軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やらかしを見た後に

「おぉ、愛する人よ。すまぬ、我らは包囲された」

「あぁ、とうとう最後なのですね」

「そなたは逃げよ。あやつもお前は生かすだろう」

「嫌でございます。この場で果てる覚悟、どうか王のそばにいさせてくださいませ」

「・・・愛する人よ、最後の夜に舞ってくれ」

逞しい男の周囲を華やかな女性が腕を嫋やかに回して舞う。

永遠の別れの舞は悲壮でいて美しい。

男が舞に剣を持って加わった。

「私の力は山さえも崩す。その覇気は天をも覆いつくす。それなのに時は私に味方しなかった。愛馬も進まない。ああ、愛する人よお前をどうすべきなのか」

男の歌に女は彼の剣を受け取り舞う。

「敵は我らを囲う。王の意志も尽きたのに私はどうやって生きていけましょうか」

女は愛する男に返歌を返し、舞の最後に己の首に剣を当てスッと引き倒れる。

駆け寄る男、

だが彼女はすでに息絶えていた。

その手から剣が零れ落ちる。

抱き抱える男の慟哭の中、徐々に灯りが落ちていき全てが闇の中に落ちた。

「・・・」

自分のやらかしを見せつけられるのはきついものがあるわー。

観客席から賞賛の拍手が鳴りやまないのがさらに俺の精神を抉ってくる。

パクリ。ええパクリですよ。

横〇大先生、異世界から謝罪しますごめんなさい。

上に立つ者はこういう風になってはいけないよの典型的なパターンで教えたことが中華から西洋風になって舞台になるとは予想もしなかったよ。

「どうしたんだい?良い舞台だったじゃないか」

グリエダさんは拍手して満足気な表情。

「ええ、良かったです。役者さん達も凄く上手かったです」

よほど脚本家(某前公爵第一側室の人)と演技指導がよかったのでしょうね。

観客が大絶賛だし、グリエダさんも喜んでくれている。

デートとしては大当たりの演劇を引いたのかもしれない。

だけどね、俺だけは許せないのよ。

だって覇王様が正義の側になっているのぉっ!

誰っ!?誰なのっ、覇王様は自業自得で破滅に進むから悲恋が際立つのよっ。

なに悪の帝国に挑む王様の物語になっているのぉよほぉ。

「最初は圧倒的優勢なのにそんなに騙されて王として大丈夫なのか?臣下なにやっているんだと思っていたが最後は少数の軍になっても立ち向かうのは良かった」

観る観点が違うな~、さすがリアル覇王様。

「最後が皇女との悲恋で終わるのは少し予想外だったが、王と共にいたい最後の剣舞は涙が出そうになったよ」

「そうですか・・・」

言えない。何故か悪の帝国の皇女になっているのがおかしいとは、楽しそうなグリエダさんには絶対に言えないよ~。

「まあ私なら皇女を連れて逃げるがな。百万の軍なら穴は山ほどあるだろう、一人連れるぐらいなら余裕だ」

マフィアのボスの様に長椅子に座るグリエダさんは愛人枠の俺を引き寄せて頭部に頬をスリスリなされる。

グリエダさんの中では皇女は俺なんですね。

やったー!俺は悲恋にはならないの。

「山は崩せないが城塞ぐらいなら槍を打ち込めば崩せるよ」

「え、本当ですか?」

「ハハハハハ」

「冗談ですか?本当?どっち!?」

グリエダさんが覇王、俺が美姫?性別反対で結果も反対で生き残れそうだ。

もしかして俺の前前前世ぐらいは美姫だった!?グリエダさんの前世は覇王様なのか。

いやいや、俺の方は途中にオッサンが挟まれているから違うだろう。違うよね?

「申し訳ございません」

人混みを避けるためにボックス席にとどまり続けていた俺達に、従業員が入って来て話しかけた。

なんだ?人のイチャイチャを邪魔するのかっ。

ショタの魔力パンチをくらわすぞ。逆に俺の拳にダメージ大だがなっ。

ロンブル翁から坊ちゃんはまず逃げなされと注意された。

おのれー役立たずのジジイめー。たまには俺にも役に立つものを教えろってんだ。

「お二人にお会いしたいという方がお待ちになっているのですが」

「断れ」

「・・・」

「・・・」

覇王様は従業員の言葉に目を細めて拒絶する。

そこには俺をからかって楽しんでいた姿は一欠片もない。

アレスト女辺境伯がそこにいた。

俺はマフィアの愛人枠から、グリエダさんの組んでいる脚に頭を乗せている猫に昇進している。

「それが貴族のお嬢さ」

「知らん」

俺を見るなよ従業員。

ウルウル目はショタの俺がするから効果あるんだぞ。

ほらグリエダさんの周囲からどんどんと寒気が漂い始めたじゃないか。

しょうがない。機嫌が悪いままではデートが台無しだ。

「グリエダさんグリエダさん」

「ん?」

「一応会ってみましょうよ」

「・・・なんだ、セルフィル君は他の女に興味があるのか」

ひょえっ!

ショタでもわかるぐらいにどんよりとした殺気が発せられる。ここ、これは間違った事を言ったら、ゴクリ。

「劇場を出るまでの暇つぶしですよ。僕たち二人とわかっていて会いに来るんですから、ね?」

「・・・呼べ。短い時間なら会ってやる」

俺の意図がわかったらしいグリエダさんは接見を許可した。

ホッとした従業員が小走りで出ていった。

さすがに猫のままでは失礼なので起き上がる。ただ愛人枠からは降格は出来ないみたい。

「アガタ公爵家長女ジェシカですわ」

「ダバイン伯爵家次女ベラだ」

「マモト男爵家次女ホリーです・・・」

気の強そうなけばけばしいドレスの女に、劣化グリエダさんみたいな女、その二人に隠れるようにしている女が俺達の前で自己紹介をした。

「・・・」

「・・・」

俺もグリエダさんも一言も喋らない。

なぜなら彼女らと話す必要はないからだ。彼女達に用件があるなら、彼女達が俺達にお願いして話をさせてもらわなければならない。

相手もこちらを見たまま無言。

こちらは座ったままで三人は目の前で立ち尽くしている。

あれだ職員室で怒られる生徒三人みたい。

なぜ俺を見る?

ああ、とりなせという事か。

いいよ、してあげようじゃないか。このままだんまりだと二人のイチャイチャタイムが無駄に消費されるし、何となくだけどこの三人は間違っているような感じがするんだよ。

貴族なんて対応一つで次の日からスラム街行きにもなる可能性があるのに。

「グリエダさん、挨拶を返して欲しいみたいですよ」

「なぜ?要件も言わず。会見した礼も言わない、名前だけを名乗った連中に私達が挨拶を返さなければならないのかい」

「なっ!?」

公爵令嬢が凄く驚き、伯爵次女は目を剥く、男爵次女はしまったという顔をしているから後の二人に無理矢理連れてこられたのかな。

「私はアガタ公爵家の娘ですのよっ!」

「たかが娘だろうが。私は辺境伯だぞ。正式な貴族だ。断ったのに劇場の者に無理をさせたな。不愉快だ出ていけ」

グリエダさんの言葉に自分の地位を嵩に懸かっていた公爵令嬢がパクパクと口を開け閉めする。

公爵の娘と辺境伯では身分は圧倒的に辺境伯が上だ。そりゃ爵位が上の家の娘だから配慮はしないといけないが、あちらから会いたいと望んできて頭を下げない者に貴族は容赦ない。

学園、そのくらいちゃんと教えようよ~。上級貴族が馬鹿というのがどんどん出てきているよ。

この三人、俺達が誰なのかちゃんと理解しているのかな?さっきからグリエダさんしか見てないけど、俺には用事は無いんだね。

「・・・お会いくださり感謝しますアレスト女辺境伯様」

「あ、ありがとうございます」

自分達のトップが役立たずと判断したのか劣化グリエダさんが頭を下げ、男爵令嬢も追従して下げる。

「許してやろう。それで会いたかった理由は?」

「はい、私達三人は辺境伯様に感謝を伝えに参りました」

「感謝?」

俺を見られても困りますよ。まだ婚約者になってひと月も経っていませんから、さすがに男前行動なグリエダさんの全ての行動は把握していません。

「はい、第一王子の婚約破棄の件で」

「?」

だから不思議そうな顔をこちらに向けないでください。

「私達の婚約者、いえ元婚約者達は第一王子の側近だった者です。辺境伯様のおかげであのような愚か者達と婚約を破棄できたことを、今日こちらの劇場に私達もたまたま来てお顔をお見掛けしたのでお礼の言葉を伝えたく、強引な行動をしました。申し訳ございません」

スラスラと言葉を述べる劣化グリエダさん。

わかってますよ~、黙っていますから俺を引き寄せようとしないでください。

「謝罪は受け取ろう。君達はあの卒業パーティーには出ていなかったのかい?」

「・・・あの女のせいで迎えにも来ませんでしたわっ」

「私は家格が低いので・・・」

「元婚約者らはあの女に骨抜きにされて数か月前から私達はまともに会話も出来ていませんでしたので」

「そうか、三人とも辛かったようだね。すまなかった私は婚約者との逢瀬を邪魔されて少し機嫌が悪くなってしまったんだよ」

そう言って俺を引き寄せ抱きしめるグリエダさん。

「っはしたないっ!」

公爵令嬢は俺達を見て気持ち悪いものを見た顔をする。他の二人は興味のありそうな目で見ているが表情は崩さない。

「謝罪は受け入れた。その女の無礼は許してやる、他に言いたいことはあるかい?」

「・・・いえございません」

「なら出ていけ。これ以上はそちらの家に抗議する」

俺を見るときだけ優しい顔を見せてグリエダさんは三人に下がる機会を与えた。

公爵令嬢はドスドスと音が鳴りそうなぐらいに踏み歩き。男爵令嬢はオドオドしながら頭を下げて出ていく。

「少し待ってくれ」

最後に劣化グリエダさんが軽く頭を下げて出ていこうとして、本家グリエダさんに止められる。

「私の婚約者が誰かわかっているか」

「え、ああはい、ハイブルク公爵家の前公爵の三男のセルフィル様ですよね」

ちらりと俺を見てくる。

一応わかっているようだ。なのに彼女達は俺を殆ど無視していた。

「卒業パーティーの時にもいたんだが彼が何をしたのか知っているかい?」

「・・・辺境伯様が元婚約者達を断罪したあとに、自分の家の者達で拘束させて王子達に暴行の指示を・・・」

さっきまでは意識して俺を無視していたのだろう。今、俺を見る軽蔑の目は自分で動かないで配下に王族と上級貴族を暴行させたクズというところかな。

へぇー、そうなっているのか。

長兄は事態をちゃんと把握していたし、婚約破棄に関わった者達は事実を知っているはずだ。つまり国の中枢。

あとは卒業パーティーにいた者達、つまり卒業したばかりのものと雑用の生徒、教師あたりなんだろうがその人達の口をある程度噤ませて、人を使ってグリエダさんが解決したように噂を広めたのかな?

「わかった、ありがとう。自分達がどう周囲に見られているか最近はわからなかったから聞けて良かったよ」

「はあ」

彼女もボックス席から出ていく。

「ふぅ、なんとも言えないね」

「会ってよかったですよ」

三人が退出してしばらくしてからグリエダさんはいつものグリエダさんに戻った。

俺をヒョイと持ち上げ、長い脚をソファーに乗せて同じ方向を見るように俺を自分に乗せる。

ギュゥッと抱きしめられる体勢は大きなぬいぐるみの気分。

「あの卒業パーティーの情報が操作されていますね」

「パーティーに連れて行かれないほど仲が悪かったとはいえ、元婚約者の情報すら正確に知らないとは、どれだけ情報操作をしているんだか」

グリエダさんが悩まし気な溜息をつく。

なぜか第一王子の婚約破棄でやらかした俺の存在が消えていた。

詳しくは三人から聞き出せるような状況じゃなかったからしょうがないけど、たぶん俺のやったことはグリエダさんがやったことになっている。

「君を隠す理由は?」

「わかりませんね~」

あまり変わらないけど俺の婚約者探しのときの肩書は、グリエダさんの功績を盗んで王族に嫌われた公爵三男坊になっていたみたい。そりゃあ避けられるわ。

「長兄達は知らないみたいですから、学園内だけの話かもしれません」

「ああ、ハイブルク公爵の耳に入ったら激怒しそうな内容だ」

「その前にセイレム公爵が激怒でしょう。娘の恩人を貶める話ですからね」

何やってんの、情報操作した人。本当に長兄達に知られたらどんな報復があるかわかっていないのかな?

いや学園という軽い閉鎖空間だったから実行したのかな。やるな黒幕、美少年ショタの魅力でもお手上げだったぞ。

まあおかげで最高の婚約者が出来ましたが。

「まあ今は情報を集めないとどうしようもないです」

学園だけでなく貴族全体に、第一王子の婚約破棄の内容はいろんな違う形に変えられてばら撒かれているのだろう。その中の一つとして、学園内での作られた婚約破棄の内容は埋もれるのだ。

口伝いにしか伝聞されない時代だからこそのやり方で、上手く出来ている。

愚王、側妃ではないことは確かだ。

だって愚か者だからバレバレな事しかできないの。

たしかに俺は孤立させられたけど、それを強固にするまでの頭ないことは確実。

元宰相、元騎士団長、元大司教?わかんね。

それよりさきに言わなくちゃならないことができた。

「ごめんなさいグリエダさん」

「ん?」

「グリエダさんに王子の断罪をさせたことになりました」

俺みたいな三男坊なら死んだふりして逃げればよかったが、グリエダさんは女辺境伯なので立場から逃げられない。

あの三人は感謝していたけど、他の貴族からしてみれば王族に反発したというキズと思われてしまう。それは死ぬまで残り影響するだろう。

「ハハハっ、何を言っているんだい」

俺の言葉に笑うグリエダさん。

「私は王の騎士団を粉砕し、王城で兵士、騎士達を破砕して王を脅した女だよ。そのくらい大したことではないさ」

「そうでした~」

忘れてはいけない覇王様。

くっ!これは嫁ぐ身として国盗りぐらいすればいいのかなっ。

長兄ーっ!北条、織田、ナポレオンどのタイプで国盗りしますか!?後をちゃんと考えれば滅びませんよ。

「それより君の活躍を貶めた奴を探し出そう。ああ、許せないな。私のセルフィル君を貶めるなんて・・・関わった連中を上から潰していけばいいか?」

おう、覇王様はヤンデレの気質があるみたい。

ほらショタですよ~。金髪碧眼のショタです。抱きしめるとフギュッとか鳴きますよ~。

まだまだボックス席にはいられますから、舞台の覇王の最後でもネタバレしましょうか?え、凄い興味持ちますね。

しょうがないな~、じゃあ始めての皇帝様が亡くなったぐらいから。