軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74.ゴーレム

アルトが剣を交えると、ゴーレムの強靭な表面に弾かれた。

キィィィン、と剣が唸る。

静かにアルトが判断する。

(やっぱり硬い……魔法によるコーティングがされているみたいだ)

不意に視界が暗くなる。

頭上からゴーレムの攻撃が飛んでくる。

(体が大きい割に速い────っ)

アルトは【疾駆】で素早く後退し、眼前の敵を見据えた。

(正面突破は不可能か。特別製と言うだけのことはある)

その光景を見ていたクラスメイトたちが、唖然とした表情を見せた。

「すっげぇ……」

そう誰かが呟いた。

ウルクたちも一緒に眺め、アルトの戦いに興奮する。

冷静に判断し、アルトの素早さを目で追うだけでも精一杯だ。

クラスメイトの女子たちが、ざわめき始める。

「アルトくん、カッコいい……!」

「いつもは優しそうなのに……剣を握ると別人みたいで素敵かも……」

「顔立ちもフレイ様たちと同じくらい良いし!」

興奮し出した女子の中には貴族たちの子もいた。

それを聞いていたレアが女子たちを睨んでいた。

「解せませんね……アルト様を狙おうとする輩が増えるのは。もちろん、アルト様を好きになることは分かりますけども? だからと言って、ハエが寄るのは許せませんね」

「レア……ハエは流石に言い過ぎじゃないか?」

ウルクがそういうと、レアが不思議そうな顔を向けた。

「何をのんびりしたことを言っているんですか? もしも彼女たちに、アルト様を取られたらどうするつもりですか!?」

「なっ! 取られるだと!?」

「嫌じゃないですか?」

「嫌に決まって……! ごほんっ。あ、アルトが決めることだ」

つい大声を上げたせいで、視線が集まる。それに気づいたウルクが誤魔化す。

「では、私がアルト様を頂きます」

「それはダメだ!」

珍しく感情を昂らせていたウルクに対して、セシリアが背筋を伸ばした。

ウルクは感情の起伏をあまり見せず、常に落ち着いた人物だと思っていたからだ。

(う、ウルク様がこんなに顔を赤くするなんて……)

もしかして……と一つの答えにセシリアは気づく。

「ウルク様は、アルトさんのことが好きなんですか?」

「────すっ! 何を聞くんだお前は!」

「ふぇっ!? す、すみません……」

怒られたことで、セシリアが怯える。

フレイが横から現れる。

「セシリアさん! ウルクが一番好きなのはこのお兄ちゃんだ! 間違いないよ、これはウルクもそう言って────あっ、あわわっ!」

「はいはい」と言って、ヴェインがフレイの首を掴んでいく。

「フレイ。僕たちだけならまだしも、あの場には他の生徒もいるんだ。僕たちのイメージ像を壊さないでくれよ」

「ハハハ、そりゃそうだったね」

ヴェインがため息を吐きながら言う…

「全く……僕からすると女の子たちってのは、呑気で羨ましいね」

「それで良いだろう? あんな照れてるウルクを見るのは俺は初めてだよ。ああいう、普通の女の子をウルクにはして居て欲しい」

フレイは自身の剣を見る。

そして、アルトに視線を向けた。

「剣を握るのは俺たち男で良い」

「そうも言ってられない時代が今だろ、フレイ」

魔物や精霊樹ファルブラブ森林という、問題が残っている今に悠長なことを言っていることはできなかった。

「時代がなんであれ、俺は家族を守るためならなんでもするのさ」

フレイはそう言って、ハハハと笑った。

決定的な一撃が与えられないまま、アルトとゴーレムの戦いはこう着状態だった。

【付与魔法】で身体強化した状態のアルトであれば、両断することは容易だ。

だが、魔法を使わない状態のアルトはAランクより少し強いくらいだ。

「はぁ……」

息を整える。

すると、突然ゴーレムの動きが鈍くなった。

レインが言う。

「そこまでだよ。ゴーレムの魔力が無くなってきた」

レインがゴーレムの足元に近寄って、カンカンと叩く。

「空っぽ。凄いね、ここ数百年は生きてるけど、ゴーレムの魔力が空っぽになるまで戦う人は初めてだよ」

褒められていたが、どこなく嬉しくないアルトだった。

「倒すことができなかった」

「すぐに課題をクリアされたら、私の居る意味ないよ」

それに、とレインが続ける。

「アルトなら、どうすればいいかも見えたんじゃない?」

「……うん、ちょっとだけね」

アルトは戦いながら、問題点をいくつか見つけていた。

まず、俺は素早さや攻撃手数ならば身体強化を使った時と遜色はない。

問題は力だ。

「両断するだけのパワーが足りない。……ゴーレムに居合を使おうと思えば、剣が折れると思ったから使わなかった」

レインが言う。

「私から言わせれば、田舎の鍛冶屋で買った平凡な剣で、これまでSランクの魔物と対峙してきたのが恐ろしいと思うよ」

アルトが剣を握りしめる。

(折れるかもしれない、と剣を振るうことを戸惑うなんて、本当の戦闘だったら死を意味する)

「もっと強い剣が欲しい」