軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-9

群れ全体を把握するために高度を上げるが、見れば見るほど嫌になるほど数が多い。

しかもまだ増え続けているのだからこっち方面だけでどれだけいるのだ、という話だ。

恐らくだが、数百万とかとんでもない数に膨れ上がっているのだろう。

となると一つ大きな懸念がある。

(これ、どう見ても対滅ミサだけで片付く量じゃないんだが?)

正直に言うとこれの半分倒せただけでも御の字である。

さらに言えば、俺があれだけ苦戦したレーザー砲台付きの中型が確認できるだけで八体いる。

「前回で打ち止めじゃないんかい」と言いたくなるが、ばらけていないのでミサイルで倒れることを切に願う。

「というか、あれ大型か?」

明らかにサイズがおかしい十……いや、十二足歩行している獣っぽい個体がいる。

これ以外にも見た目が角の生えたクマ蜂っぽい大型や、ホバー移動してそうな馬鹿でかい機械型がおり、データでしか見たことのないタイプがちらほら見えた。

切り札を使う以上、優先的に撃破したい敵を巻き込む形で使用するべきである。

なのでもうしばらくはこうして上空で敵の位置情報を確認しながらデペスの集結が終わるのを待つ。

(撃った後に同じくらい敵が集まったら目も当てられんしな)

現在進行形で増加しているデペスの群れだが、合流しているのは小型ばかりに思える。

生産ラインで出来上がったものから順次出しているような感じだろうか?

RPGならベルトコンベア式に敵が運ばれてくるのは大歓迎だろうが……今はさっさと供給を停止してほしいところである。

途切れることがなさそうな敵の増加に「このまま眺めているだけでよいものか」と焦りを覚える。

実際、今ミサイルを撃って半数倒すのも、集まった後に使用するのも倒せる数に大きな違いはないだろう。

既に倒しきれないほどの数が集まっている現状、早めに撃って向こうの被害状況を確認した方が良い気がしてきた。

ここから大型が追加されないことを祈ることにはなるが、そもそも巻き込めない位置なら待つ意味もない。

「……使うか」

決断したならば後は動くのみである。

まずは地上に降りて発射装置を出さなくてはならない。

ブースターも使って地面付近まで急下降。

群れからは離れた場所で着地し、同時に武装を変更すると現れるミサイル発射台。

ミサイルランチャーのように肩に担ぐことができるサイズではないので、こうして攻撃準備を必要とする。

長さ五メートルくらいの太いミサイルが現れ、俺はエネルギーがまだ十分にあるジェットパックへと換装する。

次に必要なのは着弾地点を決めるためのレーザー誘導を照射することである。

これを一定時間使用することでミサイルは発射され、誘導に従って目標へと命中する。

その後、ミサイルの弾頭にある宇宙人が使っていた動力源を誘爆させ、とんでもない爆発を引き起こす、というのが対宇宙人滅殺ミサイルの説明文……だったと記憶している。

(本家スコール1が撃墜した船から引っぺがした動力と無人機のを集め、それらを誘爆させて大爆発を引き起こす、だったかな?)

SFに出てくるブラックホールエンジンとか縮退炉とかそんな感じのものを誘爆させて無事なのか?

そんな疑問も頭に浮かんでくるが、俺が使用するのはゲームに出てくる兵器なので平気である。

そんな馬鹿なことを考えるくらいには現実逃避気味な頭で高度を上げる俺。

これで半分も倒せなかったどうしよう、という不安がどんどん強くなっている。

レーザー誘導はミサイルが発射された時点で武装の切り替えを行えば目標地点がロックされる。

その仕様を利用して全力で距離を取ることが、対滅ミサイルの爆風から逃れる唯一の方法と言ってよい。

着弾ポイントは先ほどの滞空時間で決定している。

大型を全て巻き込み、可能ならば中型もできるだけ多く巻き込める敵のど真ん中……よりやや西寄り。

敵が増えていくお陰で見た感じの位置がちょっと変わってるように見える。

そんなわけで手にした誘導装置で着弾ポイントにレーザーを照射開始。

見た目はハンドガンサイズの銃から放たれたレーザーが真っすぐに目標地点をほんの僅かに明るく照らす。

距離があって本気で見辛いが、バイザーに映る情報が仕事をしてくれるお陰でどうにかなっている。

しばらくレーザーを照射していると地上からミサイルが発射された。

それを確認すると同時に武装を変更し、地上へと全速力で戻る。

エネルギー効率など最早考えている余裕はない。

地上付近でジェットパックを解除し、バイクを出して空中で跨りエンジン全開。

着地と同時に走り出したバイクを全速力で走らせる。

着弾を確認する余裕などない。

後ろを振り返ることなくエネルギーを全く考慮しない全力での移動。

ミサイルの着弾までは「頼む、間に合ってくれ」という祈りの時間になったのはゲーム時代と変わらない。

その祈りが届いたかどうか――その審判の時が訪れた。

最初は光が届いた。

いや、俺を光が追い抜いた、という方が正しいかもしれない。

続けて轟音が聞こえてきたかと思った瞬間にとてつもない衝撃が大地を走る。

追加の衝撃波をまともにバイク諸共背中から受けた俺は思わず後ろを振り返る。

バイクが宙を舞いゆっくりと回転しながら俺を投げ出そうとしている。

意識が引き延ばされたようなスローモーションの世界。

その中で俺は確かに見た。

空まで届く光の柱――「宇宙にまで到達しているのではないか?」とさえ思えるそれが徐々に広がっていく。

吹き飛ばされたバイクが地面に着地するも、体勢を立て直すことができず、俺は一緒になって荒野を転がった。

地面に叩きつけられる度に衝撃が何度も体を襲うが、APがある限りは大丈夫。

そう思っていたところに飛んできた岩が綺麗に頭を撃ち抜き、その衝撃で俺は意識を失った。

知らない部屋で二人の男が言い争いをしている。

まるでテレビの画面みたいに映し出される光景を俺は呆然と立って眺めていた。

「――こんなものを使えば、地球そのものがなくなりますよ!」

何のことを言っているかは存ぜぬが、先ほどの己の行動からこれがあのミサイルのことではないかとぼんやりと考える。

「地球を奪われるくらいなら、いっそのことこの星諸共吹き飛ばすまでだ!」

「生き残りだっている! あなたのやろうとしていることは人類に対する裏切りだ!」

「生き残り? ただ生きているだけで何になる!? 敵を、あの侵略者どもをどうやって追い出す? どうやって地球を取り戻す?」

現実的な意見を出せ、と白衣の老人がまだ比較的若い男性の胸倉を掴む。

その光景を他人事のように見つめる俺は、ここで「ああ、夢かこれは」と暢気に構えていた。

「いいか? 勝たねば全て奪われる。全て失うのだ! 侵略者どもを撃退できなければ、生き残りがいようが関係ない! 優先順位を間違えるな!」

「博士こそ、人が生き残らなければ意味がないことを理解してください!」

言い争いは平行線のまま終わりが見えないかに思えた。

しかし俺が見えない範囲から誰かがやってきているらしく、博士と呼ばれた老人がそちらへと向かっていく。

「議会は承認する。お前の空想など、現実の前では何の意味もないのだと知れ」

立ち去る老人が吐き捨て、俺が見える範囲から姿を消した。

残された男性は拳を握り締めてそれを見送り、しばらく老人が去った方向を睨みつけていると唐突にパソコンの前に座った。

「やってやる……やってやるさ!」

鬼気迫る表情で何かをしている男を見ていると彼が遠ざかり始める。

俺が彼に向かって手を伸ばした時には、もう彼は豆粒のようなサイズになっており、そのまま遠ざかり続けて何も見えなくなったと思ったら、突然視界が大きく揺れた。

ハッと目を開けると地面があった。

(ええっと……俺の知らないムービー?)

内容的に恐らくは対滅ミサに関することなのだろうが、俺はこんな話を見たことも聞いたこともない。

まさかDLCが発売されたのでその内容がアップデートされた、なんてことはないだろう。

(いや、何の関係もないただの夢の可能性もある。結論を出すのは早計だ)

何よりもまずは状況を確認することが先決だ。

立ち上がり辺りを見渡すと少し離れたところにバイクがあり、近づいてみると派手に転げ回ったかのように傷だらけになっていることに気が付いた。

「まあ、無事か……」

外見は傷だらけではあるものの、壊れているわけではなさそうなのでビークルを解除する。

続けてジェットパックに換装すると空へと舞い上がる。

意識を失っていたとは言え、敵の進行は続いているのだ。

すぐに対処に向かわなくてはならない。

そのためにどの程度敵が残っているかを確認しなくては……そう判断して空を飛んだ。

しかし、俺は見なければならない部分よりも、見てしまったものに視線を奪われていた。

どこまでも続く荒野――その中に現れた光は犇めくデペスの群れを消し飛ばした。

半分も倒せれば上出来と思っていた。

だが、目の前の光景は明らかに違っている。

「……俺が知っている威力じゃない」

大地にできたクレーター……そのサイズはエデンすら容易に飲み込めるほどに巨大であり、何百万といたであろうデペスの群れが散り散りになっている様は、明らかに俺が想定していた威力を遥かに超えていた。

それが何を意味するか?

この時の俺には何もわからなかった。