軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

98.拮抗状態

前線は、レインたちによって勝利を収めていた。

事実上、これで戦場は均衡を取り戻していた。

一方的な攻撃による街や国民の被害を確認し、王都へと知らせが続く。

その中で、俺とレインたちは一緒に行動をしていた。

特別に用意された野営地のテント内で、カリンが空を仰いだ。

「面倒なことになったのぉ~」

用意してもらった椅子に腰を落ちつかせていると、レインが俺の膝上に登った。

「まだマシな方」

「そりゃ、【 深き根の祖霊樹(ヴァーミリアン) 】と比べればの」

俺は純粋に、二人の会話の内容が分からなかった。

そのことを問いかけると、渋い顔をしながら教えてくれる。

「この世界にはいくつか柱が存在する。世界の根、地脈から生えている木じゃが、何かしらの要因で意思を持つことがあるのじゃ」

世界の秘密、という奴だろうか。

世界樹というのすらほとんど聞いたことがない。伝説上の存在だ。

カリンは鋭い目つきで、レインに視線を向ける。

「それで、精霊樹ファルブラヴはハイエルフが管理しておった。そうじゃろ、レイン」

「……知らない。私は小さい頃から、人間社会に居た。両親は魔物に殺されたし」

「はぁ~……なんじゃ、使えんな」

「ムッ」

レインがカリンに飛び掛かる。

「人のことぶん投げて、全然届いてなかった癖に!」

「儂の腕力じゃなくて、レインの魔法が弱いだけじゃろうて!」

ポコポコと叩き合っている様子を眺めながら、二人の元気さに気力を取り戻せた。

この二人が居れば、少し安心かもしれない……。

苦笑いを浮かべていると、一人の男性が入ってくる。

「おっ、アルトではないか」

鎧姿に身を纏ったラズヴェリー侯爵が居た。

いつもの容姿とうって変わって、凛々しさを感じてしまう。

「何を驚いているんだ?」

「い、いえ……いつもと違うなって」

ユフィの前で見せてきた態度が脳裏に焼き付いているため、凛々しさに違和感があった。

「まぁ良い。私はこの前線の最高責任者だ。カリン殿、レイン殿には非常に助かった……その恩をな」

そういえば、元々ラズヴェリー侯爵は国防においてかなり高い地位にいたはずだ。それによってレーモンさんもパーティーに招待して、親睦を深めようとしていた。

なぜか途中で帰ってしまったが。

カリンの頬を引っ張りながら、レインが言う。

「お礼は良い。セシリアはどこ、ちゃんと保護してるの」

「もちろん、彼女は私の義姉ですから」

一瞬混乱してしまう。

えっ……あっ、たぶんこれ勝手に言ってるな。

俺は深く突っ込まず、セシリアが無事なことに安堵する。

「聖女は重要。結界が破れた以上、張り直しは効かないけど、浄化の力は必須」

この状況に慣れているようで、淡々と必要な物を言っていく。

それを聞いていたラズヴェリー侯爵が、言い淀む。

「その、あなたのような方に聞くのはなんだが……私たちは現状を理解できていない。急な襲撃と結界が破れたこと、それらを予期していたのはレーモン様たった一人です。レーモン様も国王の傍で情報をまとめています」

あのカリンですら、事の全貌は掴めていない。

精霊樹ファルブラヴはハイエルフが管理していたのだ。

「あの森は、五百年も前から交流を断っている。レイン殿、何か知っているのであれば教えて欲しい」

この場において、その理由を知るとすれば同じエルフであるレインしかいないだろうと思われていた。

「……私が産まれたのはこの地じゃない。精霊樹ファルブラヴは、お姉ちゃんが産まれた場所」

野営地を出て、フレイや助けた人たちと会話をする。

ようやく落ち着いてから、ラズヴェリー侯爵が俺の隣に立った。

「アルト、晴れない顔をしているな」

「そうですか?」

ペタペタと顔を触るが、自分ではわからない。鏡を見ても同じだろう。

誰にも気付かれないと思っていたのだが、ラズヴェリー侯爵は流石に鋭いようだ。

「私には分かる。ウルク様が心配なのだろう」

「……まぁ、バレちゃいますよね。アハハ」

「私もユフィが心配だ。遠い地であるとはいえ、影響がないとは言い切れない。私の傍に置こうにも、危険が付き纏う」

……ラズヴェリー侯爵の言うことを理解できてしまう自分が居た。

俺はこの戦場において、戦力図的にはカリン、レインの次にいる。

しかも、先ほどフェノーラに目を付けられた。

確実に次も戦闘になる。

彼女の強さは異常だ。

「でも、心配なのはウルクだけじゃありません。レア王女殿下やウェンティ……街のみんなも心配です」

「やはりお前は心が広い。優しすぎるのもたまに傷だな」

「そうでしょうか……?」

「守りたい物があるのなら、容赦はするな」

……カリンさんにも、前に同じことを言われた。

「その優しさで戦うのは、無理だ」

それでも、自分が抜ける訳にはいかない。

ラズヴェリー侯爵も俺が抜けられると困ると分かっているはずだ。

そのうえで、俺の意見を待っている。

「……いいえ、戦えますよ」

フェノーラとの戦いでもそうだが、殺すことはしなくとも、捕らえることはできる。

「俺は俺なりに戦います」

その言葉に嘘はない。