軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第159話 緊急依頼

柳さんの指示を受けた前田さんは急いで戻っていった。

「柳さん、待っている間に説明を頼む」

ヨシノさんが意気消沈の柳さんに説明を求める。

「ああ…………一昨日、調査を終えた後に地下への階段のことを上官に報告したんだ」

「まあ、当然、そうだろうね」

「上官もそれを上に伝えたんだが、魔女は最初から地下のことを知っていたと判断した上は安全のために地下の調査を決めたらしい」

安全のため(笑)

「あわよくば横取りしようと思ったんだね」

「だと思う。安全のためは言い訳だろう」

だろうね。

何故、俺とヨシノさんがこの自衛隊の企みに気付いたかというと、色々と変なことはあったし、怪しい点はあった。

だが、それ以上に逆の立場なら同じことを考えるし、同じことをするからだ。

「地下へ行ったのは昨日?」

「いや、今朝らしい。昨日の壁の調査に予想以上に時間がかかったため、時間が押したんだ。そこで今朝、2階を先行して調査するように指示があった」

中々、灯りのスイッチが見つからなかったのかな?

「君は抜け駆けのことを知らなかったのかい?」

「ああ。私も前田もずっと壁の方の調査だったからな。それが終わった後は非番だった」

「それでさっき詳細を聞いたわけか…………行方不明者は何名?」

「4名だ。無理をすることはないはずなんだが…………」

金の延べ棒を見つけて油断したんじゃない?

とはいえ、それは仕方がないことでもある。

黄金にはそれほどまでに人を魅了する魔力があるのだ。

だから上とやらの暴走も理解できるし、もし、その自衛隊員4名が金の延べ棒を発見し、油断するのも理解できる。

だって、それは皆、同じなんだもん。

大金に目がくらみ、速攻でカエデちゃんにバレた初期ノアさん。

浮かれに浮かれまくって、変な黒スーツ達に捕まったナナポン。

独断専行し、エレノアさんに眠り薬を盛られたヨシノさん。

みーんな、金の魔力に正常な判断ができずに失敗している。

…………言っておくが、ユニークだからではない。

「4名か…………エレノア、どう思う?」

ヨシノさんが端っこに避けている俺に話を振ってくる。

「どう思うとは?」

「八腕スケルトンにやられたと思うか?」

「ないわね。自衛隊って強いでしょ。いくら腕が8本あったとしても柳さんと前田さんの強さから考えて、4人もいるのに負けるとは思えない」

八腕スケルトンと戦ったことはないが、話を聞く限り、柳さんと前田さんなら単独で勝てるだろう。

「となると、罠かそれ以上のモンスターがいるかだな…………」

ヨシノさんが考え込みだしたので俺はナナポンを見た。

すると、ナナポンが首を横に振る。

これは罠もモンスターも見えないってことだろう。

「そんなもんはどうとでもなるでしょ」

「まあ、罠は回避できるだろう。だが、強いモンスターがいるかもしれん」

そもそもここは王様の隠れ場所であると予想すると、罠があるとは考えにくい。

あっても足止め程度だろう。

4人もの自衛隊員が死ぬような殺傷能力の高い罠はないと思う。

「強い? ふっ……」

どんなんか知らんが、雑魚だろ。

「さすがは挑発のサラブレッドだな…………」

マズい。

リンさんに並んでしまう……

「Aランクのあなたの敵ではないっていう意味よ」

ヨシノさん、すごーい。

「嘘つけ。絶対にお前らと一緒にすんなっていう意味だっただろ」

「私を貶めるのはやめなさい。今回、あなたは何もしてないんだから働きなさいっていう意味よ」

「事前の交渉とか準備とか色々したぞ」

交渉?

あ、こいつ、絶対にちょろまかしてるだろ。

「あっそ。ほどほどにしなさいね」

「ちょろまかしてないからな」

何も言ってねーよ。

それ、ちょろまかしているヤツの反応だろ。

「もういいわよ。ミス・ユニークさんの好きにしなさい。ナナカさん、これから先は危ないから注意しなさい。絶対に私より前には出ないで」

ナナポンは透視や魔法こそあるが、それ以外はただの雑魚チビなので危険だ。

「わかりました!」

ナナポンが力強く頷いた。

ナナポンの良いところは自分の弱さを知っていることだ。

これがわからないヤツは勝手に動いてパーティーを崩壊させる。

そういうのはいらない。

だから…………

「柳さん、あなたと前田さんも前には出ないでね」

「何故だ?」

「そりゃ、あなた達が弱いからよ」

「リンが喜ぶなー」

黙れ、ヨゴレ!

揉みしだくぞ!

「私達は訓練を積んでいるし、弱くないぞ」

「その訓練を積んだ4人がやられているのよ? 普通にやれば同じことになるに決まってるじゃない。それにこちらとしてもあなた達に死なれたら困るのよ」

「どういう意味だ?」

「私のお宝を奪おうとしたあなた達が死んで、私達だけが帰ってきたらあなたのお仲間がどう思う? 冤罪は嫌よ」

絶対に俺が殺したと思われる。

「それは…………いや、そうだな。君は悪評が多いし」

悪いことはまったくしていないのに皆が俺を悪く見ている。

いじめだな。

「そういうことだからこれから先のモンスターは私達に任せなさい」

「すまん。頼む」

「別にいいわよ」

そもそも自衛隊がいなくても行くつもりだったからどっちでも同じである。

むしろ、経験値をもらえていいかもしれない。

スケルトンは今さら大した経験値にはならないだろうが、八腕スケルトンはレベルが上がりそうだ。

俺がレベルが上がったら何を作れるようになるかなーっと思っていると、前田さんがさっきの三浦さんを連れて戻ってきた。

「前田、上は何と?」

柳さんが戻ってきた前田さんに尋ねる。

「緊急依頼を出すそうです。ただし、あくまでもエレノア・オーシャン個人に出すそうです」

ん?

「どういうこと?」

イミフ。

ヨシノさんにも出せよ。

「エレノア、気にするな。体裁の話だ。本部長と繋がっているAランクの私に依頼を出すと、うるさいのがいるんだろう」

ヨシノさんが大人の事情を教えてくれる。

「私はどっちでもいいけど、いくらになるの?」

「300万程度になります。詳細は後日です」

安くね?

4人の命の値段がそれか?

いや、まあ、時すでに遅しなんだけど……

「エレノア、ちょっと来い」

ヨシノさんが俺を引っ張って、部屋の隅に連れていくと、肩を組んで内緒話を始めようとする。

なお、ちょっと当たっててラッキー。

「…………何よ?」

「緊急依頼は安くなるもんなんだよ」

「そうなの?」

「ああ、そういうものだ。ましてや、自衛隊はこの件を隠すつもりだから多額の金は出せないんだ」

隠蔽かい。

「皆、隠蔽が好きねー」

「大人はそういうもんだ」

まあ、わからんでもない。

大人とはミスを隠し、責任を誰かに押しつけるものだ。

そういうヤツが上に行く。

…………あの、クソ上司めー!

「でも、もうちょっとくれても良くない?」

せめて500万はよこせよ。

「まあまあ。ここは自衛隊の弱みを握るというか、恩を売っておこう。これで自衛隊は君に完全に手出しができなくなる」

保険を取れってことかな?

うーん、そっちのほうがいいか。

「…………良いでしょう。そもそも本命は別だしね。数百万円なんて端数よ」

「そうだ。これであれを手に入れて、売っぱらっても難癖をつけられることはないし、誰も文句を言えなくなる。出所を疑われても自衛隊が保証してくれるんだからな」

ふむふむ。

ヨシノさん、嬉しそうだな。

しかし、こいつ、本当に大きいわ。

あ、人間性ね。

「わかったわ。こういうことはあなたに任せた方がいいでしょう」

「任せとけ…………コホン! エレノアはこの緊急事態を見過ごせないと言っている。ぜひ、協力したいとな!」

ヨシノさんは俺から離れると、前田さん達に向かって言う。

「…………お願いします」

「…………頼む」

前田さんと柳さんは微妙な表情だ。

まあ、こっちの真意はわかっているのだろう。

前田さんに至ってはユニークスキルで聞こえているだろうし。

「はいはい。ところであなたは?」

俺は三浦さんを見る。

「俺はここで待機だ。捜索時間は2時間を取る。それを過ぎても帰ってこない場合は応援を送るからそのつもりで」

2時間ね。

まあ、地下が広かったら一度戻ればいいか。

「了解。じゃあ、行きましょうかね」

俺はカバンからカンテラを出すと、手に持ち、電源を入れた。

「まずはスイッチ探しからだな?」

ヨシノさんが確認してくる。

「そうね。私が先に降りるからナナカさんはその後に来て。ヨシノさんがその次。柳さんと前田さんには後ろを任せるからよろしく」

俺はそう言うと、暗い地下への階段を降り始めた。