軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-28

最後の中型が俺の放ったプラズマキャノンで崩れ落ちる。

レーザー砲台を失うと途端に脅威度が下がるお陰で、そこさえ潰してしまえば攻撃性能は小型より少し高い程度。

対空性能は高いようだが、地上で戦っているので関係ない。

小型の数もかなり減ったと思うので、この戦場はもう少しでこちらの勝利となるはずだ。

恐れていた時間停止だが……あれ以降一度もなく、リオレスやデイデアラを見た感じ、二人はあの現象を知覚していないと思われる。

何故俺だけが?

仮にあの現象が魔法由来のものだったと仮定して、俺には奇妙な耐性のようなものがあるので、そのお陰で知覚することができた可能性がある。

勿論これは憶測の域を出ないどころか、何の確証もない妄想に近い。

しかし科学的な観点で時間停止となると最早想像すらできない。

それどころか「時間停止は本当にあったのだ」と九割がやらせという業界の裏話が真実味を帯びてくる。

小型の掃討に移行したのでフレンドリーファイアに気を付けつつ、アサルトライフルをバイクに乗りながらデペスに向けて乱射する。

この戦場ももう少しで決着がつく。

さて、あの現象を知覚している者は俺以外にいるだろうか?

最後の一体をリオレスが切り裂いた。

ラストキルを取れなかったデイデアラが悔しそうにしているが、競争していたわけでもないのに元気なおっさんである。

やはり二人の言動を見るに彼らがあの現象を知覚していたとは思えない。

何が起こったのか?

もしくは誰が起こしたのか?

英霊の中に時間を止めることができる者がいるとは聞いた覚えがない。

調べた範囲でもいなかったし、もし存在しているならば記憶に残っているはずである。

(となるとやはり外部になる)

そして外部が原因となると真っ先に候補に挙がるのがデペスである。

やっぱり何かまずいことが起こっている気がしてくる。

だが周りで気づいている者が誰もいないのに、俺一人が騒いでも仕方がない。

信じてもらえるだけの信用はあると思っているが……もう少し状況を調べてからでも遅くはないだろう。

何かあってからでは遅いと言うが、ことこれに関してはどうにもならないのだから仕方がない。

合流した俺たちはまだ戦闘が続いている防衛陣地へと向かうことにする。

但し、リオレスはほとんどの中型を倒しているので先に帰還する。

なのでバイクの後ろにいるのはデイデアラである。

驚いたことにちゃんとバイクの後ろに座っている。

「こりゃ楽でいい」と所々焼け焦げた腕でバイクの座席を掴むデイデアラは上機嫌で笑う。

「……で、何があった?」

唐突に問い詰めるような質問に俺は一瞬ポーカーフェイスを崩してしまうが、顔を見られる位置ではないためすぐに平静を取り戻す。

「何がだ?」

心当たりはあるが質問に質問に返す。

「とぼけんな。お前があんなミスするわけねぇだろ」

どうやらあの瞬間を見られていたらしく、デイデアラは確証を持って何があったかを聞いているようだ。

「……わからん」

なので正直にわからないと答えたのだが、返って来たのは「はあ?」という間の抜けた声。

実際時間が止まっていたように感じたが、本当にそうなのかまではわからない。

「調べてはみるつもりだ」

俺の返答に「そうか」とだけ言うデイデアラだが、納得していないのがよくわかる。

付き合いは短いが、感情を隠すのが下手……いや、隠す気がそもそもない人物であることはわかっている。

防衛陣地を視認できるまで近づいたが、敵の数は残り僅かとなっている。

暴れたりないのか、デイデアラが「急げ、スコール1」と俺を急かす。

到着と同時に最後の一体が倒されて嘆く姿を見て、これはポイントを稼げなかったことが理由と判断。

こいつが計画的にポイントを使える日はいつになるのやら。

戦闘が終了したので防衛陣地が崩れていく。

すぐに遊撃で離れていた連中も戻って来るだろう。

クドニクが俺の下に駆け寄り、こちら側の戦闘を聞いてきたので話すのは中型のレーザー砲台の危険度。

実体験から情報をさらに分析して戦術的に対応しようとしているのだろう。

本当に真面目な御仁である。

続々と遊撃組が合流する中、全員が集まったという空気だが、俺は一人足りていないことに気が付いた。

「ジャミトスがまだ戻ってきていないな」

俺の言葉に「ああ、そういえば」と何人かが頷いたが、思った以上に同期が彼に対して冷めた感情を持っている。

「先に戻ったのではありませんかな?」

「そういうところのある人物だ」と肩をすくめるドータ。

この意見には同意する声が多数。

中には「先に撤退しているかもしれない」と非難する者もいた。

どうやら防衛陣地組も楽な戦いではなかったらしく、途中で敵の圧力が増したことで一度張り付かれるところまで行き、レイメルが切り札を切って状況をリセットしたことで難を逃れたが、遅れていれば負傷者が出ていたのは間違いないとのことである。

遊撃組の方でも外側にいたマリケスが途中から負担が大きくなったことを話すが、近くが劣勢になっているからだと思っていたようだ。

クドニクに確認を取ってみたが「あの光の嵐の中で戦況を正確に把握するのは無理だ」と返される。

それでも大まかには把握できているのだから大したものである。

「高度を取れば機械型は射角が取れず、ほとんど攻撃されないんだったな? だったら、やられるようなヘマをする人物でもない」

アーシダの言葉に大半のメンバーが頷いた。

確かにそうだと俺も頷きかけた。

そこで一つ思い出した。

地下闘技場で手の内を明かさなかったジャミトス。

(もしかして不測の事態が発生し、時間を止めるような現象を起こしてでも撤退した?)

彼の実力を俺はよく知らない。

ただ、嫌われながらもその実力は認められていた。

可能性はあるな、と俺はようやくジャミトスが一人で撤退している説を受け入れる。

丁度戦闘終了の合図がエデンの方角から上がった。

タイミング的に今回もこちらが最後である可能性が高い。

どこぞの変態が介入してくることはなかったので、無事に終えられたからよしとしよう。

では帰還しようかとなったところで腕を掴まれた。

そちらを見るとレイメルが疲れた顔でこちらを見ている。

どうやら切り札を使用したことで大分お疲れのようだ。

空気を読んで「乗っていくか?」と尋ねると口元に笑みを浮かべて頷くレイメル。

そんな訳で俺たち二人は一足先に帰路に就く。

「今回は疲れました」

バイクの後ろに跨り、落ちないように俺にしがみつくレイメルは背中に顎を乗せて息を吐く。

「こちらもだ。中型のレーザー砲台は思った以上に厄介だった」

俺にも行儀の悪さを注意する余裕はない。

数が揃うと大型よりも厄介だ、とその射程と攻撃力に注意するよう忠告する。

もっとも、アレと戦うのは専ら上位陣の英霊なのでレイメルが対応するようなことはないだろうが……何が起こるかわからないのが戦場である。

「そうですね」と相槌を打つレイメルもそれを理解しているのか苦笑しているように感じる。

そして背中に押し付けられる二つの質量に抗うのもまた戦場である。

見られる位置ではないはずだが、レイメルの場合はどうなのかよくわかっていない。

上がりそうになる口角を必死に抑え、何か意識を逸らせるものはないかと話題を探す。

「そう言えば……神を信仰し、その恩恵を得ることで自身と周囲を強化する、だったか?」

それで咄嗟に出てきた彼女が持つ本来の強さの秘密。

「そうですよ」と肯定するレイメルに俺は質問を続ける。

「その神の名は何と言うのだ?」

「それは驕った考えですよ、スコール1」

意味がわからずどういうことかと尋ねると「神は神であり、人はその名を知る術を持たない」と返ってきた。

神に名を付けることは不敬であり、傲慢の象徴とまで言われた。

曰く「名づけとは上位者が下位の者に対して行う行為でもあります。よって神に名を付ける、神の名を語る行為は不敬となるのです」とのことである。

面白い話を聞けたと思うのだが、背中に当たる感触を誤魔化すまでには至らなかった。

あと「布教対象を見つけた」とばかりに迫って来るのも止めなさい。

運転中だから、と断ったが……これを見越して密着してきているのではなかろうか?

そんなことを考えながらバイクの運転に集中しようと俺は頑張った。

エデンに戻った俺に待っていたのは誰かを待つローガン。

最初は俺かと思ったが、どうやら違うようだ。

(となるとリオレスか?)

その瞬間、何かが俺の頭の中で噛み合ったとまではいかなくとも、線と線が繋がるように触れ合った。

「出たのか?」

思わず出た言葉に俺自身が驚いた。

だがローガンの表情には俺以上の驚愕があった。

「何故気づい……いや、今はそんなことを気にしている場合ではないな。答えよう。『出た』とな」

そして犠牲者がジャミトスであるとローガンは締めくくる。

その言葉にレイメルが息を呑んだ。

まさか死んでいるとは予想だにしていなかったらしく、信じられないと言った様子で「本当に?」とローガンに確認している。

(ローガンが待っているのはリオレスで決まりだ。そして出たというのは異界渡り……)

以前異界渡りについて聞いた時、占い師であるミリダは「怪異」という表現をした。

ならばあの現象に何かかかわりがある可能性があってもおかしくはなく、ローガンとリオレスの繋がりから直感的に先ほどの言葉は出たのだろう。

自分の口から出た言葉の理由に説明と呼べるものが付いたことに少し安堵する。

考えなしに口から出た言葉がビンゴは流石に怖い。

ジャミトスの死を聞かされても表情を変えない俺の様子を見て、ローガンは何かあると感じたのか?

それとも先ほどのやり取りで思うところがあるのか?

「何か聞いていないか?」とローガンは俺に尋ねる。

「何でもいい、教えてくれ」

その聞き方に俺はジャミトスの言葉を聞いて思い出す。

エデンをあまり信用するな――ジャミトスの声が頭の中で再生され、俺は開きかけた口を閉じる。

タイミングが良すぎる。

何故彼は死んだのか?

(重要な情報の忘却、或いは喪失……その内容は? 異界渡りの出現とどんな関係がある?)

さらに問題なのはリオレスは異界渡りを師の仇として追っている。

ローガンが知らないのは恐らく間違いない。

だがエデンは何かを知っている可能性は否定できない。

疑惑は不信を呼ぶ。

この日、俺は明確にエデンに疑いの目を向けた。