軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第091話 鍋

俺はギルドに戻ると、カエデちゃんのもとに向かった。

「ただいまー」

「おかえりなさい。どうでした?」

カエデちゃんはいつもの笑顔で今日の成果を聞いてくる。

「あの人ら、教えるのが上手いわ。おかげさまで楽勝」

俺はカバンを受付に置いた。

「さすがですねー。あ、精算してきます。私ももうあがりなんで一緒に帰りましょう」

「だねー」

俺がカエデちゃんに武器とステータスカードを渡すと、カエデちゃんは立ち上がり、奥へと行ってしまった。

しばらく待っていると、カエデちゃんが戻ってきて、精算書をくれたのでそれを受け取り、更衣室に向かう。

更衣室にはこれから冒険に行く人が数人いたが、シャワーは空いていたので、シャワーを浴び、服を着替えた。

服を着替え終え、ロビーに戻ると、受付にはすでにカエデちゃんがいなかったため、外に出て、カエデちゃんを待つ。

そこからしばらく待っていると、服を着替えたカエデちゃんがやってきた。

「おまたせしましたー。待ちました?」

「全然」

実はちょっと寒かった。

「うーん、待たすのも悪いし、やっぱり制服で出勤しようかな?」

「いや、私服がいいと思うよ。かわいいもん」

「えへへ、そうですー?」

「そうそう」

「じゃあ、そうしまーす!」

カエデちゃんは嬉しそうに腕を組んでくる。

単純な子だよ。

俺達は駅まで腕を組んで歩き、タクシーで自宅近くのスーパーに向かった。

そこで買い物をすると、歩いて家に戻る。

「先輩、すぐ用意しますんで待っててください」

今日はカエデちゃんが鍋を作ってくれるのだ。

「了解……って、電話だ」

スマホの着信音が鳴ったのだが、沖田君用ではなく、ソファーに投げてあったエレノアさんのやつだ。

「ということはナナポンかな?」

俺はソファーにあるスマホを手に取り、電話の相手を確認する。

スマホの画面には予想通り、ナナカさんと表示されていた。

「やっぱりナナポンだわ。あいつ、いつもいいタイミングでかけてくるな」

「……………………」

俺は着信ボタンを押し、電話に出る。

「もしもーし」

『チェンジ』

このガキ……!

「俺は今から飯なの。エレノアさんがよかったら後で電話しろ」

『あ、これからご飯でしたか……すみません』

ナナポンが謝ってきた。

基本的には真面目な子なのだ。

「そうそう。鍋にするんだ」

『おー! いいですねー。最近はめっきり寒くなりましたし』

ホント、ホント。

「お前も来るかー?」

『いいんです? お邪魔なような……』

ナナポンが遠慮してきた。

「カエデちゃん、いいよね?」

俺はテーブルの上に鍋やコンロを置いているカエデちゃんに確認する。

「せっかくだし、一緒に食べましょう。具材、買いすぎたし」

「だってさー。あれも食べたい、これも食べたいってなったら具材が余りそうなんだよ。どうせ、1人でコンビニ弁当を食べるんだろ? 来いって」

『じゃあ、お邪魔します…………あ、エレノアさんで』

まあ、そうなるだろうよ。

「はいはい。お前、今どこよ? 家?」

『いえ、ちょうどたまたま練馬にいますね』

へー。

ちょうどいいな。

「…………やっぱりね」

カエデちゃんがボソッとつぶやく。

「んー? まあいいや。じゃあ、来い」

『わかりました。じゃあ、黒ローブじゃなくて、私服でお願いします』

注文が多いな、こいつ……

「なんで俺が私服を買ったことを知ってんの?」

『ご自分で言ってましたよー』

言ったっけ?

言ってないような気がするんだが……

まあ、いいか。

「私服を着ればいいんだな。めんどくさいやっちゃ」

『お鍋に黒ローブは合いませんから』

どれも一緒じゃね?

「ふーん、わかったー」

あまりファッションのことは突っ込めない。

ダサいと思われたら嫌だし。

『では、すぐに行きます!』

「はいはい」

俺は返事をすると、電話を切った。

「カエデちゃん、悪いけど、ナナポンの分も準備して。俺はワガママ女のせいでエレノアさんにチェンジしてくる」

「はーい。あの子は相変わらずですねー」

ホントだわ。

俺は準備をカエデちゃんに任せると、自室に行き、服を脱いでTSポーションを飲んだ。

そして、エレノアさん用の服を着ると、髪を結び、リビングに戻る。

リビングに戻ると、カエデちゃんがすでに準備を終えていた。

すると、インターホンが鳴った。

「俺が出るわ」

俺はどうせナナポンだろうと思い、カエデちゃんを制すると、玄関に向かう。

玄関を開けると、予想通り、ナナポンが立っていた。

「いらっしゃい」

「すみません、急にお邪魔して」

ナナポンが申し訳なさそうに入ってくる。

「別にいいわよ。私もあなたに話があったしね。まあ、上がりなさい」

「お邪魔しまーす」

俺はナナポンを連れて、リビングに戻る。

「ナナカちゃん、いらっしゃーい」

リビングに戻ると、カエデちゃんがナナポンに声をかけた。

「お邪魔します、朝倉さん。すみません、お邪魔しちゃって」

「いいよ、いいよ。いっぱいあるしね」

テーブルの上には肉や魚、野菜がいっぱい並んでいる。

「ホントにいっぱいありますね。さすがは成金です」

「ナナカちゃんも贅沢してる?」

「いえ、あれから抑えるようにしました。たまにプチ贅沢をする程度です」

あんな目に遭えば、反省もするか。

「まあ、座りなさい。話は食べながらでいいわ」

俺はそう言いながらカエデちゃんの対面に座る。

すると、ナナポンが俺の隣に座った。

「じゃあ、いただきましょう」

カエデちゃんが煮込んでいた鍋のふたを開ける。

「そうしましょう」

「いただきまーす」

俺達は鍋を食べ始め、それと共にビールを飲み始めた。

「ビール、不味いです」

今日で二十歳になったと思われるナナポンにはビールは早かったらしい。

「冷蔵庫に甘いのがあるから勝手に取りなさい」

「はーい」

ナナポンが冷蔵庫にいったので俺はナナポンが残したビールをイッキする。

「この美味さがわからないなんてね……労働後の一杯は格別」

「魔女のくせにOLみたいなことを言ってますね」

カエデちゃんが笑う。

「美味しいもん」

「私も学生の頃は美味しくなかったです」

確かに昔はカエデちゃんも『ビール、にがーい』って言って、カシスばっかり飲んでた記憶がある。

「朝倉さーん、このブドウのやつをもらってもいいですかー?」

キッチンからナナポンの声が聞こえる。

「いいよー」

カエデちゃんが答えると、ナナポンが甘いブドウの酎ハイを持って戻ってきた。

「御二人はビールをよく飲めますよね。あ、これ、どうしよう……って、空だし」

ナナポンが俺がさっき一気飲みし、空になったビール缶を持つ。

「もらった」

「えー……いや、間接キス云々を気にする歳でもないですけど、普通、飲みます?」

「もったいないじゃないの」

「沖田さん、あなた、金持ちのくせに貧乏性ですね」

えー、そんなことないよー。

というか、そこだけ沖田君にすんな。

飲んだのはエレノアさん。

「わかる、わかる。この人、やきとりも唐揚げも数を数えるんだもん。口酸っぱく言ったらやらなくなったけど」

ぶっちゃけ、今もこのエビは1人、2尾だなって思ってたりする。

「それは嫌ですねー。デートとかでそれをやられると冷めます」

「ねー」

えー……

カエデちゃん、冷めてたん?

「その話はよしましょう! 沖田君が泣いちゃうから。丸一日、フロンティアで頑張った後にやる話題じゃない」

もっと労われ!

「んー? エレノアさん、フロンティアに行ったんですか?」

ナナポンが聞いてくる。

「そうそう、その話。今日、沖田君がAランクの三枝ヨシノさんにミレイユ街道に連れていってもらえたのよ」

「おー! Aランク! どういう縁です?」

「ふふっ、沖田君がナンパされたの」

すごくなーい?

「それ、明らかに怪しまれてません?」

ナナポンでもそう思うらしい。

「まあ、そうでしょうよ。でも、大丈夫でしょ。そんなことよりも、今日、ミレイユ街道に行ってみたけど、私とナナカさんでも行けそう。もうダイアナ鉱山にこだわる必要もないし、スケルトンは飽きたから今度からミレイユ街道に行きましょう」

「エレノアさんがそう言うならわかりました」

その素直さを沖田君にも分けろっての。

「ナナカちゃん、変装は決まったの?」

カエデちゃんがナナポンに聞く。

「決まりました!」

「どんなの?」

「それはお楽しみです! 変なのではないので安心してください」

変ではないのにお楽しみ?

ぜってー、変だろ。

「ふーん……」

カエデちゃんも俺と同じことを思っているっぽい。

「大丈夫ですってー。エレノアさん、明日、暇です? そのミレイユ街道に行きましょうよ」

明日?

今日も行ったのに?

うーん、でも、ナナポンは結構、期間が空いてるし、行ったほうがいいかな……

「カエデちゃん、明日は?」

「仕事ですんで大丈夫です。でも、明日は土曜ですよ?」

土曜は客が多いって言ってたな。

「まあ、ギルドはしょうがないわ。でも、ミレイユ街道は中級冒険者だし、土日も平日も変わらないでしょ?」

中級ともなれば、副業ではやらんだろ。

「まあ、そうですねー。ナナカちゃんも大丈夫?」

「大丈夫です!」

「珍しくナナカさんがやる気になってるから行ってくるわ」

「わかりました。朝からは…………ないか」

カエデちゃんがナナポンを見て、苦笑しながら首を振った。

まあ、俺も大学生のナナポンが朝から行くとは思えない。

だって、俺らもそうだったもん。