軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第158話 トラブル

俺達は昼食を終えると、調査を再開することにし、建物に入った。

そして、1階の右側の通路に行き、地下への階段を目指している。

「…………すごい睨んでますよ」

ナナポンが後ろをチラッと見ると、小声で教えてくれる。

まあ、小声でも聞こえているんだろうけど。

「ちょっと言いすぎたわ。ごめんなさいね」

俺は後ろを振り向いて謝った。

「……………………いえ」

前田さんはまったく許す気配のなさそうな目で見てきた。

自分のヤバい性癖をばらされてめっちゃ怒ってんな……

まあ、そこはどうでもいいや。

問題は…………

俺は前を向く際にチラッと柳さんを見た。

こいつだ。

こいつ、戻ってきてから様子がおかしい。

表情こそは変わらないが、部下というか、自分の彼女の動揺を無視しているし、口数が明らかに減っている。

呼び出しで何かあったな……

俺が何があったのか悩んでいると、ナナポンが前方を指差す。

ナナポンが指差した方向にはスケルトンがいた。

「スケルトンね。よろしく」

「ああ…………」

心ここにあらずといった柳さんと顔を真っ赤にしている前田さんが俺達の前に出ると、スケルトンに向かっていく。

「あれは何かあったな……」

俺が2人のスケルトン狩りを見ていると、ヨシノさんが前に出て、俺の横に来た。

「あなたもそう思う?」

「ああ、柳さんの様子が明らかにおかしい」

「エレノアさんのせいということは?」

ナナポンが俺のせいにしてくる。

「前田さんのこと? あれとは関係ないでしょうね」

「おそらく何かトラブルがあったな」

トラブルねー。

「それでも調査をやめないのね」

「君もわかっているだろう。そのトラブルの現場がここなんだろ」

俺もそんな気がしていた。

「どういうことです? 特に何もないですけど…………」

ナナポンはいまいちわかってないようだ。

こいつはすべてが見えているからこそわからないのだろう。

「確証があるわけではないわ。それに私達の仕事は変わらない」

「そうだな。地下に行く。それだけだ」

俺達が話していると、自衛隊の2人がスケルトンを倒して、戻ってきた。

「終わったぞ。先に急ごう」

急ごう、ね。

先に2階を調査しようって言ったり、早めの昼食にしようと言っていた人がやけに焦っている。

そもそもこの2人、昼ごはんを食べたか?

「そうね。行きましょう」

俺はとりあえずは放っておくとして、通路を進むことにした。

道中、スケルトンが何体か出たが、もちろん、危なげなく柳さんと前田さんが倒していく。

だが、倒すスピードが徐々に上がっていっていた。

どう見ても焦っている。

「焦ってもどうしようもないのにね…………」

「どういう意味です?」

俺のつぶやきにナナポンが反応した。

「何でもない。ほら、着いたわよ」

俺達は奥の部屋の前までやってきた。

俺は扉を開けると、我先に部屋に入り、部屋の様子を見渡してみる。

部屋の中は一昨日来た時と何ら変わってないように見えた。

「ヨシノさん」

「ああ、わかってる」

俺がヨシノさんに声をかけると、ヨシノさんが地下への階段がある穴をじーっと見る。

「どうしたんだ?」

俺達のことを不審に思ったであろう柳さんが聞いてきた。

「それはこちらのセリフね。まあ、言いたくないのなら別にいいわ…………どう?」

俺は柳さんを軽く流し、穴を見ているヨシノさんに聞く。

「間違いないな。一昨日はこの板の破片が数センチこっちにあった」

ヨシノさんが穴の周囲に落ちている俺が蹴り砕いた板の残骸を指差した。

ヨシノさんのユニークスキルは完全記憶である。

見聞きしたものをいつでも取り出すことができる。

だからわずかな動きも見比べて、違いを見分けることができるのだ。

「ふふっ。誰か来たわね」

俺は笑いながら柳さんを見る。

「何のことだ?」

「あらあら……ヨシノさんが一昨日の時と違うって言ったのが聞こえなかった?」

「数センチって言われてもな…………見間違いだろう」

普通はそう思うだろうね。

そんなもん覚えているはずがないもん。

「柳さん、私はユニークスキルを持っている。誤魔化せんぞ」

ヨシノさんがユニークスキルを持っていることを自白した。

「…………それがどうした?」

まだ粘るか。

多分、上官命令だろうね。

「ヨシノさん、別にいいじゃない」

「いや、契約違反なんだが?」

「大目に見ましょう。どうせ結果は変わらない」

大人になろうぜ。

「どういう意味だ?」

柳さんが聞いてくる。

「ふふっ。私達がこの建物に入った時に明るかったから変だと思ったのよ。えーっと、建物の壁の調査をしたんだっけ? でも、それって後でやるんじゃなかった? 何で急にやったの?」

「変更があったんだろう」

「そうね。変更があった。私が地下への階段を見つけて、地下に良いものがあると思ったのよね。だから先んじて奪おうとした。いい考えだと思うわ」

昨日、丸1日空いたんだからその隙に捜索すればいい。

要は金の延べ棒を奪おうとしたわけだ。

「そんなつもりはない」

「いいの、いいの。別にいいのよ。私は一切気にしてない。だってね、地下には誰もいないんだもん」

朝からここに来て、結構な時間が経つが、ナナポンがまったく反応をしていない。

それはつまり…………

「誰もいない? そんなバカな!?」

おや?

「ふふっ……認めちゃった。でも、残念。本当よ。誰もいない」

「何故、わかる?」

「さあ? なんでかなー?」

俺はそう言いながらナナポンの髪を撫でる。

「くっ! やはり横川のユニークスキルか!」

まあ、わかるよね。

「ナナカさん、どう? 誰かいる?」

「えっと、誰もいませんけど…………」

「じゃあ、死んじゃったわね。煙になって消えちゃった」

いないということはそういうことだろう。

「バカな!」

「そ、そんな……!」

柳さんと前田さんが驚くが、それ以外にないだろう。

「別に信じないでもいいわよ。そもそも私達はここをあなた達のお仲間が通ったかどうかも知らないし。もう帰ってんじゃないの?」

俺達視点からすると、その可能性がある。

まあ、柳さんと前田さんの反応からすると、それはないんだろうね。

「前田、戻って応援を呼ぶぞ! 捜索する!」

「はい!」

「そういうことなので悪いが、調査は中止だ」

柳さんがアホなことを言ってきた。

「は? なんで?」

「行方不明になった隊員の捜索をしないといけない」

死んでるっちゅーに。

「あっそ。勝手にどうぞ。私達は進むわ」

「ダメだ!」

柳さんが食い気味に否定してきた。

「ダメ? それを決めるのはあなた達ではない。進むか引くかの決定権は私にある。そういう契約でしょ?」

「今は緊急事態だぞ!」

「緊急事態を起こしたのは契約を破ったあなた達。そんなもん知らないわよ…………ははーん、わかったわ。そうやって私達を足止めし、地下にある私のお宝を奪う気でしょ」

金の延べ棒は黄金の魔女のものだぞ!

「そんなことをするわけないだろ!」

「ごめんなさい。その言葉にまったく説得力がないことを理解してちょうだい。一度壊れた信頼は取り戻せないのよ」

今さらどの口が言うんだ?

「くっ!」

「まあまあ、落ち着きなさい」

ヨシノさんがニヤニヤしながら俺と柳さんの間に入ってきた。

「なんだ?」

「こういう緊急事態の時は緊急依頼を出してくれればいい。私達が行方不明の捜索をしようではないか」

だからもう死んでるっての。

「緊急依頼は私の判断では出せない」

「だったら上に戻って出してもらうように上官に言いなさい。言っておくが、これは譲歩だ。本来なら契約違反を訴えてもいいし、君達を無視して先に進んでもいい。だが、どうせやることは一緒なのだから一緒に行こうじゃないか。それがいいと思うね」

うーん、譲歩?

俺には金を寄こせって聞こえるんだけど?

「何? 要は緊急依頼という名の口止め料と賠償金を請求してるの?」

「私はAランク冒険者としてこういう緊急事態にも対応する義務があるんだ。もちろん、依頼料はもらうが…………」

金じゃん。

「お好きにどうぞ。私はどっちでもいいわ」

俺はこの状況でも金を巻き上げようとするミス・ユニークに呆れてしまい、ナナポンを連れて端っこにいく。

「柳さん、正直、絶望的だが、捜索はしないといけないだろう。多分、君はさっきそれを聞いたんだろ?」

「ああ、時間になっても帰還しないという報告を聞いた」

「私達に2階から捜索するように指示されたね?」

「そうだ。今朝、上官からまずは2階を優先するように言われた」

その隙に帰還する予定だったわね。

でも、帰ってこない。

「我々が独自に進んでもいいし、君達は君達で捜索をしてもいいが、一緒に進んだ方が確実だろう」

「それはそうだが…………」

「私はこのことを本部長に報告する気はない。言ってる意味、わかるね?」

ギルドには言わないでおくし、契約違反もなかったことにするから金を寄こせ。

「…………前田、帰還して指示を仰いでこい」

「…………わかりました」

どうやら自衛隊の2人は悪いヨシノさんに折れたようだ。

さすがはヨシノさんだ。

頼もしい。

しかも、何がすごいって約束したのはヨシノさんだけ。

俺とナナポンは何も約束をしていないので普通にサツキさんに報告することができる。

よ! ミス・ユニーク!

伊達に巨乳じゃないな!