軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第62話 ドニーとの模擬戦

「ドニーさんを交えての模擬戦を行うのですか」

「はい。ドニーさんが戦っているところを見たいなと思いまして。ちなみにですが、シーラさんは参加されますか? 一応、自由参加なのですが……」

「もちろん参加します。元A級冒険者がどれほど強いのか試してみたいですし」

農具の片付けをしながら、シーラさんに参加意思を聞いたんだけど、参加してくれるみたいで良かった。

昨日はシーラさんが参加してくれる前提で話が進み、勝手に盛り上がっていたから、これで参加しませんと言われたら中止まであり得た。

「シーラさんが参加希望で良かったです。シーラさん対ドニーさんを楽しみにしていますね」

「佐藤さんは参加されないのですか? 剣は未だに振っているのですよね?」

「剣は振っていますが……参加はしないと思います。今はまだ、何もできずに負けるのが目に見えていますので」

「そうですか。それは残念です」

私も早く参加できるぐらいまで強くなりたくはあるのだが、いかんせん強くなる気配がない。

38歳という年齢が大きいのか、頑張っても体がついてこないんだよなぁ。

そうこう話をしつつ農具の片付けを終え、私たちはベルベットさんとドニーさんが待っている平原に向かった。

2人は石灰で線を引き、簡易的な試合場を作っている様子。

「お待たせいたしました。……そちらが試合場ですか?」

「そうよ。この前は特に何もなかったけど、今回はこの円の中だけで行おうと思って作ったの」

「それじゃ日が暮れる前に早速やろう。まずは誰から俺と戦う?」

「誰でもいいなら、まずは私が行こうかしら。シーラは少し準備が必要でしょ?」

「そうですね。少しお時間を頂けるとありがたいです」

「ということは、いきなりお嬢様とですか。……昨日もお伝えいたしましたが、手加減は致しませんよ」

「当たり前よ。手加減されて勝っても嬉しくないから」

ということで、1戦目はドニーさん対ベルベットさんに決まった。

ベルベットさんは毎日剣を振っていたと言っていたけど、この試合は流石にドニーさんに分があると思う。

剣を構えて横並びになると、体格差のせいで大人と子供のようにしか見えない。

ただでさえ筋力差がある上に円内で戦わないといけないとなると、2メートル近いドニーさんは俄然有利なはず。

「それじゃ佐藤。試合開始の合図よろしくね」

「分かりました。いきますよ――試合開始!」

私の合図と共に、まずはベルベットさんが動き出したんだけど、間合いの広さが段違いなせいで先に剣を振ったのはドニーさんの方だった。

大きな体から放たれたとは思えない鋭く速い一撃に対し、ベルベットさんも初撃はなんとか対応していたのだが――。

遠距離から繰り出される連撃に対応し切れず、ジリジリと後退していく内にあっという間に円の外へと押し出されてしまった。

攻撃をまともに食らってはいないからこそ、このベルベットさんの敗北は衝撃的だった。

「――ちょっと無理! ドニーってこんなに強かったっけ?」

「王城内では流石に手加減していた上に、私は短剣を使っておりましたので」

「剣が当たる気配すらなかったんだけど。これ、シーラも無理でしょ」

体格的にはシーラさんもベルベットさんと変わらないため、今の試合を見てしまうと私も勝ち目がないように思えてしまう。

……が、シーラさんは好戦的な笑みを溢しており、やる気満々といった感じ。

「ドニーさんは相当お強いですね。どれだけ私の力が通用するのか楽しみです」

「シーラさん、頑張ってください。応援しています」

私は試合場に向かうシーラさんの背中にそう声をかけた。

そのまま剣を構えて向き合ったのだが、やはり体格差のせいで勝つビジョンが見えない。

「俺はいつでもいいぞ。シーラ次第で始めてくれ」

「私もいつでも大丈夫です。ということですので……佐藤さん、合図の方をお願い致します」

「了解致しました。それでは――試合開始!」

先ほどと同じように私は合図を出したのだが、今回は両者共に動かず様子見から入った。

てっきりシーラさんから仕掛けるかと思ったけど、慎重に試合を進めるようだ。

摺り足で少しずつ距離を詰めていくシーラさんに対し、構えたまま一歩も動かないドニーさん。

そんなドニーさんの圧が凄まじく、私が戦っている訳ではないのに汗が噴き出てくる。

さっきのベルベットさんがやられた時のことが脳裏にこびりついており、どう攻めても簡単に返される。

私がそんな負のイメージしか抱けていない中、シーラさんは飄々とした様子で簡単に間合いに入ってみせた。