軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-8

「強さに惚れた。幾人もの英雄を見てきた余だが……アレは完全に逸脱した存在だった」

それから挑み、あしらわれを繰り返すうちに別の感情が芽生えたとフィオラは語る。

「ただの親愛の情……だったのだがなぁ」

カリツが眠りについてからそれが別のものだと理解したらしく、何もかもが遅すぎたのだとフィオラは大きな息を吐く。

「全力で戦える機会がなかったことも悔やまれるが……」

仕方のないことだ、と当時の状況を振り返るフィオラ。

そんなことより状況を鑑みて自重していることに驚きだ。

「余とあやつには時間がなかった。ただそれだけの話よ」

哀愁を漂わせるフィオラにかける言葉が見つからない。

かかわりたくない、というのもあるのだが、こういう場合スコール1は何か言うべきかと悩んでいたのもある。

(第一期と第五期だと大体二百年は差があるわけだから……二人が言葉を交わせる時間は最初からなかったということか)

しかしこいつが「惚れた」と言う相手か、と俺は想像できない男性像に首を傾げる。

この変態でもまともに戦うことさえできなかった歴代最強。

それをフィオラ自身が認めているという珍事。

逆を言えば、それほどまでに逸脱した力を持った英霊だったのがカリツということになる。

(そうなると一体どんな理由で彼がエデンの切り札として眠りにつくことになったのか……)

少し興味が湧いてきたが、それを表立って詮索するのはキャラではない。

むしろ興味がなさそうにするのが正しい振る舞いとなる。

よって俺が取るべき行動は話を切り上げ、話題を変えるかそのまま黙る。

俺としては後者が正解だと思うのでフィオラの言葉を聞き流し、黙って運転に集中する。

「貴様が黙る時は何か禄でもないことを考えている、余はそう思っている」

ヌッと肩から身を乗り出してきたフィオラが俺を見る。

当然相手をする気がないので無視して運転するのだが、そうなるとフィオラのウザ絡みが始まる。

「あ奴といい、貴様といい……こんな美少女が目の前にいるというのに無反応」

一体貴様らの美的感覚はどうなっておる、と呆れたような物言をするフィオラ。

このままダル絡みされるのも面倒なので、一応程度に反論しておく。

「自分の理想を作った姿で美意識を語られてもな」

「調べた情報を鵜呑みにするな。余に関する情報は全て余が検閲済みだ。あの短期間でよく辿り着いたと褒めてはやるがな」

つまり、あの情報は敢えて見逃されていたということになる。

「全盛期の肉体が若すぎる理由は残しておいたということか」

「無論それもある」

以前疑問を覚えた件を口に出すとあっさりと認めるフィオラ。

だがそれ以外にも理由があるような言い方をする。

勿論俺はその誘いには乗らず、話はこれで終わりとばかりに無言で運転する。

すると何も言わない俺に痺れを切らしたのか、向こうから話を振ってきた。

「その話を聞きたいと願うならば余のものとなれ。それは余の内面にあまりに大きくかかわっている」

「では止めておくか」と再び俺はバイクの運転に集中する。

しばらく無言のままバイクを走らせていると俺の肩から身を乗り出すフィオラ。

「……そこは頷くところではないか?」

聞いてほしいのか?

それとも俺の力が欲しいのか?

両方という可能性が最も高い気がするが、この精神的露出狂に付き合う気など毛頭ない。

お前の過去なんぞに興味はないからその手で攻めるのは諦めろ。

目標地点に到達してバイクからフィオラを下ろす。

終始ウザかったが、首を縦に振らない俺にフィオラはご機嫌斜めである。

「気になるだろう? 気にならんのか?」とバイクを運転しながら絡まれ続ければ対応も素っ気ないものとなる。

それが原因でもあるのだが、間違いなく俺は悪くない。

バイザーに映る情報から座標を再度確認し、俺もバイクを降りてビークルを解除。

ジェットパックへと換装し、空へと旅立つ……と思ったら足を掴まれた。

「余も連れていけ」

露骨に嫌そうな顔をしてみたが、自分で空を飛ぶのは結構面倒らしく、今回の内容を考えると消耗を抑え、効率的にやるべきだと主張してくる。

論理としては理解もできるし正しいと思う。

だが、こいつが論理的に正しいことを言っているのが不気味でならない。

「何か起こる前触れではないだろうな」と訝しむ気持ちを抑え、たっぷりと時間をかけてから仕方なく頷く。

そんなわけで空へとフィオラを運ぶことになったのだが、いきなり文句が出た。

「余、国を興した王ぞ?」

どうやら運び方が不服らしい。

足を掴ませてぶら下がると横に広がっているとは言え、ジェット噴射に巻き込まれる恐れがある。

なので脇に抱えてやったのだが……不満があるようだ。

一体どのような運ばれ方を期待したのか?

そもそも両手が塞がれば、いざという時に対応できないのでこれ以外は選択肢にない。

「武器を持つ手は空けておく。嫌なら自力でどうにかしろ」

俺の言葉に聞こえるように舌打ちをするフィオラ。

説得に用いた論をそのまま返されれば何も言えないだろう。

ということで腋にフィオラを抱えて高度を上げる。

「余の運び方はなっとらんが……こうして見下ろすのも悪くはない」

十分な高度を確保をしたので何か変化はないかと見渡す。

しばらく何の変化もない景色を眺めていたところ、急にフィオラが叫んだ。

「スコール1、あそこを見ろ!」

フィオラが指差す方角を見れば、まるで地表から何かが湧き出るようにその数を増やしているのが見て取れた。

それは地平線の先から現れた群れと合流し、その規模を急速に拡大させていく。

「まずいな、連鎖したか」

「やっぱりこいつが原因じゃねぇか」という言葉を飲み込み、膨れ上がるデペスの大群を俺は見下ろす。

今まで見た中で一番規模がでかい。

いや、そんな話では済まないレベルになりつつある。

「これは、まずいか?」

「ああ、余もこれほどの規模は見たことがない」

そう返事をした瞬間に「まさか」と言ってフィオラは別の方角を見る。

釣られて俺もそちらを見るが、別の方角でも遥か遠くで何かがうごめいていた。

一部を誘引するという目論見は完全に失敗である。

「これは……置物まで釣れたと言うのか?」

置物、という単語から察するにどうやら本来であれば反応しないような連中まで集まってきているようだ。

ここからでも見えない距離が反応の連鎖に組み込まれ、大きく広がった結果がこの規模なのだろう。

流石にこの数はどうしたものかと頭を抱えたくなる。

しかもこれは全てではなく、他の場所でも起きており、未だ増え続けているのだ。

思考する俺にフィオラが真面目な顔で声をかける。

「スコール1、貴様には切り札があったはずだ」

使ってもらうぞ、と俺を見上げるフィオラが睨む。

そう言えばそれがあった、と俺もわかっているとばかりに頷く。

「この数だ。使わざるを得ない」

頷き返すフィオラが状況を説明する。

「恐らくだが、デペスが連鎖的に反応した。その結果、奥で置物になっている連中まで動き出したのであろうな。その動きに周囲がさらに連動した……そんなところだろう。かつてエデンが攻勢に転じた際、その一部が出てきたという話は聞いたことがあるが……」

これがそれか、とその数に驚きを隠せないフィオラ。

こいつが伝聞での内容しか知らないということは、恐らくはカリツが現役の時代に起こったことなのだろう。

その時は最強がいた。

だが今は眠っている。

最悪はカリツに頼ることになる。

そう思っていたところでフィオラが俺に指示を出す。

「限界まで前に出ろ、スコール1。状況を見極めてから余は戻る」

俺は頷き指示に従う。

この状況では最高ランクのジェットパックのエネルギーなど気にしている場合ではない。

全速力で大群に向かって飛ぶ。

「連中の反応がここを中心としたものならば、他の方角はここほど数はいないはずだ。つまり、こちら側を貴様がどうにかできるなら……」

「残りは余が片づける」と自信満々に言い切るフィオラ。

仮に切り札を切っても手に余るようなら余を待て、とこの大群を相手に怯んだ様子も見えない。

「問題ない。この程度の数なら何度も見てきた」

ならば俺も同様に振る舞うまでである。

正直虚勢ではあるが……切り札を切った後、対処できそうな数が残ったならば殲滅。

無理そうなら遅滞戦術に切り替え増援を待つ。

いけるはずだ――眼下で今もその数を増やしている大群を見下ろす。

ポーカーフェイスは崩していない。

しかしぬっと伸びてきた手が俺の顔を掴み引き寄せる。

「余が見込んだ。死ぬな」

そう言うとフィオラの姿がふっと消えた。

この部分だけならかっこいいと思えるんだがなぁ、と俺は大きな溜息を一つ吐く。

対滅ミサイルの範囲は知っている。

だが実際に使うとなるとどうなるのかまではわからない。

ゲームでは事前準備なしで使うと自爆確定のマップ兵器。

(戦闘領域外に着弾させないと隅まで行っても爆風に巻き込まれるんだよなぁ)

それがどの程度の範囲か?

何せ一ゲーム中に一発しか撃てない上、中々手に入らないレア武器である。

検証データはあったものの、俺自身使う機会がほとんどなかったので記憶が少々曖昧なのが少し怖い。

「ともあれ、やるしかないか」

俺は一度深呼吸をして心を落ち着かせる。

そして目を開き、悍ましいとすら思える大群に向かって加速した。