軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-6

どのゲートから帰還するか?

確率四分の一を制した俺の選択は西ゲート。

南北のゲートは俺と変態の出撃地点なので除外する。

となれば東西こそが俺が選ぶべき帰還ポイントであり、これをバイクではなくジェットパックで上空を飛ぶことでさらに相手の裏をかく。

そんな訳で無事に西ゲートに到着した俺を待っていたのはエデンの職員。

「大変ですね」と苦笑される辺り、職員にも俺を取り巻く現状は共有されているようだ。

帰還した俺は真っすぐに自室へと向かう。

ちなみに自室も変更済みであり、調べる手段も消している。

押しかけられることなど想定済みであり、その対策も完了しているのであの変態に自室を特定されることはない。

部屋に着いた俺はまず汚れた強化服を変更し、ベッドに腰かけると武器の弾倉に残った弾のチェックを始める。

リロードが必要なものがあれば交換し、今回使用した全ての武器を確認する。

いつもやっていることということもあり、慣れた手つきで素早く武器をチェックしていく。

多少の破損ならば時間経過で元に戻り、基本的にメンテナンス要らずというのは大変ありがたい。

何事もなく弾薬の補充も終わり、ようやく一息つけるとばかりにベッドに倒れ込む。

(重力砲とレーザースライサーはまだあるとは言え、ガトリングを使い切ったのは痛いな)

あの変態に完全にロックオンされている以上、いつかは戦わなければならない。

可能であれば万全な状態で挑みたいが、アレの性格を考えると待つことができるかどうかは甚だ疑問である。

そのような理由もあり、俺が取る選択は逃げの一手。

しばらく休息を取ったのち、俺は職員に用意してもらった服に着替えて廊下へと出ると迷わずある場所へと向かう。

向かった先――そこはまさかの男子トイレ。

用意されていた服は清掃員のものであり、よもや俺がトイレ掃除をしているとは夢にも思うまい。

実際、これまでも職員として何かしているように装うことであの変態との遭遇を回避しており「そろそろ手段を変えるべきか?」と考えている最中である。

ちなみに清掃は機械だったり魔法だったりで場所によって変わる。

トイレは魔法での清掃になるので、俺はここで仕事をしている振りをするだけである。

「……スコール1、お主は一体何をしておるのだ?」

そこへ現れたのが同期の虚無僧。

初期にクドニクと行動を共にするようになったことで、あまりかかわることのない人物だったが、最近はたまに言葉を交わすくらいには交流がある。

「ドータか……見ての通り隠れている」

俺の言葉に「ああ、そういうことか」と笠が僅かに縦に動く。

見た目は虚無僧なのに生前は「女神の使徒」と呼ばれており、イメージが少し狂うのは俺が地球生まれだからか?

ドータは「世界を救った救世主」という功績があるにもかかわらず、改革を無理に推し進めた結果、対抗勢力によって暗殺されるという経緯を持つ。

エデンのデータではそのように書かれていたが、実際のところは本人に聞いてみなければわからない。

また、彼の能力に関する記述も存在しており「ギフト」と呼ばれるゲームでよくあるスキルのようなものがある世界で、四つのギフトを持つ神に愛された者としてドータは知られている。

そう聞くとドータが強いように聞こえるが、ギフトは戦闘に関するものだけではない。

たくさんあっても戦闘能力に直結するわけではなく、元の世界においても「戦いを極力避けていた」と記されていることからもそれがわかる。

ちなみにドータが持ってるスキルは後世の人らが解明しており、そのことを何気なしに喋ってしまったところ、ものすごく嫌そうな空気が漂ってきた。

曰く「模倣のスキルは相手に知られると効果を発揮できなくなる」とのことであり、他言無用と念を押された。

どうやら俺の危機感知能力をほしがっていたようだが、とっかかりを掴むことすらできず、難儀していたところで俺がスキルを知ってしまい、これまでの行動が無駄になったと恨み言を吐かれた。

模倣された側には何のデメリットもないので「次の標的を探すから邪魔だけはしないでくれ」と言われている。

「しかし、いつまでこれが続くのか」

ドータの呟きに俺は肩をすくめてみせる。

「さあな」と口には出せば早いのだが、ロールプレイならこうだろう。

「ゲートで散々喚き散らした後、お主を探して何処かへ行った。まあ、ここなら見つかることはないでしょうな」

用を足しながらゲートでの出来事を教えてくれるドータ。

確かにここなら今しばらくは安全だろうが、どこを探しても見つからないならば、トイレを虱潰しに探し出すのも時間の問題だろう。

新たに隠れる場所を考えた方がいい――そう思ったところで、用を済ませたドータが声をかけてくる。

「隠れ家が欲しいのであれば、エデンの居住区などいかがかな?」

ドータの提案に俺は「その手があったか」と感心するように頷いた。

エデン居住区とは文字通り、ここの住人が住む区画である。

基本的に居住区は特別な用がなければ英霊と言えど立ち入り禁止。

状況が状況なのでエデン側も隠れる場所を用意してくれる可能性は高い。

「良い話ができた」と俺はドータに別れを告げて彼を見送り、少し時間を空けてからトイレから出る。

端末を取り出しアリスに連絡を入れ、この件について会って話をしたいと手短に伝える。

トイレでしなかったのは発信位置を特定される可能性を考慮してのことである。

ということで場所は変わって厨房。

「お前も大変だな」と他人事のマリケスと苦笑することしかできないアリス。

食堂ではあの変態とのエンカウントが考えられるので、こうして厨房での密談となっている。

マリケスは道中で出くわしてついてきただけなので、こいつには特に用はないが、一応心配してくれているようなので同席を許可している。

「……ということで、居住区に隠れ家は作れるかどうかを確認したい」

エデンとしても俺とあの変態が戦うのは周囲への影響が気になるところであり、可能であれば回避を試みるはずである。

ならばそれに協力してくれるだろう、との読みだったのだが……その提案を聞いたアリスの顔が渋い。

できるならば俺の側に立って提案を受け入れたいが、規則では無理とわかっており、現状を考慮した場合、何かしらの手を打ちたいのも事実。

「有効な手であるだけに悩ましい」

恐らくはそんな感じの葛藤がアリスの中にあるのだろう。

うんうんと唸るアリスの背中をマリケスが叩く。

小さな悲鳴を上げるアリスがマリケスを睨むが、当の本人は人差し指を立てて上に向けている。

「それだけ悩むんだったら上に投げちまえ」

一人で背負うな、という意見には俺も賛同するように頷く。

そもそも彼女一人の権限でどうにかなるものではないだろう。

そのことを伝えると「それもそうですね」と気負い過ぎていたと苦笑するアリス。

「ただ、やはり問題はあるんですよ」

居住区とはそれほどまでにエデンにとって重要な場所であるとアリスは告げる。

「人類の生存に必要な最低限の人口。これなくして人は勝ったとしても生き残ることはできません。遺伝子は保管されておりますが、その全てがこれからも正常であり続ける保証はどこにもありません。婚姻統制を行い、今の人類ができる最高の状態を維持することができなければ、我々もやがていつかは滅びる定めとなるのです」

居住区に住むのは職員だけではない。

デペスとの戦いに勝利し、再び人類が繁栄を取り戻すための市民がそこにはいる。

血の繋がりが濃くならないように調整しなければならないほどに減少した人口。

先の見えない戦いであるが故に「遅すぎた」では済まされない。

懸念事項は徹底して管理するというエデンの方針がある以上、そこに異物である英霊を入れるわけにはいかないのだ。

なので確保できて職員の居住スペース。

それもかなり手狭になる、とのことである。

俺はそれを承諾する。

そもそもあの変態との戦いは恐らく回避できないと俺は踏んでいる。

問題は「どのようにしてそのような状態へと運ぶか」であると思うのだ。

例えば「フィオラ・アルフメルデがスコール1に対し、正式に決闘を申し込んだ」のと「エデン側の制止を振り切り、相手の承諾もなしに無理矢理決闘に持ち込んだ」のでは意味合いが異なる。

また、そうなった場合のエデン側の負担や今後のやりやすさも変わって来る。

ローガンにはこのことを伝えており、俺は「できる限り逃げ回るから限界が来たら良い条件を引き出せ」と言っている。

この部分で俺とエデンは共闘できている。

戦い損にならないことを祈るばかりだが、この戦いで俺が得られるものなど名誉とエデンのご機嫌くらいだ。

ロールプレイの関係上、スコール1がエデンにあれこれと求めるのは解釈不一致である。

(明確なメリットがあればやる気は出るかもしれないが……)

変態に目を付けられたのが運の尽き、ということだろうか?

そんな訳で密談は終了。

その日は清掃員の姿のまま過ごし、変態と出くわすことなく無事に翌朝を迎えることになる。

そして今回のリザルトなのだが……一つだけ新たに武装が解放された。

また何もないリザルトを見せられるのかと思っていただけに、これは朗報であるかと思いきや、使い道に困るものが出てきたのだ。

「……お前が出てくるのかー」

そう呟いた俺の目の前にあるリザルト画面には「対宇宙人専用滅殺ミサイル」の文字があった。

(これ使ったらエデンが壊れるとかないよな?)

少なくとも闘技場で使ってよいものではないだろう。

頭を悩ますリザルト画面を消し去ると、備え付けの端末にメッセージが届いていることを告げるランプが点灯していることに気が付いた。

恐らくは昨日の件だろう、と俺はベッドから起き上がると内容を確認するべく端末へと手を伸ばした。