軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第282話 ダークエルフ

アス君が滞在していた3日間は遊び倒し、その後の4日間は果樹園の準備に力を入れた。

そして今日は、ダークエルフの移住希望者がやってくる日であり、朝から到着を待っている。

どうやって来るのか分からなかったが、王都方面から近づいてくる集団が見えてきた。

先頭を歩いているのがローゼさんとイザベラさんということは、後ろにいるのが移住希望のダークエルフたちなのだろう。

「ローゼさん、イザベラさん、おはようございます。歩いて来るとは思っていませんでした。後ろの方々が移住希望の方ですか?」

「……ベルベットが色々と手を回してくれたんです。歩いたのは王都からここまでで、基本は馬車移動でした」

漫画という共通の秘密と話題があるからこそ、ベルベットさんが協力してくれたのかもしれない。

漫画を描くという行為が、王国とエルフ国の国交に繋がっていると思うと、少しだけ面白い。

「それで、後ろにいるのが移住希望者よ。ダークエルフの取りまとめは、ルチーアにお願いしたから」

「ダークエルフを取りまとめるルチーアだ。これからよろしくお願いする」

「ルチーアさん、よろしくお願いします」

イザベラさんに紹介され、1歩前に出たのはポニーテールのキリッとした女性。

長身で目つきが鋭く、胸もないことから一瞬イケメンな男性かと思ったが、声で女性だと分かった。

他のダークエルフをざっと見ても、女性が8割ほど。

私が男性だと思っている人も、ルチーアさんのように実は女性の可能性があることを考えると……男性の割合は極端に低い。

「……色々と指示を出してあげてほしい。働かない者や、言うことを聞かない者がいたら、すぐに私に言ってください。連れ戻しに来ます」

「前々から伝えていたけど、これから佐藤の言うことは、ローゼ様の言うことだと思って聞くのよ。もし何か問題を起こしたら、私とローゼ様が許さないから」

イザベラさんが注意喚起をすると、ダークエルフたちの背筋がスッと伸びた。

長寿種ということもあり、のんびりした感じを勝手にイメージしていたが、軍隊のようなキビキビした雰囲気に少し驚く。

以前、少数精鋭だと言っていたし、上下関係も厳しいのかもしれない。

「まぁ、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。スローライフがここの売りですから」

「佐藤、それは甘いわよ。サボれると思ったらとことんサボるからね。特にソアラとルナ。この2人には目を光らせておいた方がいいわ」

イザベラさんが名前を出した瞬間、そっぽを向いたのは2人のダークエルフ。

乱雑なショートヘアと、ボブというよりおかっぱ頭の2人で、雰囲気は違うが顔はそっくり。

背丈もローゼさんほどと低く、もしかしたら双子のダークエルフかもしれない。

よく見ると目もかなり特徴的で、蒼と金のオッドアイ。

さらに目の色も対になっているようで、ショートヘアの子は右目が蒼で左目が金。

おかっぱ頭の子は右目が金で左目が蒼。

ファンタジー要素たっぷりで、何だかワクワクしてしまう。

「サボられるのは困るので、忠告通り注視しておきます。色々とお話をしたり、親睦を深めたいところですが……長時間の移動でお疲れでしょうから、今日は休んでください。宿舎に案内します」

私はローゼさんとイザベラさん以外のダークエルフたちを連れて、宿舎へと案内した。

宿舎といっても今回のために用意したものではなく、模擬戦大会の本戦出場者のために用意した宿舎を、そのままダークエルフたちに使ってもらうことにした。

各部屋はしっかりと作られており、部屋数も十分にある。

仮の宿としては申し分ない環境だと思う。

龍人族のように集落を作りたいということであれば、平原や裏山の果樹園近くに建ててもらって構わないし、ここからはダークエルフたちに任せる予定だ。

ダークエルフたちに宿舎の案内をしたあとは、別荘で待ってもらっているローゼさんとイザベラさんのもとへ戻った。

「宿舎まで案内してきました。部屋はまだ空いていますので、お二人も泊まっていきますか?」

「……ううん。私たちは用事があって、すぐに帰らないといけないんです」

「そうなんですか。せっかく足を運んでもらったのに、すぐに帰ってしまうのは寂しいですね」

「また近いうちに遊びに来るから。それよりも、迷惑をかけると思うけどよろしく頼むわね」

「任せてください。ただ、何かあったときは相談させてください」

「……もちろん。細かいことでも言ってください」

「ありがとうございます。それじゃ……帰る前に朝食だけでも食べていってください」

「……ありがとうございます。すごく嬉しい」

「これだけでも来た甲斐があるわ」

私は台所へ向かい、急いでパンケーキを焼き上げた。

ローゼさんとイザベラさんが美味しそうにパンケーキを平らげるのを見届けたあと、王都へと帰っていく二人を見送ったのだった。