卒業まで1カ月を切っているので、テストが終わったら屋敷から出ないようにと、公爵閣下に厳命されていた。さすがに過去2回ほど攫われかけているので、それには素直に従っていた。つまりこれは久しぶりの登校日だった。

「あら久しぶりね。」

ざわめきが少しだけ収まって、振り返ったのはグリーン侯爵家のミラ様だ。綺麗な緑色のロングヘアがさらりと肩から滑り落ちた。その先を思わず目で追ってから挨拶を返した。

「お久しぶりです。ご機嫌いかがですが。」

「ねえ、あなたが二人目の王太子妃だって噂があるけど本当なの?」

家格だけで言えば、年頃の娘がいるのはバージェス公爵家の私の次は、グリーン侯爵家のミラ様だ。私が断れば次にもしかしたらお声がかかるかもしれないので、聞いてくるのは当然か。あとはバーン侯爵家のクレアス様だったが、最近婚約なさったし、後のお家も婚約者がいる。しかし直系姫で無ければ何人か高位貴族の血筋で未婚の女性かいるはずだ。

「いえそのような事実はございません。」

そうとしか答えられない私をつまらなそうな目で見ていた。

「じゃあ、第三王子殿下が、王太子になるって話は聞いたことある?」

周りが一気にざわついて、空気が一気にピリッとなった。そちらも噂になっていたのか。もともと第三王子擁立派のグリーン家からその話が出るのは自然だった。最近王妃陛下の周りではそれを目論んで動いている話は聞いていた。しかし現実的ではないと思っていたのだが・・・。噂で無かった場合はバージェス家の跡取りとなるため、シエナ様に婿入りするはずだった第三王子殿下は王太子殿下になるので、今度はバージェス家の跡取りの席が空くのか。

「そのような話も出ておりませんわ。」

しかしそうなったら私も他人ごとではないな。本格的に婿を取ってバージェス家を継がねばならない。それにそうなるとシエナ様が時期王妃陛下ということになる。それはちょっと見てみたい。

「なーんだ何にも聞いていないの?」

「はい。まったく。」

「つまんない。」

それだけ言うとミラ様はさっさと友人たちと歩き出してしまった。

マゼンダさんとふうと一緒にため息をついたので、目が合って少し笑いあった。

「モニカ!先輩~!」

ミラ様とすれ違ってミランダさんが走ってこちらにやってきて、その勢いのまま私に抱き着いてきた。

「お久しぶりです~休日に会いに行っていましたがやっぱり学園のほうが気軽に会えますね。」

マゼンダ先輩も!と今度はマゼンダさんに抱き着いていた。お二人はいつも学園で会えるのではと思ったが、口に出さなかった。そこでやっとざわめきが戻ってきた。

「あ、結果見ましたか?」

「いえ。まだです。」

こっちですよ、とミランダさんに促されまた人垣が崩れたのだが、あまり気にせずに掲示板の前に行った。その時初めてその様子を見たミランダさんがぎょっとしていたが、苦笑いを返しておいた。

掲示板にツイっと目をやり、自分の名前を探した。いつも上には第三王子殿下かレオン様の名前があるから、今回もそうだろう。いや今回はレオン様はいないのか。

「え、上?」

今回の成績優秀者、1位モニカ・バージェス、2位リチャード・クラウド・・・。

初めてだ。1位になるの。

ここ数カ月第三王子殿下は忙しかったので、学園にはあまり来ていなかった。テスト前は普通に登校していた私より、勉強に使う時間がなかったのは想像に難くない。それでも、1位になったことは単純にうれしかった。何をやっても、どうやっても勝てたためしのない第三王子殿下に、勉強で、テストで、一度だけ、勝ったのだ。

手で口を押えて、にんまり顔を隠した。

「すごい!モニカさん!1位よ!」

「ホントだ凄いです!」

「あ、ありがとうございます。本当に夢みたいです。」

うれしい。すっごく。

その後帰りにシエナ様も合流してカフェで4人でお茶をして、おめでとうということでおごってもらい、ルンルンで帰宅したのだ。

「何かありましたか?」

私室でフィナの出迎えを受けるまでニヤニヤしていた。

「実は、テストで1位だったんですよ~。初めて!初めてです!」

「おやそれはおめでとうございます。何もできませんが。」

「何もしなくていいのですよ、そう言ってくれるだけで。」

「そうですか。・・・お嬢様にお手紙が来ていますよ。」

いつも手紙は私室の書類入れに入れておいてくれるのに。直接手渡されたそれはレオン様からのものだった。名前を見ただけで一気に心拍数が上がった。フィナがすっと出してくれたナイフをありがたく受け取り、封を切った。