軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第259話 良いタイミング

春が訪れてから、立て続けにいろいろとあったけど、それから一週間ほどは何もない平和な日々を送っていた。

何もないといっても、農業に関してはいろいろと試しており、昨年よりも収穫量を増やせるよう模索を続けている。

ヘレナとモージは進化していない者同士だけど、魔法の技術は年々上がっており、今年は土をいろいろと変えてみることに挑戦する予定だ。

どの方法が土に栄養を含ませることができ、美味しく育てられるのか――品質向上も目標に取り組んでいる。

そんな平和ながらも楽しい生活を送っていた中、1週間ぶりに来訪者がやってきた。

ドニーさんとベルベットさん、それからイザベラさんとローゼさんの4人。

一緒にやってきたわけではないんだけど、偶然同じタイミングで訪ねてきたのだ。

ベルベットさんとローゼさんは、いつかゆっくり会わせたいと思っていただけに、ちょっとワクワクする組み合わせ。

「前に言った通り、手伝いに来させてもらった。報酬はコンタクトレンズで頼む」

「もちろん分かっていますよ。今日から早速よろしくお願いします。……ベルベットさんも手伝いに来たんですか?」

「ええ。ちょっといろいろと相談もしたかったから来たんだけど……」

そう言いながら、ベルベットさんは、到着してすぐにやってきたイザベラさんとローゼさんに視線を向けた。

みんなの前では話しづらいという視線であり、十中八九、漫画関連のことで間違いない。

「なるほど。それでは後でお話を聞かせてもらいます」

「うん。そうしてくれると嬉しい。それじゃ私も手伝いに行ってくるわね」

二人にも軽く会釈をしてから、ベルベットさんはドニーさんの後を追って畑へと向かっていった。

「なんかタイミングが悪かったかしら?」

「いえいえ、そんなことはありませんよ。同じタイミングで訪ねてきただけで、こちらはいつでも歓迎ですから」

「……それなら良かったです。私も佐藤さんに相談があるんですが、いいですか?」

ローゼさんも、こっそりと私にそう伝えてきた。

イザベラさんの目を気にしていることから、こちらも漫画関連のことだと思う。

「最近ずっとこの調子なの。私には何も言わず、『佐藤に相談したい』の一点張り。だから訪ねてきたって感じなんだけど……目の前でコソコソやられると、少しイラッとするわね」

なぜか私を睨みつけており、イザベラさんは嫉妬心を私に向けている。

ローゼさんも、基本的には全てをイザベラさんに話すだろうが、漫画関連については話せないことがよく分かる。

敵視までされてしまうと、イザベラさんにも教えてあげたくなるけど、ローゼさんの気持ちを考えたら無理だよなぁ。

「いつかイザベラさんにも話してくれるタイミングが来ると思います。ですので、詮索はせずに優しく見守ってあげてください」

「佐藤に言われなくても分かってるわよ!」

というセリフを残して、イザベラさんとローゼさんも畑へと向かっていった。

ぷんぷんした様子で歩くイザベラさんに対し、ローゼさんはこっそりと私に手を振ってくれており、その様子が何とも可愛らしい。

とりあえずここからは、二人を別々に呼び出して話を聞く時間を設けよう。

同じ話をするわけだし、まとめて一度に聞きたいところだけど、それをやるにはまだ早い。

こんな偶然はそうそうないし、二人の距離を一気に縮めたいとも思っているけど、焦らずじっくり行こう。

この間は漫画の話で盛り上がっていたし、どこかで邂逅するタイミングがある。

私は自分を落ち着けてから、まずはベルベットさんを呼び出すことにした。

呼び出したのは娯楽室。

漫画の話をするなら、この部屋がベストだろう。

「佐藤、時間を作ってもらって悪いわね」

「いえいえ。ベルベットさんの頼みなら、いつでも時間を作りますよ。それで、今日も漫画のことでしょうか?」

「ええ。新作を持ってきたのと……置いた漫画がどうだったのかを聞きたくて」

少し照れながらも、反響を気にしているベルベットさん。

少し前にローゼさんが読んだときの感想を伝えたけど、そのときは照れまくっていて収拾がつかなかったからね。

改めて、漫画の反響について教えてあげよう。

「前にもお伝えした通り、置いたそばから凄い反響でしたよ。実際に見てもらった方が早いかもしれません」

「実際に見る? どういうこと?」

首を傾げるベルベットさんに、私は彼女が描いた漫画を見せることにした。

普通の漫画とは違い、原稿用紙のままなので少し読みづらいところもあるけど……。

何十回も読まれたことで、傷んでしまっている原稿用紙。

魂を込めて描いた漫画が傷んでしまったことで悲しんでしまう可能性もあるけど、きっとベルベットさんならこの傷みを喜んでくれるはず。

「これがベルベットさんの漫画です。大事に扱ってはいるんですが、少し傷んでしまっています。すみません」

「……凄い。うん、本当に凄い。傷んでいるけど、大事に扱われていることが分かる。変だと思うけど……なんかすごく嬉しいな」

ベルベットさんは返された漫画を一通り読んだあと、ぎゅっと大事そうに抱きしめた。

その目は若干涙ぐんでおり、本当に喜んでくれていることが分かる。

反応によってはトラウマを抱えさせてしまっていたかもしれなかったが、ここの人たちはみんな優しいからね。

ベルベットさんの漫画の面白さも、みんなの優しさも信じて展示し、こうしてベルベットさんが心から喜んでくれて、本当に良かったな。