作品タイトル不明
第161話 人魔族
ご飯を食べた後は眠くなってしまったようで、再び眠ってしまった。
青肌の女性が起きたのは夜であり、私がお風呂から戻ってきたタイミングで二階から降りてきた。
「おはようございます。体調の方はいかがですか?」
「ん。お陰様で完全に回復した。……改めて、本当にありがとう」
「いえ、気にしないで大丈夫ですよ。回復したのなら良かったです」
色々と話せない事情とかもありそうだし、話を聞くつもりはなかったんだけど……。
青髪の女性はリビングの椅子に腰かけると、私にも座るように促してきた。
「私の名前はミラグロス。あなたの名前は?」
「私は佐藤と言います。名前を名乗ってもよかったのですか?」
「ん。救われた命だし、あれだけ美味しいご飯を頂いたら、黙っているなんてできない。聞きたいことがあったら何でも聞いて。全部答える」
あれだけ警戒されていたのに、何でも聞いてときた。
心を開いてくれたのは嬉しいけど、私ができる質問なんて限られているのが悲しいところ。
この世界に詳しくないし、シーラさんがいれば質問内容を考えてくれたと思うんだけど……。
今は娯楽室でゲームをやっている時間であり、そもそもシーラさんがいる状態では話してくれない可能性の方が高い。
つまり、自分で質問を考えなくてはいけないのだ。
「えーっと、それでは何者なのかを聞いても大丈夫ですか? 人間……ではありませんよね?」
「やっぱり知らなかったんだ。……私は人魔族。もう分かったと思うけど魔族だよ。助けたことを後悔した?」
「いえ、後悔なんかしていません。魔族と人間は仲が悪いのですか?」
「……へ? ……ふふ、そんなに何も知らないんだ。そりゃ私を助けちゃう訳だ。佐藤さん、魔王はさすがに知ってる?」
人魔族であることを明かしたことが、ミラグロスさんにとっては大きなカミングアウトみたいだったけど、無知ゆえに私は何も分からない。
ただ、そんな私でも流石に魔王は知っている。
魔王を倒すための勇者召喚に私は巻き込まれたからね。
「はい。流石に知っています。人間と争っている方ですよね?」
「そう。その魔王も人魔族だよ」
「えっ!? つまりミラグロスさんは魔王の配下……みたいな感じなんですか?」
「魔王の配下ではないかな。今のところは種族が同じってだけ」
「はぁー、良かったです。私の知り合いに魔王討伐を目指している方がいまして、ミラグロスさんが魔王の配下だったら少し気まずかったので」
本当にホッとした。
ミラグロスさんは魔王の配下ではないみたいだけど、一歩間違えればその可能性があったということ。
助ける相手を選ばないと、色々と複雑になってしまうと痛感させられた気分。
……でも、もし仮にミラグロスさんが魔王の配下だったとして、私がそのことを知っていたとしても、助けてしまっていたと思う。
青肌なことと角が生えていること以外は、普通の人間でしかない。
これは相当難しい問題だな。
「ん。でも、魔王の配下になるかもしれない。私は魔王の領土から来たんだけど、魔王の下につくかどうかの判断をするために人間の領土までやって来たの」
「そう……だったんですか。ミラグロスさんは勢力をまとめている方なのですか?」
「んーん。私じゃなくて、私の父が街の長。それで兄と姉が魔王につく派。私と父が魔王につかない派で分かれていて、その決断をするために調べに来たって感じ」
「調べた結果、魔王につくってなったんですか?」
「んー……。龍族が魔王につくなら私達も魔王につく。龍族が魔王につかないなら私達も魔王につかないってことだったんだけど、龍族には話を聞けなかった。それどころか追い回されちゃって、命からがら逃げた先が佐藤さんに助けられた場所だったの」
そういう経緯で、ミラグロスさんは裏山で倒れていたのか。
……ん? ちょっと待てよ。
ミラグロスさんが話を聞きたがっていた龍族って、もしかしてヤトさんやクリカラさんのことか?
だとしたら、私が間を取り持つことができるかもしれない。
「あの……ミラグロスさんが向かった場所って、エデルギウス山ですか?」
「ん。龍族の住処は佐藤さんでも知ってるんだ」
「いえ、知識として知っていた訳ではなく……そこに住んでいる龍族の方が知り合いにいるんです」
「え? 佐藤さん、龍族に知り合いがいるの?」
「ヤトさんという方と一番仲が良く、そのお父さんのクリカラさんとも面識があります」
「へー、意外。道理で私を見ても驚かない訳だ。…………え? 今、倶利伽羅って言った?」
龍族に知り合いがいるということ自体に驚いていたようだけど、一拍置いてクリカラさんの名前に気づいた様子。
ミラグロスさんは、目も口も大きく見開いており、その表情が少し可愛らしい。
「はい。クリカラさんは知り合いですね」
「龍王の倶利伽羅?」
「多分ですが、そのクリカラさんです」
「凄い! 変な人とかおかしな人って思っていてごめんなさい!」
「えっ!? そ、そんなこと思っていたんですか! と、とりあえず、私の方からクリカラさんに話を通しておきましょうか? もう少しここに滞在してくれれば、会うことができると思います」
「いいの? ぜひお願いしたい。佐藤さんには本当に頭が上がらない」
ミラグロスさんは、それからしばらく私に頭を下げ続けていた。
クリカラさんとは偶然知り合えただけだし、私自身は何者でもないため、頭を下げるのは本当にやめてほしい。
ただ、ミラグロスさんの力になれたのは嬉しいな。
ヤトさんと仲が良いことからも、龍族の方が魔王軍に加担することはないと思うし、そうなればきっとミラグロスさんとは良好な関係を築けると思う。