軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第162話 龍族の意思

元気になったミラグロスさんは、それからシーラさんやヘレナとも顔合わせを終えた。

魔族ということで、相当警戒はされていたけど、敵意がないことが分かってすぐにその警戒は解かれた。

1年目なんかはガッチガチに固かったシーラさんだけど、最近はかなり柔軟になってくれている。

それでも、まだ護衛ということで、いつ斬りかかってもおかしくない雰囲気を醸し出してはいるけど。

ミラグロスさんは結局、ヤトさん達が来るまでここにいることとなり、基本的に畑の手伝いをしてくれている。

魔法も高い水準で扱うことができ、身体能力も平均以上。

物覚えも早く、すぐに戦力となってくれた。

シーラさん曰く、魔族は平均スペックが非常に高いとのことだったけど、ミラグロスさんを見て、その話が本当だということがすぐに分かった。

このまま手伝い続けてほしいところだけど、ミラグロスさんは色々と事情が複雑だからね。

気軽に誘うことはできないし、何にせよ全てが片付いてからだと思う。

そして――クロウにお願いをし、エデルギウス山まで手紙を届けて貰ってから2日後。

ヤトさんとアシュロスさんのいつもの2人が、早くもやってきてくれた。

クリカラさんやティアさんも来てくれるのではと思ったけど、流石にそこまでフットワークは軽くはないみたい。

まぁヤトさんのドラゴン形態を見て、ミラグロスさんは口をあんぐりとさせていたし、ヤトさんとの話し合いで大丈夫だと思うからいいんだけども。

「佐藤から手紙とは珍しいのう! すぐに飛んで来たのじゃ!」

「ヤトさん、ありがとうございます。ヤトさんにお話を聞きたい方がいまして、今回は手紙を出ささせて頂きました」

「わらわに会いたい人? ……佐藤の横にいる見知らぬ人かのう?」

「そうです。ミラグロスさん、挨拶をどうぞ」

ここまで完全に固まってしまっていたミラグロスさんに合図を送り、私は挨拶をするように促した。

「み、ミラグロスです。わざわざ来てくださりありがとうございます」

「うぬ。それでわらわに話とはなんじゃ?」

「え、えーっと……魔王軍と人間が本格的な戦争になった際、どちらに加勢するのかをお尋ねしたくて訪ねてきました」

「魔王軍と人間の争い? 初対面で変な質問をするのう。基本的にはどちらにも加勢しないとは思うのじゃが、ここや佐藤に被害を及ぼすというのであれば――わらわは魔王軍を潰す」

人間状態の時は常に可愛らしいんだけど、そう言い放ったヤトさんの目は本気であり、私ですら少し冷や汗が出るほど圧が凄い。

嘘偽りなく、本気で潰してしまう――その光景まで想像できてしまうほど、私はヤトさんからただならぬ迫力を感じた。

「な、なるほど。分かりました。お答え頂き、ありがとうございます」

「うぬ。……ぬぬ? もしかして、話ってこれだけなのかのう?」

「は、はい。すみません。これだけを聞きたくて、私は魔王の領土から来たんです」

「一体なんなのじゃ! わざわざ話すことではなかったと思ってしまうぞ!」

そう言っているヤトさんだけど、このヤトさんの一言で状況は色々と好転したと思う。

ミラグロスさんが敵対する可能性が低くなったし、それに伴って魔族とも友好的な関係を築くことができるかもしれないと分かったのも嬉しい。

そしてなにより、ヤトさんがここを大事に思ってくれていると分かったのが私は一番嬉しい。

伝説のドラゴンっぽいところを初めて見たのも良かったしね。

「ヤトさん、わざわざありがとうございました。用件は終わりなので、これでお帰りください――とは言いませんので安心してください。せっかく来てくれましたし、美味しい料理をご馳走します」

「わーい! やったのじゃ! ならば、今日も畑を手伝うのじゃー!」

先ほどまでの迫力はどこへやら、可愛い少女へと早変わりしているヤトさん。

そのまま畑へと直行すると、アシュロスさんと一緒に畑仕事に取り掛かり始めた。

「……これが龍族。初めて会ったけど、凄まじい」

ぽつりとそう呟いたミラグロスさんの体は震えており、ヤトさんに恐怖の念を抱いていることが分かる。

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。基本的には優しい方ですし、ヤトさんが誰かに手を出しているところなんて見たことありませんから」

「そ、そうなんだ。漆黒のドラゴンの姿を見た時から、体の震えが収まらない。あれだけ強大な力を目の当たりにして、平気な態度を取れる佐藤は凄い」

「うーん……。まぁもう慣れていますからね」

というか、最初からよく分かっていない。

さっきの本気の発言は感じるものがあったけど……。

基本的にはドラゴンの姿を見てもかっこいいという感想しかないし、私は力の差がありすぎて何も感じ取れないのかもしれない。

ミラグロスさんは強いからこそ、ヤトさんの凄さが分かってしまうんだろう。

「慣れる――が意味分からない。私は一生慣れないと思う」

「一緒にいれば少しは分かると思うんですけどね。とりあえず……これで私とミラグロスさんが敵対することは、限りなく低くなりましたね」

「ん。佐藤のお陰。本当にありがとう」

「いえいえ。魔王の領土にはいつお帰りになられるんですか?」

「明日の朝には帰る。だから、今日まではお世話になってもいい?」

「もちろんです。ヤトさんにご飯をご馳走する予定ですし、今日の夜は私の料理を食べていってください。この間作った卵がゆよりも美味しいと思いますよ」

「それは……本当なの!? あの料理よりも美味しいご飯なんて想像もできない」

卵がゆも美味しいといえば美味しいけど、たまに食べるから美味しい料理だからなぁ。

薄味が好きというのであれば話は別だけど、他の料理もきっとミラグロスさんは気に入ってくれるはず。

「美味しいと思ってくれるはずですよ。楽しみにしていてください」

「恐怖での震えが収まったくらい凄く楽しみ。頑張って働く」

「ええ。よろしくお願いします」

ということで、一時中断していた農作業を再開した。

ヤトさんもミラグロスさんも料理を楽しみに頑張ってくれているし、とびきり美味しい料理を振る舞ってあげるとしよう。