軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第283話 役割分担

翌日。

ダークエルフたちがどのように働くのかを確認するため、俺は宿舎へとやってきた。

すでに宿舎の1階にはダークエルフたちが集まっており、先頭にはリーダーに任命されていたルチーアさんがいる。

改めて見ると、やはり全員が美形で、なかなかにすごい光景だなぁ。

「おはようございます。今日から早速働いてもらうことになりますが、大丈夫でしょうか?」

「もちろん大丈夫だ。我々は何でもやるから、指示をしてくれ」

「そんなに気張らなくても大丈夫ですよ。ダークエルフの皆さんには、裏山の果樹園で働いてもらう組と、これから建てる宿の従業員として働いてもらう組の、二組に分かれてもらいたいと思っています。どちらがいいかをお聞きしたいので、果樹園で働きたい人は左、宿で働きたい人は右に分かれてもらえますか?」

私がそう尋ねると、大多数の方が左に移動した。

右に行ったのは5人だけで、そのうち2人は危険人物として紹介されていた双子のソアラさんとルナさんだった。

思っていた以上に宿の希望者が少ないうえ、その中に危険人物が2人も含まれているのは、少し不安。

「むむ。宿で働く方が少ないな。なら、私は宿への希望に変更させてもらう」

人の偏りを見て、そう言ってくれたのはルチーアさんだった。

こちらとしてはありがたいが、せっかくならば希望の場所で働いてほしい。

「げげっ! なら、私は果樹園で働こうかな!」

「私も果樹園の方がいいです」

「駄目だ。お前たちは私が果樹園の方に行ったのを見て、宿を選んだのだろう。どちらで働くことになっても、私と同じ場所だ」

「うわーん! ルチーアとは嫌だ!」

「私も嫌です」

左に行こうとしたソアラさんとルナさんの首根っこを捕まえると、ルチーアさんはそのまま右側に留まった。

「ルチーアさん、もし果樹園で働きたいのであれば、果樹園で働いていただいても大丈夫ですよ。気を遣う必要はありませんので」

「いや、この2人の面倒も見なくてはならないからな。私は宿で働かせてもらう」

「本当に大丈夫ですか? 宿では接客業をしてもらうことになりますが……」

「せ、接客業……。だ、ダークエルフに二言はない!」

明らかに動揺していたが、それでももう考えを変えるつもりはない様子。

なんとなくだけど、ルチーアさんは接客が苦手そうな印象を受ける。

やってみて駄目だと感じたら、すぐに果樹園の方へ移ってもらえばいいし、今は何を言っても動かないと思う。

ということで、ダークエルフたちの担当が決まった。

「分かりました。それでは二手に分かれて移動しましょう。果樹園へは私の従魔が案内しますので、困ったことがあれば尋ねてください。私も後から向かいます」

「果樹園の方はエレオノーラが仕切ってくれ。何かあれば、私か佐藤さんに報告するように」

「分かりましたわ」

そう返事をした立髪ロールのダークエルフの女性は、果樹園組を率いて外へと出ていった。

案内役はマッシュにお願いしており、護衛としてライムもつけているので、問題ないはずだ。

宿組には、まず私がいろいろと教えていくことになるが、まだ宿自体が完成していない。

そのため、基本的には接客のマニュアルを熟読してもらうことになる。

「宿組の皆さんには、私がいろいろと教えていきます。まだ宿は建っていませんので、しばらくは接客のイロハを学んでもらう形になります」

「接客のイロハ? 普通に接するだけでは駄目なのか?」

「はい。“お客様は神様”とまでは言いませんが、丁寧に接してください。ただし、態度の悪いお客さんは例外です」

カスタマーハラスメントをするような相手には、適度にあしらって構わない。

ただ、普通に接してくれるお客様には、丁寧な応対をお願いしたい。

「こちらが接客のマニュアルです。オープンまでに目を通しておいてください。しばらくの間は、このマニュアルを読んで、軽く仕事を覚えるのが主な業務となります」

「えっ、それだけでいいの? やったー! こっちが当たりじゃん!」

「うん。簡単そうで良かった」

仕事内容を聞いて、ソアラさんとルナさんはハイタッチをした。

オープンまでは確かに楽だが、オープン後は間違いなく大変になる。

私が客のフリをして、接客練習をしてもらうのも必要かもしれない。

「佐藤さん、本当にこれだけでいいのか? 力仕事でも何でもやらせてもらうぞ」

「オープンしてからが本番ですので、今は気張らなくて大丈夫ですよ。空き時間は自由にしていただいて構いませんし、もし物足りないと感じたら、畑の手伝いをしてください。別途報酬も用意しますので」

「……至れり尽くせりだな。覚悟して来たんだが、本当にこんなに緩い場所なのか」

「“働きすぎない”がモットーですので。ルチーアさんも、楽しむことを第一にしてください」

「うっはー! ここ最高かもー! いっぱい遊んでいいってことだよね?」

「私もいっぱい遊びたい」

「もちろんです。ただ、その分、仕事はしっかりしてもらいますけどね」

渋い表情のルチーアさんに対し、飛び跳ねて喜ぶソアラさんとルナさん。

遊ぶ時間があると分かったからか、その後に行った接客業の指導にも、2人は真面目に耳を傾けてくれた。

ソアラさんもルナさんも、メリハリさえあればきちんと働いてくれると分かったし、おそらくこの環境に合った性格の持ち主だ。

一方で、終始困惑していたルチーアさんの方が、意外にも気を配ってあげる必要がありそうだな。