軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第585話

部屋に戻ったら追加の端切れが置かれていました。オロール先生の無慈悲なる攻撃。いや、母の愛か……。忙しいのは分かるけど、針を持つ手が動かなくならない様に布端処理をしておけって事ですね。俺が納品しないとオロール先生に手習い賃のリベートが入金さないので、サボっているのが直ぐバレます。これ、小銭の徴収云々じゃなくてサボり確認システムだったんだな。

勿論、一端の職人に認定されたらリベートは徴収されなくなる訳だけど。

よし、明日から布と戯れるか……。

そして、アリさんのガーネットは 蟲人(むしんちゅ) 族に卸す事になった。特産品の魔力を帯びた布や糸を入手しやすくなるんなら、やはり手習いをしっかりやっておかないと。刺し子をしてなくても魔布はホタテビキニの透かし細工のインナーに使える。待ってそれ、マジカルビキニ!!

いや、【バサルトタートル】の腕輪の内張りに魔導刺繍の刺し子を使って、腕輪に強化石を乗せる。これっていい感じのパワーリストじゃないか。

いくらスキルで綺麗になるとは言え、流石に二日連続でお風呂に入れないのはキツイので、晩ご飯の後にサッと汚れを落としてくる事にした。お風呂に行ってる間、アンディー達はオロール先生に預けておこう。えっ、エールを飲んだ直後に入浴しても平気なのかって? そこはドワーフ、エールの一・二杯を飲んだ程度で風呂で倒れる事はない。まぁ、飲んでないのに風呂で逆上せて意識を落とす俺が言っても説得力は無いんだけどね。

そして俺がお風呂に行ってる間にあんな事件が起きようとは……。

◇◇◇◇◇

ムキュウ

(「ばーば おさけ きをつけるの」)

コッピョ コピョ

(「ボク、つつかないよ」)

「心配してくれたんだね。これからは程々にしておくよ」

ムキュウムキュウ

(「ばーば こうもり みた?」)

「コウモリかい?」

プープップー

(「ガジェット。新入りー」)

ムキュウ

(「くるらほーんと とぶの」)

「ミーシャも珍しい獣魔を捕まえてくるもんだね」

ムキュウ キュウ!

(「あたち つかまえたの」)

「おや、アンディーがかい」

流石はミーシャの獣魔だよ。まさかコウモリを捕獲させて獣魔を増やすとは、ミーシャもやるもんだね。

ムキュウ キュウキュウ

(「あたち きいたの こうもり わいんで くるくるするの」)

「ワインでクルクルかい?」

コッピョ コッピョ

(「あかいおさけで、こっぷでつかまえるよ」)

「あ、【カミチスイコウモリ】か。確かに捕獲方法に飲み残しの赤ワインの入ったグラスで捕まえるってのがあるね」

ムキュ〜ウン

(「あたち くるくる ちたいの」)

獣魔同士の序列が上だとはいえ、まさか【カミチスイコウモリ】をワイングラスで回してみたいとはねぇ。オレとしても興味は無いと言えば嘘になるね。

「アンディー、試すかい?」

ムキュウ!!

(「ばーば ちたいの」)

プープ プープ

(「職校の獣魔待機場にいるっしょ」)

「ミーシャが戻ってくるまで暫くかかるだろうしね。よし、試しに行こうか」

という訳で、職校内に行く訳になった訳だよ。ワイングラスは私物で特大サイズを持っているからね。『ユージロール・モデル』のワイングラスだ。通常の赤ワイングラスの三倍入る優れものなんだよ。

「アンディーはオレの肩に乗るかい?」

ムキュウ ムキュウキュウ

(「あたち とりさんと ふくろ はいるの」)

「いいのかい?」

ムキュウ!!

(「あたち せなか まもるの ますたーだけ!!」)

どうやらアンディーはミーシャ以外には張り付かない模様だね。残念だよ。ちょっとだけ生きた腰ぶとんに興味があったんだけどねぇ……。

スライムバックに三頭を入れ、職校に向かった。非常勤とは言え講師の権限で就業時間外でも校内には入り放題だからね。

(共)「おや、オロール先生、どうかされましたか?」

(共)「ミーシャ=ニイトラックバーグの従魔の【カミチスイコウモリ】の様子を見に来たよ。確か従魔の待機場所に預けてあると聞いたよ」

(共)「あ、あのコウモリですね。あいつは多分、妖精ハウスに居ますよ」

(共)「おや、そうなのか」

(共)「今、職校内でちょっとした人気者ですよ。外付け飛行システムの良い見本ですからね」

夜勤の講師に一声掛ける。非番の講師や臨時収入が欲しい講師が日替わりで当直するよ。オレかい? 夜勤に当たるとその日は酒が飲れないんだよ。という訳でオレは避けてるね。

コッピョ

(「さけババ、トイレだよ」)

「あ、皆で行っておいで」

トイレの後は『浄化』だったね。妖精ハウスこと階段収納の前に行くと左端の中段で【カミチスイコウモリ】が寝ていたよ。それもぶら下がりじゃなくて床でうつ伏せ寝している。ぶら下がらないコウモリと言うのもレアだね。

次元収納から『ユージロール・モデル』のワイングラスを取り出し、そこに赤ワインを注ぐ。グラスを手にし、少し赤ワイン回してから口を付ける。うん、いいね。就業時間外とは言え職場内で飲む赤ワインは背徳感がたまらないよ。

そうだ、ツマミにナッツでも食べようじゃないか。

「皆もお食べ」

ムキュウ / プープー / コッピョ

(「はーい ✕ 三」)

ナッツを一粒・二粒噛じり、赤ワインで流し込む。少しだけ飲み残し、そのまま床にワイングラスを置いた。このまま十分〜三十分ほど放置して【カミチスイコウモリ】が罠に掛かるのを待つ。

(共)「何をしてたんです?」

(共)「【カミチスイコウモリ】の赤ワイングラス捕獲法の実験だよ」

キイキイ キイキイ……

(「ちょ、グラス、……デカっ!!」)

ムキュウ

(「かかたの?」)

そこにいたのは、床に置かれたワイングラスに囚われた一匹のコウモリ。

(共)「おや、本当に捕まるんだねぇ」

(共)「文献通りですね」

ムキュウムキュウ

(「くるくる ちたいの」)

(共)「ああ、そうだったね。ワイングラスに入ったコウモリを回してから捕獲するんだったね」

くるくるくるくる。回る回る、コウモリ回る。これは楽しいねぇ。赤ワインを狙うコウモリはワイングラスでお仕置きよ! って事なのかねぇ。

キュウキュウ キューウ キューウ

(「おもいの まわすの こうもり まわすの」)

キイキイ キキィ ギイイ〜〜

「すいませ〜ん、当直の先生はいますか〜?」

おや、ミーシャだよ。何でまた職校に来たんだい? さて、このワイングラスとコウモリをどうしたものか……。