軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第274話 裏切者

アルクと共にかつてお披露目会というパーティーをした屋敷を出ると、10人くらいの兵士が待っていた。

「ご苦労様。行こうか」

アルクが兵士に声をかけ、歩き出すと、兵士達はアルクと俺を囲むように隊列を組んで歩き出す。

街中を歩いているのだが、人の気配がない。

「ゴーストタウンね」

「言うなっての……人が別の場所で集まってるって言ったじゃん」

わかるけど、なんか怖いんだよなー。

「そこに行くわけ?」

「いや、今から行くモンタニエ家は少し離れているところだから基本、人と出くわすことはないよ」

なーんだ。

フロンティアの普通の人を見たかったんだけど、無理っぽいな。

俺達はその後も歩いていくが、アルクが言うように人と出くわすことはない。

そのまま周囲を見渡しながら歩いていると、建物の質が変わってきだした。

これまでは建物が密集していたのだが、この辺りは建物の間隔が開いている。

しかも、建物の敷地には広い庭があり、その敷地を塀が囲んでいた。

「貴族の方が住むところ?」

「そうだよ。貴族街だね。ほとんどが空き家だけど、一部はまだ住んでいる。人口が極端に減ったから皆、町の一角に集まっているんだけど、一部の貴族は動きたくないっていうことで住み続けているんだ」

わからないでもないな。

今まで住んでいた所を動きたくないのだろう。

しかも、そんなわがままが通る権力者だ。

「大変ねー」

「ものすごくね」

命を狙われているからかすごく実感が籠っている。

俺達がそのまま貴族街を進んでいくと、とある屋敷の前に立ち止まった。

「ここ?」

「そうだね」

アルクが頷いたので屋敷を見てみる。

屋敷は2階建ての建物であり、結構大きい。

ん?

2階を見ていると、とある男がこちらを見ていた。

だが、すぐにカーテンを閉める。

「アルク、中にいるわよ」

「わかってるよ。実は昨日の夜から見張りがずっといる」

逃げられないわけか。

「入る?」

「そこに呼び鈴があるでしょ」

アルクが指差した先の門柱には確かにスイッチがあった。

「押してもいい?」

「どうぞ」

アルクが許可をくれたので押してみる。

だが、何の反応もない。

「これで大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ちょっと待とう」

アルクにそう言われたので待つ。

しかし、それから5分は経っているのに誰も来ない。

「もう一回押そうか?」

「もう少し待ちなよ。せっかちだなー……ほら、来たよ」

確かに建物の扉が開き、髭を貯えたおじさんがこちらに歩いてきた。

「これは殿下……朝早くから我が家に何用ですかな?」

おじさんは堂々とアルクに聞く。

「跪かないのか?」

「その必要はないでしょう。どうぞこちらに……」

おじさんがアルクを屋敷に招こうとするが、アルクは一歩も動かない。

「それこそ、その必要はないだろう。モンタニエ、お前には反逆罪の容疑がかかっている」

「そうですか……最後に話でもと思ったんですけどね」

最後、か。

「ここでよかろう」

「殿下がそれで良いのならば構いません。人がいなくてロクに歓迎もできませんしね」

人がいない……

「話とは何だ?」

「たいした話ではありません。私はあなたに忠誠を誓う気がない」

モンタニエははっきりと告げた。

「亡き兄に忠誠を誓っているからか?」

「そうです。私はローラン殿下につきました。必ずやあの方が次の王だと思いましてね」

「その慧眼は正解だ。兄が王太子だったし、弟の私から見ても優秀だった。必ずや良き王になるだろうと信じていた」

これはアルクの本心だろう。

「ええ。私もそう思います。ですが、不幸にも亡くなりました」

「私がやったわけではないぞ。もちろん、陛下もだ」

「当然です。あなた方は私があなた方がローラン殿下を暗殺したんだと思い込み、このような手段に出たのだと思っているでしょうが、それは違います」

違うんだ……

「では、何だと?」

「これは王家への不満です。あなた方はよりにもよって他国を頼った」

他国……

俺達の世界のことか。

「そうしなければどうしようもないだろう」

「いえ、何度だってやりなおせます。人は減りましたが、これは一時的にすぎません。人はいくらでも増えるのです」

「それにどれくらいの時がかかる? それまで苦労しろというのか?」

「するべきです。他国に頼るよりかは遥かにましです。他国に頼り、成功した国などありません。必ずや介入が入り、この国はまったく別のものに変わります」

難しい……

だが、わかるのはアルクの考えとモンタニエの考えが正反対なことだ。

「アルク、水掛け論は結構。どう考えてもあなた達の議論に結論は出ないわ。いや、出てるわね……だからこの男は行動に移したのよ」

「ええ。そうです。このフィーレの魔女の言う通りです」

モンタニエが頷く。

「あら? 私がフィーレの人間だと?」

「それ以外に考えられるか?」

「ふふっ、どうかしら?」

「バケモノめ。よりにもよってこんな魔女を入れるとは……王家はこの国を亡ぼす気としか思えん」

失礼な。

「モンタニエ、お前の反逆の理由はわかった。長らく王家に仕えてくれたお前がこんなことをするのは残念としか思えん」

「私も残念ですよ。ですが、仕方がないことです。私にはあなた達と同じようにこの国を守る責務がある。そして、この国を支えてきたという自負もある。こんな魔女の乗っ取りを許すわけにはいかないのです」

「お前の忠誠と功績には感謝する。だが、罪は罪だ。大人しく投降しろ。投降するのならば、お前の妻子に罪は問わない」

お優しいことで。

でも、無駄だな。

「結構。我が一族の総意が殿下の暗殺なのです」

だってさ。

「アルク、無駄よ。この人、あちこちに返り血を浴びている。さっき、人がいなくてロクに歓迎もできないって言ってたでしょう?」

屋敷に誰もいないんだ。

生きている者は誰も……