軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ツアー最終日

ツアーも二回目ということで、サクサクと進む。

さらに今回は風使い二人ということで<風速陣>の助けも大きく、一行は先日よりも早く五層へ到着した。

六層の呪縛を受けてから、金剛級五人と本気を出したベッティーナたちで迷宮主もさっくりと仕留めて終わる。

その後はお楽しみの石蓋による永久呪詛の時間である。

「……やはり、そうか」

シサンの技能樹の根から這い出した黒い茨が、一本しかない<石身>の枝に絡みつく様にトールは納得の呟きを漏らした。

<技能禁制>、保有者のスキルを封じてしまう最悪とも呼べる永久呪詛だ。

自分の技能樹の様子にシサンも気付いたのか、青ざめた顔でトールを見つめてくる。

この状態では枝スキルを使用どころか、成長させることさえ不可能となる。

最初の枝が伸びなければ、他の枝が生えてくることは皆無なので、普通であればここで冒険者生命は完全に終了である。

「大丈夫だよー、私とムーちゃんが力をあわせれば、どんな呪いも即解決だよ」

「ムーのたすけがほしければ、もっとムーをほめたたえるのだ!」

「もう、そんなイジワル言っちゃダメだよ」

「えーと、ムーは小さいのに偉いね」

「よし、ごうかく!」

シサンに新たに芽生えた枝瘤は<砂茨>であった。

盾に砂状の土をまとい、攻撃に絡みついたり衝撃を和らげることができる武技だ。

正直、効果は今一つだが、それでも盾士には待望のスキルである。

なぜならこの<砂茨>を完枝状態にすることで、使い勝手のいい<岩杭陣>の枝スキルが発生する可能性があるからだ。

思わぬ授かりものに、シサンはこぶしを握って高々と掲げた。

続くヒンクも<技能禁制>がくる。

「ムー様は小さくてもとても勇敢です」

「ごうかく!」

かなり棒読みだったが、子どもは気にしないようだ。

ヒンクの新スキルは誘導系の<風月>。<逆巻矢>の下位の枝に当たると言われる武技だ。

<逆巻矢>は攻撃を受けてからの反撃技のため、やや皮肉屋の弓士の少年は大仰に肩をすくめてから笑顔をみせた。

アレシアとエックリアも同じく<技能禁制>だった。

「ムーはとっても可愛いわね」

「え、えっと、ムーさんはお利口さんですね」

「ふたりともごうかく!」

水使いであるアレシアは<水清>。

毒や麻痺などの体の異常を取り除く魔技である。汎用性が高く、水使いには必須とも言われている。

炎使いのエックリアは<熱線>。

対象のモンスターへ真っ直ぐに線状の炎を撃ち込む魔技で、<火弾>よりも火力が高く殺傷力は上である。

二人の少女は目を輝かせると、互いの肩を掴んで喜びあった。

最後のリッカルだけ<闘志霧散>という呪詛であった。

「えっ、オレだけチガうの? おっちゃん」

「どうやら<技能禁制>は、枝スキルが一本のみが発生条件のようだな」

「…………とても限定された条件ですね」

憂い顔のユーリルに、トールは静かに頷いた。

通常であればそんな未熟な冒険者が、このような危険なダンジョンの深い階層まで来るようなことはほぼあり得ない。

あり得る状況としては、貴族や王族などが幼い嗣子に強力な特性を付けさせる場合などだが、もしくはトールのような――。

狙いすまされたような気持ちに襲われた<復元>使いは、何も言わず顎の下を掻いてみせた。

「ムーは、えっと……、ちいさいけどよく食う?」

「ふごうかく!」

「よくねる?」

「ふごうかく!」

「もう、これでいいだろ!」

大声を上げた赤毛の少年は、ムーを抱きかかえるとそのままぐるぐるとその場で回転し始めた。

たちまちは子どもは、はしゃいだ声を上げて手を叩く。

地面に下ろされたムーと、散々回ってみせたリッカルは、よろよろと歩いてから互いにぶつかり顔を見合わせて笑いあった。

<闘志高揚>――保有者の獲得できる闘気の量が高まる。

発動:自動/効果:小/範囲:自身。

モンスターを攻撃したり、されたりする度に生じる闘気であるが、それの一回あたりの量が増える特性のようだ。

これはストラッチアも先日、技能樹をいじって会得済みである。

ちなみにトールの<復元>は、一度発生した枝瘤や特性、呪詛などはなかったことにできない。

なので残念ながら、<技能禁制>の機会は一回きりのようだ。

その日はそのまま地上へ戻り、取りこぼした特性は翌日つけることとなった。

五日目、三層と四層の蟻が再発生する。

トールたち、ストラッチアたち、ベッティーナたちの三組に分かれての殲滅作業は半日で終わった。

シサンたちの若手五人組の受け持ちは、ひたすら翠玉蟻の腹部の運搬である。

この大きく膨らんだ部分に詰まった蜜は、疲労回復に高い効果があるのは実証済みだ。

放置するのは勿体ないということで、一部を持ち帰って薬の材料に使えないか試すという話になっていた。

昼過ぎに紅玉蟻と蒼玉蟻を再び倒し、参加者全員の特性を漏れなく付けて終わる。

あとは地上に一度、戻ってお別れである。

「ありがとうございました、トールさん」

「強くなったからといって過信だけはするなよ」

「はい!」

シサンたちに続き、ベッティーナたちも引き上げである。

「それでは、向こうでお帰りをお待ちしてますわ」

「ああ、そちらも気をつけろよ」

「以前は少しばかり急いでおりましたが、そう時間を気にする必要がなくなったのは有り難いお話ですな、お嬢様」

「そうなのか? むやみに焦るのは危ないぞ」

「だ、誰のせいだとお思いになって!」

「わたくしたちが早く岩屋砦を制覇せねば、トール様方の機会が回ってこないと――」

「そこ、余計なことは言わない!」

「そうか、気を使ってくれていたのか。悪かったな」

「勝手にしたことですわ。お気になさらず」

きつい物言いながら、横を向くベッティーナの頬は赤く染まっていた。

「さて残ったのは、これだけか」

トールたち四人に、ストラッチア、ニネッサ、ラムメルラ、クガセの計八人だ。

「ボクたちもそう長く付き合えないですよ。監獄がほったらかしですからね」

監獄とは、瘴霧の妖かし沼の奥にぽっかりと口を開く廃棄された地下監獄の略称だ。

大瘴穴から発生したといわれる固定型ダンジョンで、ここを封じるのがダダンの境界街の最終目標でもある。

「ここに居られるのも、あと一日ぐらいが限度か」

「決着の時は近づいているな。そして今こそ、我の力を解き放つ時!」

高らかに宣言するストラッチアを、ニネッサが心配そうに見つめていた。