軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第098話 エレノア・オーシャンを作ったのは正解だったな

目が覚めたヨシノさんと共にリビングに戻った。

リビングに戻った俺達はテーブルにつき、カエデちゃんが飲み物を持ってきてくれる。

サツキさんとカエデちゃんはまだビールが残っていたので、そのままだが、俺は飲み干しているため、おかわりのビールだ。

そして、ヨシノさんの目の前にはコーヒーが置いてある。

「飲みたくないな……」

ヨシノさんはカエデちゃんが置いたコーヒーを苦笑いしながら見た。

まあ、一服、盛られたしね。

「私はそんなことしませんから大丈夫ですよ」

カエデちゃんがニコニコと笑うが、その笑顔がちょっと怖い。

「ビールの方が良かったかしら?」

俺はコーヒーを嫌がるヨシノさんに聞く。

「いや、これでいい。私はお酒が飲めないんだ…………飲んだらすぐに寝てしまう」

どっちみち寝るんかい……

お持ち帰りしやすい人だな。

「ふーん、それで本題なんだけど、あなたはどこまで知ってるの?」

「君が沖田君なことはわかっている」

うーん、本当かなー?

「私は沖田君ではないわよ? というか、女性に対して、男認定は失礼よ」

エレノアさんの必殺の誤魔化しでいこう。

話術のスキルを見せてやるぜ。

「いや、今さらしらばっくれても無駄というか、遅い」

誤魔化し失敗。

まあ、どう言い繕ってももう無理だわな。

「ふーん……なんで私が沖田君と思ったの?」

「その前に君はそのままで行くのか?」

うるせーなー。

微妙に引いてんじゃねーよ。

「沖田君がお好みかしら? でも、着替えるのが面倒なのでこのままね」

「…………そうか。いや、いいんだ。人の趣味はそれぞれだしな。うん」

もうそれでいいよ……

「それで? 理由は?」

「私の中では最初から沖田君とエレノア・オーシャンが同一人物ではないかという思いがあった」

「性別という大きな違いがあるわよ」

「特殊メイクかと思ったんだ。だが、身長の違いで一度はその可能性を捨てた」

まあ、身長は誤魔化せないからね。

もし、身長も誤魔化しているとしたら沖田君がシークレットブーツを履いていることになる。

だが、そんなものを履いて冒険なんかできない。

「それなのに私を沖田君と思った理由は?」

「歩き方が一緒だった。君は振る舞いや口調がオーバーなくらいに女性だが、歩き方が沖田君とまったく一緒だ」

歩き方って……

「そんなものでわかるの?」

「わかる。それに君は沖田君の時もエレノアの時も常に背後を警戒し、いつでも反撃できるようにしていた。それこそファミレスでサインを書いている時すら背後にいる私に対し、警戒していた。これをするのは沖田君だけだ」

「ふーん、その程度でねー」

「ああ、その程度だ。だが、状況証拠としてはそれで十分だろう。あとは君から聞き出せばいい…………まさか、話す前に眠らされるとは思わなかったがな」

やはり俺の所に直接来たのは俺ならどうとでもなると思ったからだろうな。

眠らせて正解だったのだ。

「ふーん、なるほど、なるほど…………で? それを知ってどうしたいわけ? そして、それを知って何になるの?」

「君の正体が知りたかった。正直、エレノア・オーシャンは本当の魔女なのかとすら思っていた。安全な存在なのかどうかの確認がしたかったんだよ。特にあのゲートを閉じるという脅しが怖い」

売り言葉に買い言葉で適当に言っただけなんだけど、効果が抜群だわ。

「安心した? でも、私が沖田君だとしてもゲートを閉じることができない証明にはならないわよ?」

「できるのか?」

「できるわけないじゃないの。そもそも、ゲートって何よってレベル」

マジであれは何なんだろうね。

「君のその力は何だ? どうしてあんなにアイテムが手に入る?」

さて……

俺はチラッとサツキさんを見る。

「お前の好きにしろ」

うーん、まあ、いっかー……

サツキさんが言うように本部の情報が手に入るし、この人、Aランクだもんなー。

「ユニークスキルねー」

俺は正直に言うことにした。

「ユニークスキルであることは想像がついていた。まさか、フロンティアから密輸しているとは思えんしな」

どうやって密輸するんだよ。

「錬金術っていうスキルがあるのよ」

「なるほど…………作ってる説が当たりか」

ヨシノさんは錬金術という言葉だけでわかったようだ。

まあ、わかるわな。

錬金術ってまんまだし。

「すごいでしょー」

「すごいな…………では、君は錬金術というスキルで様々なアイテムを作り出しているだけ。そして、それを売っているだけ、でいいんだね?」

「そうね。そもそも、私は魔女と自称もしていないし、フロンティア人とも言ってない。あなた達が勝手に言い出したことよ」

「それはすまない。実は君のことを魔女と言い出したのは私だったりする。それが広まっただけだ」

お前かい!

「勝手に決めつけて、恐怖しないでもらえる? 善良な一冒険者よ」

「善良かどうかは置いておく」

「善良よ」

善良、善良。

めちゃくちゃ善良。

「実はカエデがいる手前、言わなかったが、沖田君とエレノア・オーシャンが同一人物と疑った理由はもう1つある」

「言わなくていいわよ」

大体、わかるし。

「ヨシノさん、言ってください。私も想像がついてます」

カエデちゃんがヨシノさんを促す。

「君、今もだけど、チラチラと人の胸を見るのをやめなさい」

だって、正面にいると、目が勝手に行くんだもん。

「コーヒーを見てるだけ」

「無理あるぞ…………」

俺は立ち上がり、ソファーまで行くと、カバンからサングラスを取り出し、装着する。

そして、席に戻った。

「続けて」

ヨシノさんを促す。

「そこまでするか? もしかして、この前のファミレスでも最初にそれをかけてたのは視線を誤魔化すため?」

「続けるのはその話じゃないわ。私が錬金術でアイテムを作っている。それはその通りよ。それで? 何か悪い?」

「う、うん…………別に悪くはない。だが、そのスキルは異常だ」

ヨシノさんはとりあえず、話を元に戻すようだ。

カエデちゃんの目がちょっと冷たいけど……

「でも、別に問題ないでしょう? 私は罪を犯しているわけではない」

回復ポーションやアイテム袋を作って売っているだけだ。

何も悪くない。

「ああ、そうだ。ただ、私は立場上、これを報告しなければならない」

「本部長?」

「そうだ。前にも言ったが、私はあの人の部下だからな。この調査も本部長からの指示だし、当然、調査結果は報告する」

まあ、そうなるだろう。

「そう……それはご自由にどうぞ。ただ、二度とエレノア・オーシャンは現れないけどね」

「何故だ?」

ヨシノさんが眉をひそめながら聞いてくる。

「私が何のために存在していると思うの?」

「金を稼ぐためだろう」

「そう。でも、それは沖田君でもできる……この前、あなたは私がわざと目立つようにしていると指摘したでしょう? それは合ってる。私はね、隠れ蓑なの。金を稼げば、良い人も悪い人も集まってくる。実際、この前もどっかの国のヤツが来たわ。そんなヤツらから狙われる生活は嫌なの。だから私のスキルがバレた時点でおしまい。エレノアは消える。あとはこれまで稼いだお金でカエデちゃんと生きるわ」

20億近くはある。

2人で生きるには十分すぎる。

「今度は沖田君が狙われるだけだろ」

「本部長が他の人に言うの?」

「そうなるかもしれん。少なくとも、政府には言うことになるだろう」

「じゃあ、日本はおさらば。クレアとハリーを頼るわ。適当にポーションでも流せばいい」

あいつらは単純でわかりやすいからどうとでもなる。

「…………日本を捨てるか?」

「信用できないもの。どうせ、格安で売れって言ってくる。もしくは、適当な理由をつけて無償提供ね」

「そんなことにはならないと思うが…………」

「残念。もう信用できないわね。恨むなら進藤先生を恨みなさい」

あの人は極端だと思うが、もし、スキルがばれ、回復ポーションが水と薬草だけで作れることを知ったらそんなものに何百万も出さないだろう。

「なるほど……君のこともスキルのことも知られない方が良いということだな?」

「そう、その通り。別にあなたも本当は報告するつもりもないでしょ」

「私は真面目に仕事をする」

「ふふっ、嘘ばっかり。だったら何故、私の家に一人で来たの? 情報を掴んだのなら私の家に来る前に本部長に報告するのが普通よ。でも、あなたはそれをせずにまず、私と接触をした。あなたは私と交渉に来たんでしょ?」

他にないだろ。

「…………その通りだ。私は自分の判断でこの件は報告しない方が良いと判断した。君の言う通り、政治家共は信用できない。必ず、情報を流すか、君を利用しようとする」

「やっぱりそうなるの?」

「今までもそうだったんだよ。新アイテムやらなんやらの情報をいち早く入手し、それを利用されてきた。実際、君の情報もマスコミに流された。下手をすると、外国にも流されるかもしれん。君は情報だけで金になる」

黄金だもんね。

「なるほどねー……で? あなたは何が欲しいの? ただで黙るような性格はしてないでしょう?」

「私がそんな悪に見えるか?」

「報告できないのにわざわざ単身で魔女の屋敷に来てまで知ろうとしたんだもの。何か欲しい物があるんでしょう? やっぱりお金?」

「回復ポーションをくれ」

サツキさんが言うようにお金ではなく、回復ポーションか……

「回復ポーションが欲しいの?」

「ああ、そうだ…………すまん、ちょっと君の部屋に行っていいか? カエデとサツキ姉さんは遠慮してもらいたい」

ヨシノさんがそう言うので俺はカエデちゃんとサツキさんを見る。

2人は顔を見合わせていたが、すぐに俺を見て頷いた。

「いいでしょう。じゃあ、来なさい」

俺とヨシノさんは立ち上がると、再び、俺の部屋に向かった。