軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第501話 見開き

その後、アポを取った【超越する愛】とも会い、契約更新を済ませた。

レイチェルさん同様、報酬の増額を素直に喜んでくれ、感謝されながら契約の更新を行うことができたのは良かったな。

二巻が発売されることも喜んでくれていたため、早いところお届けできるようにしたい。

ということで、このまま王城へ赴き、ベルベットさんに二巻の進捗を聞きに向かう。

兵士さんに話を通してもらい、私はすぐにベルベットさんの部屋へと通してもらうことができた。

ドニーさんも中庭で近衛兵の指導をしているとのことだったため、挨拶をしたかったところだけど……今はベルベットさんが最優先。

「ベルベットさん、いますか? 佐藤です」

「入っていいわよ」

ノックをしてから声をかけると、すぐに返事がきたため、入らせてもらう。

部屋の中はカーテンが閉じられていることもあり、昼間なのにかなり薄暗い。

机の明かりのみで、ベルベットさんはお嬢様らしくない服装にヘアバンドを身に着け、部屋に入った私に目も向けずに描き続けている。

漫画を描いていることは聞かずとも分かったため、タイミングがいいところまで描き終えるまで黙って待つことにした。

「…………ふぅー。待たせて悪かったわね。ちょうど気合いを入れていたところを描いてたの」

「お疲れ様です。二巻を描いていたんですか?」

「ええ。ちょうどクライマックスのシーン。……見る?」

「ぜひ見せてください!」

私はベルベットさんから原稿を受け取り、早速見せてもらう。

描かれていたのは、王女様が大臣の悪行を見破るシーン。

膝をついている大臣を見下ろすように、ズビシッという感じで指さしている迫力のあるイラスト。

王女様が城内の困りごとを解決していくという内容だけに、戦闘シーンはほとんどない作品だけど、ちゃんと胸がスカッとする場面を作り、そこを盛り上がりどころだと分かって、気合いを込めて描いているのは凄いな。

「この見開きだけで凄さが分かります! 二巻は深めの話にしたんですか?」

「やっぱり漫画を読んでるだけあって、内容まで分かっちゃうんだ。二巻は従者の噂話から大臣の悪行に気づく内容にしたの。個人的には、ほのぼのくだらない困りごとを解決している方が好きなんだけどね」

「売るために盛り上がる内容にしたってことですかね? 私はずっとくだらない困りごとを解決する内容でもいいと思ってはいたんですが、この見開きを見てしまうと考えが変わってしまいますね」

「ローゼが考えてくれたからね。くだらない噂話から派生したってだけで、本質は変えていないから、私も納得して描くことができたの。お陰で気合いが入っちゃって、全然眠れてないんだけどさ」

そう言ったベルベットさんをよく見てみると、お化粧で隠しきれていない酷いクマができている。

寝ずに描いてくれていたのだとしたら、申し訳なさも感じてしまうな。

「大変な思いをさせてしまってすみません。ペースを落としても大丈夫と伝えるべきでしたね」

「佐藤が謝ることじゃないわ。私が勝手に描いているだけだし、大変だけどやりがいしか感じてないから」

酷いクマだけど、その目はメラメラと燃えているように見えた。

ベルベットさん自身、漫画を描くことを楽しんでくれているようなのは非常に助かる。

「そう思ってもらえてよかったです。商業化は私が提案したことだったので、プレッシャーになっていたら申し訳ないと思っていたので……」

「プレッシャーは感じているわよ。それ以上に楽しいってだけ。ありがたいことに反響ももらえているからね」

「外を歩いていて気づいたんですが、ベルベットさんの漫画を持っている人をちらほらと見かけました。売れ行きも未だに右肩上がりという話でしたので、本当に大好評ですよね」

「本当にありがたいことにね。ただ、今は漫画というものの珍しさと読みやすさで売れているだけだと思う。私というより、異世界で漫画を発明してくれた方のお陰」

「そんなことないと思いますけどね。『今日も王女様は謎をほどきたい』はちゃんと面白いですし」

タイトルのセンスも抜群。

メジャーとされているバトル漫画と比べたらインパクトに欠けるとは思うけど、私は日本でもちゃんと売れるクオリティだと思う。

「そう言ってくれるのはありがたいけど、まだまだクオリティを上げていくから。とりあえず二巻を楽しみにしておいてね。もうちょっとで校了できるからさ」

「はい、通しで読むのを楽しみにしています。あっ、それから……これからクリスさんのところに行くんですが、ベルベットさんから頼みたいことはありますか?」

「何もないわよ。クオリティも申し分ないし、お礼だけ伝えておいてほしいぐらいかな?」

「分かりました。二巻の交渉をする際にお礼も伝えておきますね」

「ええ、よろしくお願いするわ」

ベルベットさんは笑顔でそう言うと、すぐに机に向き直り、漫画を描き始めてしまった。

個人的にはもう少し色々とお話がしたかったけど、これ以上は邪魔になるし、少し早いけど帰らせてもらおう。

二巻の完成もあと少しだと聞けたし、モチベーションの高さも感じられた。

漫画の方はすこぶる順調といっても過言ではないね。