軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第61話 付き人兼護衛

ルーアさんが訪ねてきた翌日。

また朝の早い時間に扉が叩かれ、仕事を見つけられなかったルーアさんが早くも戻ってきたのかと思ったけど……扉を開けると、そこに立っていたのはベルべットさんだった。

「……何で無言のまま、そんな変な顔しているのよ。もしかして来ちゃ駄目だったとか?」

「い、いえいえ。そんなことありませんよ。畑仕事を手伝いに来てくれたんですか?」

「ええ。最近は色々と精力的に動いていたから、全く時間が取れていなかったんだけど、ようやく落ち着いたから休暇がてら手伝いに来たの。今回も6日間手伝う予定だからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします。6日間も手伝ってくれるのはありがたいですね」

「その代わり、報酬として漫画を2冊頼むわね」

「もちろんです。働き次第では、前回同様に追加報酬をお渡ししますので頑張ってくだしあ」

「ふふ、それは気合いが入るわ。ガンガン手伝うから、佐藤はしっかり指示してね」

追加報酬の言葉で、前回に続き瞳を燃やしたベルベットさん。

ベルベットさんへの報酬の少女漫画だけでなく、海賊漫画の方もこのタイミングで10巻まで増やしていいかもしれない。

「それで前回来た時と何か変わったことはあるの? 畑を大きくしたとか、新しい漫画が増えたとか」

「クリスマスパーティーの時から漫画も増えていませんが、畑は大きくなりましたね。それから従魔と育てている作物の種類も増えました」

「へー、畑も大きくしたのね。新しい従魔と会うのも楽しみだし、増えた作物を育てるのも楽しみ」

「まずは新しい従魔から紹介します」

従魔を紹介するため、私は荷物を置いたベルベットさんと共に家の外に出ると……そこには大柄の男性が立っていた。

この鋭い目つきには見覚えがあり、確かベルベットさんと一緒に馬車でここまで来る人だ。

座っていたから気づかなかったけど、2メートルくらいある非常に大きな人。

「ドニー。まだ戻っていなかったの?」

「はい。お嬢様に言っておりませんでしたが、今日だけ見学させて頂こうと思っております。――構わないよな?」

顔をグイッと近づけ、そう尋ねてきたドニーと呼ばれた護衛の方。

別に構わないけど、完全に敵対視されているから非常にやりづらそうなのが少し嫌ではある。

「やだ。ドニーがいるとやりづらいから帰って」

「私は構いませんよ。何でしたら、ドニーさんも一緒にやりますか?」

「許可を頂けましたので……少しだけ手伝いをさせてもらう」

「もー、最悪。ドニーは本当に過保護過ぎるのよ」

ベルベットさんは本当に嫌そうに文句を言っているが、ドニーさんは意に介さず畑の方へと歩いて行った。

完全武装といった感じだけど、あの服装で手伝うつもりなのだろうか。

汚れるだろうし動きづらそうだけど……まぁ大柄のドニーさんが着れる服なんて持ち合わせていないし、あの服装で頑張ってもらうしかないのだが。

「……あれが噂に聞いていた従魔か?」

「そうです。丁度ベルベットさんに紹介しようと思っていたので、ついでにドニーさんにも紹介しますね。あそこにいるスライムが、ライムとライムが連れてきたスライムたちです。ちなみにですが、ライムは一番大きくて黒いスライムです」

「へー! 新しいスライムを増やしたのね」

「増やしたというよりかは、ライムが勝手に連れてきたんです。野生のスライムですが、襲うことはないので安心してください」

「近づいても襲ってこないな。それどころか怯えているようだ」

「ドニーさんが睨むからです」

「別に睨んではないんだけどな」

スライムたちはぷるぷると震えており、そんなスライムたちを守るようにライムが前に出て庇うように立っている。

ドニーさんは睨んでいる意識がないのだろうが、体が大きい上に顔が怖いから睨んでいるようにしか見えない。

「ドニーはデフォルトで睨んだような顔なのよ。目が極端に悪いのもあって、何かを見る時の顔が酷く怖いからね」

「私の顔ってそんなに怖かったのですか……? 他の奴に何を言われようと何とも思わないが、お嬢様に言われると傷つきますね」

やはり自覚がなかったようで、ベルベットさんの言葉を受けて少し落ち込んだ様子を見せた。

それにしてもドニーさんは、ベルベットさん以外への当たりが強い。

まだ警戒されているのかもしれないが、口調が雑になる瞬間はドキッとする。

「ドニーさんは目が悪いんですね。この世界には眼鏡はないんですか?」

「眼鏡はあるわよ。ただ、ドニーはつけたがらないの」

「無駄に重い上に、眼鏡をかけてもちゃんと見えるって訳ではないからな。ただ、お嬢様がつけろと命令されたら、嫌々ですがお付けいたしますよ」

「別にどっちでもいいわ。ドニーの顔が怖くて嫌われても、私には何も関係ないから」

「がーん……」

ドニーさんは冷たくあしらわれて、分かりやすく落ち込んだ。

それにしても眼鏡自体は存在するけど、ちゃんと見えるようになるわけではない――か。

もしかしたら、個人に合わせた眼鏡というのはないのかもしれないな。

ドニーさんは極端に目が悪いとのことだし、度の高い眼鏡ではないとちゃんと見えないけど、度の高い眼鏡はこの世界にはないといった感じだろうか。

「ドニーさんの視界はどんな感じで見えているんですか? 目が悪いといっても様々だと思うのですが」

「常にぼやーっとしている感じだ」

「遠くのもの方が見えやすかったり、近くのもの方が見えやすかったりとかはありませんか?」

「ない」

なるほど。

ということは、ドニーさんは乱視のようだ。

畑仕事を手伝ってくれるとのことだし、ちゃんと仕事ができた場合は乱視用のコンタクトレンズをプレゼントしてあげてもいいかもしれない。

本当は眼科にいって調べるのが良いんだけど、この世界にはきっと眼科はないだろうから、手当たり次第に合うコンタクトレンズを試すことになりそうだけど。

「なんでそんなことを聞いたの?」

「ドニーさんへの報酬が思いついたので聞いてみました。ちゃんと成果を上げてくれましたら、良い物をプレゼントいたします」

「別にいらないけどな」

「ほらっ! ドニーはこう言っているし、ドニーの分の報酬も本でくれないかしら!?」

「駄目です。ドニーさんにはドニーさんへの報酬をお渡ししますので」

「ちぇっ、ケチ!」

「ケチではありません。次の従魔を紹介しますのでついてきてください」

唇をとんがらせているベルべットさんを連れ、クロウを紹介することにした。

今も空を飛んで、害鳥や害獣が近づかないように見張ってくれているのだが、俺が指笛を鳴らすと下まで降りてきてくれる。

「紹介します。こちらが新しく従魔にしたクロウです」

「うっわ、ビックリした! 随分と大きな魔物ね」

「ムーンレイヴンか。よく危険な魔物を従魔にできるな」

「スキルのお陰で、安全に従魔にできるんです。それにしても、ドニーさんは魔物に詳しいんですね」

「昔は冒険者だったのよ。それもA級冒険者。でも、目が悪いせいで続けられなくなって引退。それで燻っていたドニーをお父様が見つけ、私の付き人兼護衛としてつけたって訳」

「だから、王様にもお嬢様にも私は頭が上がらないんです」

へー、ドニーさんにはそういう経歴があったのか。

ベルベットさんにだけ腰が低い理由も頷ける。

それにしても……目が悪いせいで冒険者も引退していたのか。

ますますコンタクトレンズをプレゼントしてあげたくなった。

「強いのでしたら、シーラさんとの模擬戦が見てみたいですね。私達の中ではシーラさんが一番強いので」

「あー、面白そうね。私もドニーとは何度か手合わせしているけど、戦った感じ的にはいい勝負すると思うわよ」

「そんな強い人がここで働いているのか。……もしかして従者か?」

「そうです。戦闘職希望だったみたいで、非常に腕が立つんです。それに私の従魔も戦えますので、ドニーさんがいる内に模擬戦を行っても面白そうですね」

「魔物とも戦えるのか。久しぶりに戦ってみたいな」

「私も密かに剣を振っていたから参加するわ。ドニーにもシーラにも一泡吹かせてあげるから」

二人とも目が燃えているため、明日辺りに久しぶりに模擬戦を行ってもいいかもしれない。

どうせなら、このタイミングで蓮さん達も来てくれれば最高なのだが、流石にそこまで都合よくはいかないか。

とにかく元A級冒険者の強さも気になるし、ダンジョンに潜っていたシーラさんやライムが強くなっているのかも気になる。

かなり唐突に決まった話だけど、模擬戦を見るのが非常に楽しみだ。