軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-27

魔法の座学を提案された時は興味と面倒くささで興味が勝った。

そもそも魔力がないらしい俺には魔法が使えない。

これは確定しており、興味はあるが受ける意味がないと感じたからだ。

だが、ここで考えるべきことが二つ生まれる。

一つは自身の身を守るためにも魔法に関する知識は必要である、ということ。

そしてもう一つは過去作のシリーズからも武器を持ってくることができたならば、使える魔法は存在するのだ。

過去作であるVS魔王軍とその続編となる邪神軍では魔法の武器が登場している。

よって、可能性はあると思ったところで興味が勝った。

そんなわけで現在、多目的室で魔法の座学を受けている。

講師は以前セダルに記憶を見せてもらったときにいたお爺さん。

それと現代魔術師の代表としてイザリアがいた。

「魔法と魔術の違いか……はっきり言うと世界や時代で違うから一概には言えないのだが、魔力を構築して出力する際のプロセスだったり、規模の違いだけで分けられたりと異なるケースが多い。なので定義付けが面倒だから、もう一緒くたにしてしまっているという感じだな」

「魔法と魔術の違いは?」という俺の最初の質問に対する答えがこれ。

案外アバウトなんだな、と両者に大きな違いがないことに驚く。

またお爺さん曰く「細分化することもできるが、それをしたところで大きなメリットがあるわけでもない。だったら曖昧なままでもいいだろう」ということでこのような形になったらしい。

なので魔法と魔術を剣術で言うところの「流派」みたいなものと表現することもあるのだと言う。

「取り敢えずスコール1。お前が絶対に知っておかねばならない厄介な魔法がある」

この座学はそのためのものだ、とまで言ったイザリア。

それに頷くお爺さんだが、それほど重要なものならばもっと早くに言うべきではないだろうか?

ちなみに彼の名前は「キネロ・パープス」と言うらしい。

退役軍人だが、非常時ならば戦闘員として駆り出されることになるそうだ。

「我々が一番恐れているのが、これ……精神魔法に属する『洗脳魔法』です」

モニターに表示された幾何学的な文様とその横にある説明文。

要するにこの座学の目的は俺がデペスに操られる可能性を潰したいということだ。

「実際、お前ほどの戦力がこちらに向けられた場合、その被害はどう考えても無視できない。だからチキュウという純科学文明出身のお前には色々と学んでもらい、少しでも可能性を下げておきたい、というわけだ」

言わんとしていることはわかるので俺は黙って頷いた。

イザリアが俺に対して使っていたデバフ全般も厄介なものだが、そちらは対象に魔力がないことが原因なのか「効果は薄いのではないか?」という意見もあるらしい。

普通ならばあれだけ色々と撃ち込まれれば立つことも困難な状態になるはずが、そのまま戦闘を継続していたため、この説は結構有力だろうという見方だと聞かされる。

となれば「それ以外も効き目が薄いのでは?」と考えるのは当然なのだが、だからと言って放置もできない。

リスクは可能な限り減らすべきである、その意見にも頷くしかない。

「ですのでこうして最低限は学び、実践もしてもらう予定となっております」

頷くしかない俺だが、ここでちょっとした疑問が出てきたので聞いてみる。

「そう言えば、世界が異なれば魔法の法則や仕組みが変わったりするのか?」

「そこは物理法則と同じようなものだ。魔法にも法則があり、世界は変われどそこは変わらない。もっとも、時代によっては精度の差から僅かな違いがあり、その辺りはエデンの基準で統一しているがな」

どうやら世界は違っても法則が同じなので技術体系への影響はほぼないようだ。

魔法のない世界出身なので、ここは「そういうものか」と納得するしかない。

そんなわけで始まった座学だが、期待していたよりかは面白いものではなかった。

ただ、聞けば聞くほど昨日の戦いで自分が無事だった理由がわからず、イザリアが文句を言ってきたのも納得がいった、とだけは言っておく。

リソースの件然り、全く以て謎の多い体である。

その翌日も座学が行われ、最低限の魔法知識を吸収していく。

幸い物覚えは悪くないと自認しており、全く興味がないというわけでもないので案外すんなりと頭に入ってくる。

ということで本日の座学も終了。

自室に戻るか射撃訓練でもするかと廊下で考えていたところに声をかけられた。

「スコール1」

「ジャミトスか」

振り返るとそこにはジャミトスがおり、挨拶することもなくハンドガンを返却されると早速本題に入る。

「結論から言おう。何もわからなかった」

得意分野かと思ったが、ジャミトスでも無理のようだ。

少しばかり落胆してしまうが、それが表情にでも出てしまったのか、ジャミトスは俺の思考を訂正する。

「ああ、勘違いするな。『何もわからない』ことがわかったのだ」

つまり昨日習った魔法体系云々の話から考えるに「魔法で調べてもどうにもならないことがわかった」ということだろうか?

そのように聞いてみると返答はYESだった。

「魔法ではないのは確実だ。だが、あの召喚装置は科学技術と魔法技術の産物であるはずだ。この結果は興味深いが……同時に危険でもある」

誰彼構わず話すのは止めておくことだ、とジャミトスは俺に忠告する。

彼が調べた限りでは「俺」という存在はあまりにも異質なのだと言う。

「予想ではあるが、前例のない世界、前例のない肉体の構築。そのどちらか、それとも両方か? 何らかの影響でそうなった、と考える外ない」

「但し、これは正常に召喚されていることが前提の話だ」と付け加え、まだ何かあることをほのめかす。

この言葉に俺は恐る恐る「つまり?」と結論を急かした。

「今回の英霊召喚自体に異常が発生していた可能性。これを考慮に入れた場合、可能性はどこまで広がるか検討もつかん」

こうなるとお手上げだ、とジェミトスは身振り手振りを交えて結論を出す。

「だから『何もわからない』か」

俺の言葉にジャミトスが頷いた。

「ま、このことは誰にも話さない方がええじゃろ。儂も中々良い経験ができたのでな。少しくらいはお前さん側に立って意見をしてやろう」

そう言って去ろうとするジャミトスだが、俺はそれを呼び止めてレーションガチャを開始。

コンソメ味が引けたので箱ごと渡す。

「夜には次を出す。その前に食ってくれ」

「有難く頂こう。折角若返ったのじゃから分厚い肉が食いたいんじゃがな」

そう言って肩をすくめるジャミトスに俺も「確かにな」と苦笑交じりに同意する。

ジャミトスもこちらでの食事には少し気を使っているらしいが、好物のはずの肉がどうにも満足できずに困っているとのことである。

ここで食える肉は人工肉なので何か違和感があるのだろう。

俺の貧乏舌ではわからないが、ここには生前相応の立場であった人間が多い。

わかる人にはきっとわかるのだろう。

それから少しジャミトスと飯談議をしてから別れた俺は先ほどの内容を思い返す。

(召喚装置に不具合、か……)

英霊召喚とは死者の魂を召喚し、そこに仮初の肉体を与えるとアリスは説明していた。

ここは正しいとして考える。

そうでなければ最初の段階で躓き、考えはいつまで経ってもまとまらない。

(もしも俺が死んでおらず、召喚されていた場合はどうなる?)

考えるのは「不具合」となる原因。

だが、その場合の結果が予想すらできないほどにわからない。

もう一つ考えなければならないことがある。

あの話を聞いて真っ先に思いついたのが「召喚されたのはスコール1であって俺ではない」という説。

「英霊召喚自体に異常が発生していた」

ジャミトスのこの言葉が妙に頭に引っかかる。

そう考えれば色々と納得はできるのである。

だが、それがどのような影響を及ぼしているかはまではさっぱりわからないし、俺の予想だって正しいかどうかは全くわからない。

こうやって考えることに意味があるのかすらわからないのだ。

ただ、納得はしておきたいのだろう。

このようなことに巻き込まれるには何か意味がある――命懸けで戦う理由を今更求めるのも違う気もするが、たった一つだけでもいい、このまま彼を演じるために、自分の背中を押せる何かが欲しいのかもしれない。

そうやって悶々としながら時間だけは過ぎてゆく。

俺の武器弾薬のリソースが不明となってからは、武器の貸出について誰も何も言わなくなった。

むしろ申し訳なさそうに「何かできることがあれば言ってくれ」と積極的に対価を支払う姿勢を見せている。

今のところ影響は確認されていないので「大丈夫だ」と言っているが、この問題が解決する日は来るのだろうか?