軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第526話

グェン棟梁は地上に降りてきたのにアンディーが梁から戻ってこない。安全になった梁で遊んでいるのか? それともまだ気になる個所でも見つけた?

「ミーシャ=ニイトラックバーグ、お前さんのカーバンクルは大したもんだね」

「グェン棟梁、お疲れ様です。アンディーはお役に立ちましたか?」

「ああ。それとマスターが大好きだって言ってたぞ」

「そうなんですね。嬉しいなぁ」

「終わったにしちゃあ戻って来ねえな」

「お祖父様、いつ足場は壊しますの?」

「あ、ネッコ、ドワーフ連中がはけてからだな。魔道具見りゃあ一発なのにな」

「それは百聞は一見にしかずなのでは?直接見ることで知ることも多々有りますわ」

「あ、グェン=ヴァン=ネッコ先輩、こんにちは」

「あら、ごきげんよう」

「なんじゃい、お前さん方、知り合いだったのか」

「ええ、この方はドワーフには珍しい【 魔増(マゾ) 草】マイスターですわよ」

なにそのマゾを極めし者っぽい称号。

「そいつぁ凄いな。まさか【 苦行(サドゥ) 草】もいけるんじゃねぇだろうな?」

「あ……、いけまふ」

かっ、噛んだ……、恥ずかしい。無駄に恥ずかしさ倍増させてるし。

「まぁ、 両草(りょうそう) 使いだったのね」

「エルフの血は入ってなさそうだがな。他には何がイケるんだ?」

「恥ずかしながら【虫来ず草】を少々……」

「お前さん、マジモンのドワーフか?」

「はい。ドワーフです。どの草も美味しく頂きます」

「ワハハハ、こいつぁ最高だね、『ロング=フィールド』に遊びに来い、歓迎するぞ」

草三つで謎の信頼を得てしまった。まぁ家を建ててもらう交渉に使えるなら気にしないけど。

ムキュウ ムキュウ

(「ますたー こうもり いたの」)

「ん? 何だ何だ?」

ムキュウ キュウキュウ

(「こうもり とったの」)

「アンディー、降りておいで」

キュウ

(「わかたの」)

コウモリ捕ったのって、梁にコウモリが居たってことか? そしてアンディーは草食のハズなんだが……餌にしたいって訳じゃないよな? しかし何故コウモリ?

キュ〜ン

(「あげるの」)

あげるのって……流石に俺もコウモリは食わないぞ。それとも異世界ではメジャーな美味しい食用コウモリなのか?

キィキィ キィキィ

アンディーがコウモリを銜えたまま落下してきた。そして前脚で掴み直して俺に手渡してくるし。

キィ… キィキィ

「こっ……コウモリさん、こんにちは」

キィ……

こんな時は……あっ、鑑定か。コウモリに対して『 無礼(ぶれい) コール』を使ってみる。

(鑑定)

【カミチスイコウモリ】の♂、空腹状態。

【カミチスイコウモリ】??? 前世には存在しない種類だな。異世界コウモリ、名前が名前だしチスイコウモリの仲間って事? これ、危険じゃね?

「アンディー、コウモリさんを連れてきてくれたんだね?」

ムキュウ

「折角だけど、これ、どうしよう……」

キィキィキィキィ

【カミチスイコウモリ】が弱々しく鳴き声を上げる。これだとどう見たって俺が悪者じゃないか。

「あら、【カミチスイコウモリ】ですわ」

「どうやらお腹を空かせているみたいです」

「カミチスイ…って酔っ払いコウモリじゃねぇか」

「酔っ払いコウモリ?」

「【カミチスイコウモリ】は神の血を吸うコウモリって意味でな、その神の血ってーのは赤ワインの事よ」

「えっ、じゃあこのコウモリって “ 赤ワイン飲みコウモリ ” って事ですか?」

「だな。赤ワインが有ったら飲ませてみろ、飛ぶぞ」

「えっ、今って飛ばないんですか?」

「飛ばねぇんじゃなくて、飛べねぇんだよ。手ぇ離してみな。腹が空き過ぎてんなら地面をヨロヨロするぞ」

まぁ、飛ばれて逃げられても構わないのでそっと手を離してみる。確かにコウモリは俺達から逃げようとしているんだけど、飛べずに地面をのたうち回っているわ。

「可愛そうですわ」

「でも俺も赤ワインは持ってねぇからな」

「あの……ボク少しだったら持ってます。与えてみてもいいですよね? 噛みついたりしてきませんよね?」

「噛まねぇ噛まねぇ」

『キーボックス』から取り出す振りをしながら『 次元収納(インベントリ) 』から醤油入れの魚こと【粗相豆】の鞘に入れてある赤ワインを取り出した。キャップを外して【カミチスイコウモリ】の口元に赤ワインを注いでやった。

キィ!! キィ!!

【カミチスイコウモリ】は口内に数滴注がれた赤ワインを味わっている模様。アルチュールさんに渡す報酬の赤ワインなのでそこまで質は良くないんだが。

「赤ワインをお持ちでしたのね」

「これは知り合いのクルラホーンへの報酬用に普段から持ち歩いているんです。たまたま役に立ちました」

「流石、ドワーフだな」

「あら、お祖父様もお清め用にお酒は持ち歩いてますわよ」

「神様用だ」

求められるまま醤油入れ一匹分の赤ワインをコウモリに飲ませてやる。エネルギーが満ちたのか、俺の背中をよじ登り、宙に向かいパタパタと飛び立ち……戻ってきた。

キィキィ……

俺の背中に逆さまに張り付く【カミチスイコウモリ】。そこはアンディーの指定席なんだが。

ムキュウ!! ムキュウ!!

(「ますたー せなか あたちの なの」)

キィ キィキィ

キュウキュウ キュウキュウ!!

(「こうもり すてるの せなか あたちの なの」)

キィキィ……

アンディーの剣幕に【カミチスイコウモリ】が俺の背中を明け渡す。そして背中を明け渡す代わりに俺の胸元に張り付いた。

「えぇ〜〜、ボク困るんだけど……」

キュー ムキュウ!!

(「こうもり じゃまなの えさ あげたの」)

キィ……

ムキュウムキュウ!!

(「どこか いくの!!」)

つまり、お人好しのアンディーが空腹の【カミチスイコウモリ】を憐れんで連れてきたのに定位置を奪われてお冠ってことでいいんだよね?

俺もこのコウモリ要らないし……。