軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第416話 魔物の素材

兎にも角にも、これで生地を見させてもらえることになった。

今回はゴさんが対価を支払ってくれるとのことだし、これは本格的に農業の技術と知識を授けるべきかもしれない。

「いやあ、バタバタして悪いな! ってことだから、ゆっくり見ていってくれ!」

「こちらこそ、勝手に見て回ってすみませんでした。村の中を探し回ってくれたんですよね?」

「そんな大層なもんじゃねぇよ! そもそも狭い村だし、ヤト様はいつものことだからな!」

「お嬢様がいつもすみません」

「いつもありがとうなのじゃ!」

ゴさんの一言にアシュロスさんが恥ずかしそうにする中、ヤトさんは堂々と片手を挙げてお礼を言った。

確かに、ヤトさんに慣れていたら普通のことなのか。

「気にしなくていいっての! こっちの方が世話になってるしな! とにかく、生地を見てってくれ! この村にはこれしかねえからよ!」

早速、ゴさんオススメの生地を見させていただくことにした。

丈夫な麻袋も良さそうではあるけど、やはり目を引くのは絹の生地。

この世界で見た布の中で、飛び抜けて綺麗な布だと思う。

ひとまず触らせてもらうことにしたんだけど……触り心地も抜群。

吸い付くような感じであり、とんでもなく上質な絹が使われていると素人でも分かる。

村のどこかで蚕でも飼っていたりするのだろうか?

「すごい上質な布ですね。蚕を飼育しているんですか?」

「飼育なんかしちゃいねぇよ! この村の近くにあるティーブレイクって湖の近くに、フィーロモスっていう馬鹿デカい蛾の魔物が出んだわ! そいつから、その布の素材になる糸が取れんのよ!」

「ということは、生地を作るためにフィーロモスを討伐しているんですね」

「そういうこと! 湖で食材を取りつつ、ついでにフィーロモスを狩ってる感じだ!」

魔物の糸ということなら、この初めて触る質感にも納得。

話を聞いて、ますます欲しくなってしまったし、この布は必ず持ち帰りたい。

「なんじゃ? 佐藤はその布が気に入ったのかのう?」

「はい。触れた瞬間に欲しいと思ってしまいました」

「なら、友好の証として、今回はフィーロモスの生地をプレゼントするぜ! 色は白でいいのか?」

「いいんですか? ゴさん、ありがとうございます。色は白が嬉しいです」

「いいってことよ! 喜んでもらえて俺も嬉しいぜ!」

それから、さらに2種類の生地をプレゼントしてもらい、ローゼさんとヤトさんも1種類ずつもらっていた。

アシュロスさんはというと、頑丈な麻の布をもらっており、結果的に全員が生地をもらう形に。

色々と申し訳ない気持ちはありつつも、手放す気にはなれないため、ありがたく頂くつもりである。

「ゴさん、本当にありがとうございました。生地は大事に使わせていただきます」

「おう! そうしてくれるとありがてえ! んで、ここからはどうすんだ? とんぼ返りってことはないだろ?」

「一泊はさせてもらうつもりじゃ! 夜の飛行は危ないからのう!」

「そういうもんなのか! 空なら関係なさそうに見えるけどな!」

「高度を上げれば問題ないんですけどね。定期的に休憩を挟まないといけませんし、高度を上げて飛び続けるのは現実的ではないのです」

「空を飛ぶのも色々と大変なんだな! まぁとりあえず泊まっていってくれ! さっきの広間では宴を行う予定だし、今日は飯もたくさんあるぜ!」

ゴさんはとことん優しい。

それだけに宴は楽しみではあるものの、食料不足と聞いているため、少しだけ心配が勝ってしまう。

「宴は非常に楽しみなんですが、食料問題は大丈夫なんでしょうか? アシュロスさんから、食料の件でリザードマンと争っていると聞いていまして……」

「いやぁ……客人にまで心配されちまうのは、我ながら情けねぇな! とりあえず今年は今のところ豊漁だから大丈夫だ! 春になったら大きな争いがあると思っていたが、豊漁のおかげでまだ争いになっていないからな!」

「そうなんじゃな! それなら良かったのじゃ!」

「ということで、佐藤さんも遠慮なく食べていってくれ!」

「分かりました。そういうことならば、今日は遠慮なく頂かせてもらいます。色々とありがとうございます」

ゴさんにお礼を伝えてから、私たちは宴に参加させてもらうことにした。

言っていた通り、広場では既に宴が始まっており、大量の肉や魚が焼かれている。

「うはー! いい匂いじゃな!」

「……何も食べてないから、お腹空いた」

「私もです。匂いは本当にいいですね」

焼けた肉と魚の匂いが食欲を唆る。

とはいえ、この世界の食材であることには違いないので、ハードルを上げすぎたら後悔するから気をつけなければいけない。

「ヤト様たちを連れてきたぞー! お前ら、酒と肉と魚を持ってこーい!」

「「「うおおおおおお!!」」」

ゴさんの掛け声に大声で返事をし、巨人族の方々は酒と魚と肉を走って持ってきてくれた。

至れり尽くせりの中、酒を持ってきてくれたのは、先ほど戦っていたラーと呼ばれていた方。

肩を負傷しているようで、痛々しい姿ながらも酒樽を担いできてくれており、申し訳ない気持ちになる。

「肩、大丈夫ですか? 私が運びますよ」

「これぐらい大丈夫ですよ。不甲斐ない姿を見せて、申し訳ありません」

「いや、でも、さすがに手伝いーーんぐぐ」

近くに置いてくれた酒樽を、私はさらにこちら側へ運ぼうとしたんだけど……全く動かない。

樽から根が生えているのかと思うくらいの不動っぷりに、私の汗だけが吹き出てくる。

「す、すみません。動きません」

「ふふふ、面白い客人ですね」

楽しそうに笑ったラーさんは、私が微動だにできなかった酒樽を、再び軽く持ち上げて見せた。

これを片腕でやっているんだから恐ろしいパワー。

出しゃばって何もできなかったことに対し、私は赤面しながら席へと戻ったのだった。