軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都、モンロイ

ひしめく建物の上を見やれば青空が広がっている。

俺たちはウルザの王都に立ち寄っていた。

王都の名はモンロイ。

異世界ファンタジー風のいかにもな城下町である。

この世界の巨大都市は初めて目にした。

アライオンでは室内の風景しか目にしていない。

城内から廃棄遺跡へ一直線だったからな……。

「ピュゥ〜♪」

「しっかり隠れてろよ」

「ピッ」

ローブ下のピギ丸はいつも通り。

数日かけて俺たちはモンロイに到着した。

追手の気配はいまだなし。

ここまで三つの村に立ち寄っている。

道中、旅人や傭兵から例の噂は耳にしていた。

五竜士の死。

消えたセラス・アシュレイン。

この二つはそこそこ耳にしている。

が、知れたのはそこまで。

各国の反応やバクオスの動きまでは不明である。

この王都では、また違った情報が得られるかもしれない。

「…………」

王都の大門を振り返る。

門はあっさり通れた。

検問っぽいことをしている感じはなかった。

血眼になってセラスを捜している空気もなかった。

壊滅したのは他国の騎士団。

ウルザとしてはそれほど犯人捜しに興味がないのだろうか。

もしくは、俺の偽装が意外と功を奏したか。

「案外、ウルザとしては隣国のヤバい騎士団が消えてくれてホッとしてるのかもな」

「ありえますね」

後ろを歩くセラスが言った。

今、彼女の顔は変化している。

名前も”ミスラ”という偽名を使っていた。

「ウルザの魔戦騎士団は他国の主戦力と比べると戦力としてはやや劣ると言われています。当然、黒竜騎士団とぶつかれば敗北は必至だったでしょう」

「今まで生き残れているのは、女神の口利きのおかげか?」

「それだけというわけでもないかと。今、ウルザには” 竜殺し(ドラゴンスレイヤー) ”と呼ばれる男がいます。騎士団と別に彼を召し抱えることで、ウルザは力を示してきました。戦争がなくとも、力の誇示は必要ですから」

抑止力ってやつか。

「けどその竜殺しといえど、五竜士を駆逐ってわけにはいなかったんだな」

「竜殺しとはいえ、さすがにシビトには勝てなかったと思います。シビトの影に隠れていましたが、他の五竜士も相当な実力者でしたし……まあ、竜殺しは生来の無精者とも噂されています。どのみち、五竜士との衝突は避けたかと」

ものすごい面倒くさがり屋なのだろうか。

さて、

「とりあえず今日の宿を探すか」

俺たちは一日だけモンロイに滞在する。

魔群帯へ入る準備を整えるためだ。

背負い袋を見る。

中には『禁術大全』が入っている。

あの本には色々な薬の製法も載っている。

魔群帯で薬の素材が手に入るかもしれない。

だから作製用の道具を揃える。

魔群帯の中でも作れるように。

これも目的の一つ。

ここは王都だ。

ミルズにはなかった道具もあるだろう。

「宿はここがよさそうだな」

ほどほどの安宿。

入る前、セラスに聞く。

「部屋は別々でいいな?」

王都は人でごった返している。

ミルズは小規模な都市だった。

門番が人の顔を覚える程度には。

近辺を行き交う人の数もそう多いとは言えなかった。

なので、歩いている者が目立った。

だから”怪しげな二人組”は目立ったかもしれない。

が、ここは人の雑多な王都。

よそ者もたくさん訪れるだろう。

今のセラスは服や顔も変えている。

ウルザが本腰を入れてあの件を捜査している空気もない。

ミルズ近辺ほど、警戒は必要なさそうだ。

もう一緒に行動しても問題あるまい。

俺はそう判断していた。

ただ、セラスは女。

男と同じ部屋ってのもな……。

やはり部屋は別々にすべきだろう。

俺にもそのくらいの配慮はある。

と、考えていたのだが――

「路銀ももったいないですし、ひと部屋で取るのが賢いかと。我が主がお嫌でなければ、ですが」

「俺も一応、男だぞ」

キョトンとするセラス。

彼女は次に口もとへ手をやった。

何か考えている顔だった。

と、セラスが咳払いした。

言葉の意味を理解したらしい。

「私は、問題ありません」

問題ないそうだ。

セラスが胸に手をあてる。

「ミルズ遺跡では同じ小部屋で寝たわけですし、特に問題ないと私は考えますが」

あの時は俺がピギ丸で気を逸らさせて【スリープ】をかけてもいるのだが。

「……そっちが気にしないなら、別にいいけどな」

「まったく気にしないというわけでもありませんが……我が主でしたら、私は問題ありません」

ま、日々の節約は叔父さんも推奨してたしな。

「じゃあひと部屋で取るか。あとで文句を言われても、取り合うつもりはないぞ? いいな?」

「は、はい」

小走りで後をついてくるセラス。

信頼する相手だとやはり警戒心は薄くなるようだ。

忠誠を誓った相手だと、なおさらなのだろう。

「…………」

ここまで薄くなるのは、予想外だったが。