軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第395話

「いやー、楽しかった楽しかった。お陰で寿命が数年延びた」

「けっこう話しましたね」

「まぁ、現実世界では十数分程度だろうけどなぁ」

「茶室の中は時間の流れが違う系ってやつですか」

「『リューグー=サザヱ時空理論』だな。異次元空間の中にある物と傍観者との間では時間の流れが違うという理論だよ」

「漫画やアニメでよくある設定ですよね。漫画『 北陶(ほくとう) の権威』でも “ 青磁と土器の部屋 ” ってありましたよね」

「土器の部屋から扉を開けて出てきた末弟が兄の髪の毛が真っ白になっていたのを見て驚くシーンが有名だったな」

「読んでたんですね」

「人間の時にね。ちょうど連載中だったし」

「俺、愛蔵版で読みました……」

ちょっとだけ気不味い空気が黄金の茶室を支配した。

「ミーシャ君、前世の食べ物は何か研究してるかね?」

「今はモヤシですね。カレーも狙ってはいますが」

「まさかのモヤシ」

「アルファルファは見つけましたよ。後、豆苗。温泉玉子は作ってみたけどドワーフにはウケませんでしたね」

「吾輩にはないチョイスだね」

「今、蕎麦と味噌を探してもらってます。蕎麦はエルフ領から輸入出来そうですね。後、ゴボウはエルフ領から一本銀貨五枚で輸入しましたよ」

「ゴボウ、高くない?」

「高いんですよ。扱いはエルフの出してくる木の根でしたけど」

「それで何を作った訳?」

「え、柳川鍋ときんぴらゴボウですけど」

「吾輩、それが食べたい」

ドジョウの手配やら何やらがあるので手に入り次第という事で納得してもらった。猫獣人は実はあまり魚を食べないのだ。そう言えば猫と言えば魚というのは前世の日本に特有な話なのだとか。世界中殆どの国の猫は魚より肉が好きなのだ。という訳で『ハポン=ヤポン』の猫や猫獣人は肉と野菜メインで生きている。勿論パンやワイン、乳製品も嗜むけれどな。

「吾輩、何か新しいビジネスネタが無いか模索しておるのだが、ミーシャ君には何か前世で使えそうなネタはないかね?」

「う〜ん、配送便ビジネスに続くビジネス案件ですか?」

「猫獣人向けので頼むよ」

「え〜〜、猫獣人の特性は?」

「新しい物に興味はあるが気まぐれ。音もなく移動が出来、身体の柔軟性はバツグン。ヒゲによる気配察知が得意。短時間労働が好ましい」

「それ、ビジネス向けじゃないですよ」

「そうなのだ。故に吾輩も困っておる」

「ミケヲさん、この世界にはメイドや執事を雇用する文化は有りますよね」

「ヒト族の貴族には一般的だね」

「それ以外には? 獣人や亜人、ヒト族の平民には?」

「メイドとして雇われる事はあっても商家以外で雇う事はそうそうないな」

「そこを突きましょう。家政婦/家政夫です」

「家政婦って、お手伝いさんとも言われるアレ?」

「それです」

「掃除がてら奥様の秘密を見つけたり、事件に巻き込まれたり、家事テクニックを伝授したり、料理を作り置きしておいてくれたりする?」

「それです」

「でも、貴族のお屋敷には住み込みのメイドが居るよ」

「なので、ヒト族の平民やヒト族以外をターゲットにします。内容は簡単な家事のサポートです」

「それなら短時間で済むか」

「後は、業務上で知り得た秘密をばら撒いたり、依頼主の財産を盗まなければ良いだけです」

「そこは魔道具や誓約魔法で縛れるな」

「ちょっと気になったんですけど、猫獣人って人より家に付きません?」

「確かにその気はあるね」

「犬は人に付き猫は家に付く。つまり猫獣人は家政婦/家政夫向きなハズですよ」

「シルキーと競合しないかね?」

「あの妖精は二十四時間常駐じゃないですか。しかも家屋を大事にしていないと憑いてくれない」

「なら構わぬか」

いきなり始まる家政婦/家政夫ビジネス。 三毛皇(みけおう) 様考案中の新ビジネス “ 家政婦/家政夫はミーたん ” 爆誕。部屋を片付けるついでに害獣や害虫も処理してくれる。戦果を玄関先に並べないでくれたらいいけどなぁ…。

「そう言えば、先日の新年飾りに添えてくれたグリーティングカード、あのイラストって前世の有名キャラクターだよね」

「はい。ヘタクソですけど」

「大丈夫、結構似てたから。 薄(・) い(・) 本(・) で出せるレベル程度には似てた」

「ミケヲさんは参戦してたクチですか?」

「吾輩は宛名カードを入れて為替を使った通販派よ。買っていたのは健全本だからな!! ナツメグはよく参加していたそうだけどな……」

ミケヲさんの言葉の端々に時折混じるナツメグさん情報。そしてそれ、いつの時代の通販方法ですか?

「しかし、あのネズミをあの方法で表現するとは。まさか九曜紋の中心部分と北西と北東を塗り潰すやり方が有るとは、吾輩、脱帽した!!」

九曜紋というのは家紋の一つで中心の円を八つの円が取り囲む図柄だ。八つの円うち六つの円は白抜きのまま。中心部と北西(=左斜め上)と北東(=右斜め上)の二つの円を黒く塗りつぶすだけで何故かネズミっぽく見えるのだ。あの日の俺は黒い丸を三つ配置するより小粋かもしれないと思い、清書する直前に仕様変更したのだ。

「まぁ、 ア(・) レ(・) の扱いは無駄に意識しますからね」

「ここは地球じゃないのにな」

「お代官様、念には念でゴザル」

まぁ、無駄に刷り込まれた恐怖と言うものは転生しても拭いきれないものなのだ。

「そうそう、あのマークなのだがね、吾輩は鼠獣人のトップに献上したいのだがいいかね?」

まぁ、俺には関係ない話なのでOKという事で。鼠獣人のヴィヴィアンさんに献上するのね。黄色いのローブがよく似合う方なのだとか。