軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-29

思った以上に敵が弱い――完全に過剰火力となっているスナイパーライフルを引っ込め、試しにランクを落として狙撃をしてみたが、こちらでも当たり所が良ければ一撃で獣型のデペスを倒すことができるようだ。

虫型と違い獣型は密集の度合いが異なり、間隔が空いているので貫通力が生きるケースが思いの外少ない。

それならば連射力を重視してTier2のスナイパーライフルにした方が効率が良いだろう。

そう考えて武器を変更してみたが、これは中々上手く刺さっているように見える。

しかし獣型は他のタイプと違い、周囲の状況を見て動く。

つまり「攻撃されれば回避行動を取る」という当たり前の動きをする。

故に遠距離からの一方的な攻撃に対して「散開する」という対応を取るのも予想すべきだったかもしれない。

この動きには思わず「げっ」と声を漏らしてしまう。

敵をまとめなければならないのに散らばらせてしまったのだ。

デペスの数が自由に動けないほどに多ければ問題はなかっただろうが、今回の小規模な襲撃では敵が逃げ回る余地がある。

仕方なしに俺は標的を外周からさらに離れた個体へと切り替え、そちらを手早く処理していく。

散らばった獣型を処理し終えた俺は狙いを昆虫型へと切り替える。

ムカデのような見た目のタイプCに弾丸が命中するも一撃では倒せず、二発目で体を丸めたかと思えば霧散していく。

当たり所が悪かったのか、それともタイプCは硬いのか?

効率良く倒せる敵に狙いを変えようかとも思ったが、そろそろ別の武器が有効射程に入る。

ここでスナイパーライフルからロケットランチャーに武器を変更。

いつでも動けるようにバイクに跨り、まずはTier1の最大射程で大量の敵を爆発に巻き込んでやる。

弾が大きいのもあってリロードに少々時間はかかるが、やはりロケットランチャーは効率良く大群の処理ができる。

他のポイントでも戦闘が始まったらしく、遠くに爆発や光が見えている。

「俺もしっかり稼ぎますかね」とロケットランチャーを発射。

そろそろこの爆発範囲の広さに巻き込まれる危険が出てくるので、切り替える前にここでスロット全部を使って派手に敵を吹き飛ばしておく。

立て続けに大きな爆発が起こり、俺と敵との間に大きな空白地帯が出来上がった。

これでTier1ロケットランチャーは撃ち切ったので、Tier2へと切り替えたタイミングでイザリアの声が頭に響く。

『やりすぎだ、スコール1。隣のチームに向かう敵まで倒すな』

戦功の独り占めはよくない。

一方通行の通信とは言え、戦況を知ることができるのは大変有難い。

どうやら俺は敵を倒しすぎているようなので、少し早いが敵を包囲する方向へと動き始めよう。

初動は敵の勢いを殺すことが目的である。

ならば、それは達成されたと見做してよいだろう。

(問題があればイザリアが何か言ってくるだろうしな)

威力が大幅に落ちたロケットランチャーでは一撃で倒せない敵が増えている。

だが爆発範囲は小さくなったとはいえ、広範囲に大ダメージを与えており、脚部の損傷などで敵の機動力が削がれ、相手の進行速度を遅らせることに大きく貢献しているのが見て取れる。

バイクをゆっくりと走らせながらロケットランチャーを撃ち続ける。

リロードも手早く行えるので引き撃ちにも適しており、ハセガワの有用性がまた一つ証明されてしまった。

それはそれとして敵の数が広範囲に分散しているからか、こちらに向かって来る数が少ない。

そのせいで敵との距離が中々縮まらず、このままロケットランチャーを撃つだけで終わりそうな予感がしてきた。

敵の規模に対してこちらの数が多すぎたのかもしれない。

そんなことを考えたところで再びイザリアの声が届く。

『円を縮小する。各自ポイントまで移動』

イメージ同封で手短に伝えてくるイザリア。

「こういうこともできるんだな」と驚きつつ、指揮権を寄越せと言うだけのことはあると感心する。

それではゴーサインも出たことなので、追い込み漁の如くデペスの群れを追い立てていこう。

風が通り過ぎると無数のデペスが細切れになる。

両手に持った重機関銃から放たれる大量の弾丸がデペスを粉々になるまで削り、両肩に装着されたリニアキャノンが正面の敵を粉砕する。

現在俺はバトルアーマーを装着し、リオレスと共闘中になっている。

バイクでゆっくり移動するよりも火力を優先した方が良いと思った俺は、バトルアーマーを装着して敵をゴリゴリ削っていたのだが、どうやら動き始めたのが早かったこともあり、反対側にいるはずのリオレスが担当する範囲まで来てしまっていた。

折角だからと共闘を持ち掛けると「それなら戦果を多めに頂くとしようか」と乗り気なリオレスと一緒になって、イザリアがまとめて倒す分を俺たちで横取りし始めた、というわけである。

敵の数が減り過ぎて広範囲高火力でまとめて倒すのは効率が悪くなるかもしれない。

だが、そんなことは知ったことかと俺たち二人はドンドン敵を倒し続ける。

途中イザリアから「お前たち何やってる!?」と言われたが、俺たちは指定の範囲にしっかりと敵を押し込んでいるだけである。

規定外領域到達者が二人揃えばその火力はどうなるか?

その想定を見誤ったな、と俺たち二人はポイント稼ぎに精を出す。

『ああ、ああ。そういうつもりか、よくわかった!』

「巻き込まれるなよ!」というイザリアの怒号が頭に響いたかと思えば、足元から巨大な魔法陣が浮かび上がった。

この位置ならば俺たちは余裕で範囲内である。

仕方なしに俺は後ろに飛んで魔法陣の外に出ると、リオレスもすぐに少し離れた場所に着地した。

デペスとの距離が離れてしまったのでリオレスは剣を鞘に納めるが、俺はまだまだ射程距離内。

ここで重力砲を使用してまとめてごっそり頂くことも考えたが、それをやるのは流石にアウトだろう。

「もうしないでくださいね」と釘を刺されているので、ここは多連装ミサイルランチャーで広範囲を爆撃。

両肩から一斉発射されたミサイルが上空へと飛び立ち、広範囲に降下して大量のデペスを爆発に巻き込む。

(ほれほれ、早く発動しないと敵がドンドン少なくなるぞー)

楽しくなってきた俺はグレネードランチャーをポンポンとリズミカルにデペスの群れに撃ち込み始める。

すると魔法陣の放つ光が強くなったかと思えば、中にいるデペスが一斉に浮き上がる。

次の瞬間、魔法陣の内部から光の柱が現れた。

目を開けるのも厳しいほどの眩しい光がようやく収まったかと思えば、目の前のデペスは一掃されていた。

それから少ししてエデンの方角から信号弾が打ち上がり、今回の戦闘が終わったことを知らせる。

無事に勝利ということでバトルアーマーを解除。

バイクを出して跨ると、俺は後ろスペースを二度叩く。

すると動き出したところで俺の背後にリオレスが降り立った。

立ったままでも大丈夫だろうと速度を上げてイザリアたちと合流。

俺たちを見るなり不機嫌そうな顔をするイザリアだが、バイクから飛び降りたリオレスが「あまりにも暇だったのでな」と悪びれる様子もなく言ってのける。

恐らくだが「お前の采配ミスで暇してんだ。ちょっとくらい暴れたところで文句を言うな」という感じの意味ではないだろうか?

(まあ、実際暇だったのは事実だし、規定外領域の二人を隣り合うように配置したのはミスと言えばミスか)

最後の追い込みに俺たちを使いたいのはわかるのだが、どう考えても過剰火力だった。

もしかしたら俺が自らのリソースを不安視しており、消極的な戦いをすると予想していたのかもしれないが、生憎と現状不安はあるが一切の自覚がないのである。

何かしら自覚症状が出ているのであればともかく、何もないのであればいつも通りに動くのも仕方のないことである。

何より、俺にはこのリソース管理システムのテストという大義名分がある。

続々と集まる英霊たちを見ると負傷者もいないらしく、本来ならば合同で当たるような規模ではなかったことを物語っている。

全員が戻って来る頃合いで輸送車も到着し、特に何事もなくエデンへと帰還する。

もっとも、バイクに乗っていた俺は知りようがなかったが、輸送車の方ではデイデアラがイザリアを煽っていたらしい。

エデンに到着した俺がまず最初にするべきことはリソース管理装置の返却。

デペスに汚染されているので洗浄やチェックは必須である。

中の記録に関してはリアルタイムでエデンに送られていたようなので、現在はそのデータを解析中とのことである。

「早ければ明日にでも結論が出るそうです」と伝言を預かっていた職員が俺に伝える。

そんな俺を見て「よくやった」とばかりに親指を立てて笑うデイデアラ。

恐らく俺とリオレスが暴れたことを知ったのだろうが、これにはイザリアも不機嫌な顔でこちらを睨みつけている。

「見ての通りこちらもデータが必要だったのでな」

俺は「そこで笑っているおっさんと一緒にしないでくれ」とばかりに他意はないことを訴える。

これで不機嫌そうな顔をしているイザリアの矛先はデイデアラに向かうだろう。

案の定言い争いが始まったが、止める者は誰もいない。

英霊というのは生前、英雄と呼ばれるに値する功績や実力があるが故に我が強い。

衝突を繰り返すのは当然と言えば当然なのだが、どうもあのおっさんに関しては意図的にやっているような気がしてならない。

そんな時、ゲートを潜る中にリオレスを見つけ、目が合ったかと思えばこちらにわかるように頷いて見せた。

(だからこっちにはその意味がわからないんだよ)

そう思っても頷き返してしまうロールプレイ。

「おかしなことになりませんように」と祈りながら、俺はエデンのゲートを潜り抜けた。