作品タイトル不明
第378話
アリサお姉ちゃんが原石を吟味している間にこちらは【 運魔(ウマ) 石(せき) 】の見せ合いっこだ。
「これが私の【 運魔(ウマ) 石(せき) 】だよ」
そう言って見せてくれた【 運魔(ウマ) 石(せき) 】は全部で三つ。
「これは最初の子の【 運魔(ウマ) 石(せき) 】だね。もう天国へ旅立ってしまったが。こっちは死んだ子から取り出した【 運魔(ウマ) 石(せき) 】。最後は相棒が渡してくれた【 運魔(ウマ) 石(せき) 】だよ」
死んだ個体から取り出すと灰色の【 運魔(ウマ) 石(せき) 】が採れるのだという。
「ボクのはこの二つです」
「綺麗な【 運魔(ウマ) 石(せき) 】だね。見せてくれてありがとう。二頭を大切にしてあげてね」
「はい。勿論です。二頭とも大切な仲間、いや家族なので」
「使わないとは思うけど私のところでは馬鎧も作ってるからね。必要なら発注していいよ」
「はい。あの…、その馬鎧なんですけど、非金属というか革や布で作ったのもお願い出来ますか?」
「私は馬鎧の鍛冶師だけど、革や布で作る馬装は姉が作っているよ。姉は多分、ミーシャ=ニイトラックバーグの【 運魔(ウマ) 】に何かしら納品してると思うよ」
「お姉さんが馬装具師なんですね」
「そう。姉はジョーヌ=レーンと言うんだ。コーン=ポーターの所にお嫁に行ってるよ」
馬関係はどうしてもポーター氏族と関わっちゃうのか。俺も一応関わりあいが有る訳だけど。
「どうしてまた非金属の馬鎧が欲しいの?」
「それは、戦場には出すつもりは一切ないんですけど、沢山の花飾りや鈴を付けて煌びやかに飾り付けた非金属鎧を着せてみたくて…です」
イメージは前世の岩手のチャグチャグ馬コです。
「それは素敵だね。おめかしした【 運魔(ウマ) 】達が練り歩くお祭りとかが有ってもいいかもしれないね」
「ボクが提案するよりジョンノ=レーンさんが馬車ギルドや馬車組合に提案した方が通りそうです」
「いやいや、そんな事は無いと思うよ。何せ君は【 運魔(ウマ) 】二頭持ちだしね。それに誰がどうとかより、馬や【 運魔(ウマ) 】達の為のお祭りは素敵な話だよ」
「ミーシャちゃん、お話終わったー?」
「鐘割りレディがお待ちかねだ。また話を聞かせて欲しいな」
「はい。ボクで良ければ」
「【 運魔(ウマ) 石(せき) 】仲間だから大歓迎だよ。それより私は君の背中の生きたリュックサックも気になるんだけどね」
ムキュウ ムキュウ
「グライダー・カーバンクルのアンディーです」
「こんにちは」
ムキュウキュウ
「いいご主人様に出会ったんだね」
キュウキュウ
アリサお姉ちゃんは大量の在庫の中から候補の原石をピックアップし終わっていた。リンド=バーグさんは一つ二つ…って言ってたけど、ここに有る在庫は五十・百を超えている。ぶっちゃけ石オタクかよ…ってレベルを超えているなぁ。仕事で使う訳だから種類も数も要るのは分かるけど。
「凄く多いから目移りしちゃった」
「俺もこれほどまでとは……」
「同じ原石ばかりだけどね」
「これをどう使うんですか?」
「ん? ミーシャ=ニイトラックバーグは強化石の研磨は初めてなのかな?」
「はい、恥ずかしながら。ボクは研磨が好きなだけなので……」
「強化石は分かりやすく言うと一種のエンチャントだね。装備するとプラス修正や属性追加とかの効果が発現する。それは理解できる?」
「はい」
「漫然と研磨すると、この【 血肉石(コルネリア) 】は “ なんとなく攻撃力が上がっている ” 程度なんだけど、実は原石ごとに上がり幅は違うんだよね」
「上がり幅に差が?」
「厳密に数字で出る訳ではないのであくまで体感値なんだけれども。そうだね、この【 血肉石(コルネリア) 】だけど例えば剣の鍔に未研磨で取り付けたとしようか。それだと体感で何となく攻撃力が上がったかな? と感じるハズだよ。数値で表したら攻撃力が一〇〇ある剣が一〇二くらいになった感じだね。そしてこの【 血肉石(コルネリア) 】はキッチリ研磨出来れば攻撃力が六は上がる。体感でちょっと攻撃力が上がったのが分かるよ」
「その差がどう影響しますか?」
「例えば魔法で攻撃力が二倍になる効果が付与されたとしよう。素の剣の攻撃力は二〇〇。未研磨の【 血肉石(コルネリア) 】が付けられた剣は二〇四くらいで、キッチリ研磨した【 血肉石(コルネリア) 】が付けられた剣は二一二になる。この差が戦闘にどう出るかは鐘割りレディなら分かるよね?」
「例えがちょっとアレだけど、かなりの差だよね。むしろ攻撃力の弱い武器の方が露骨に差が出るよ」
明確にレベルとか攻撃力とかが数値化されてないから分かり辛いだけで、補正値はちゃんと仕事をしてるのか。
「何となく把握しました。それでボクはこの【 血肉石(コルネリア) 】の山を見てもどれが補正値が大きいとかは分からないんですけど、ジョンノ=レーンさんには見えているんですか?」
「それが恥ずかしながら私にも分からないんだよ。経験則で品質の違いで大体このくらい補正値が入るかな……レベルだよ」
「鑑定や看破のスキルが有ってもですか?」
「鉱石や原石だと分からないね。補正値が入る入らないは分かるけど。鑑定の魔道具を使っても明確な数値は出てこない。ただ、研磨されると見えてくるから、そこは不思議としかいえないのだけれども」
「研磨済なら分かるんですね」
「面倒だから全部研磨しないのが普通だと思うよ。依頼があれば研磨に出すだろうけどね。私の場合は【 運魔(ウマ) 】用だから怪我をしない様に研磨してから使うけど。まぁ【 運魔(ウマ) 】の場合は補正値を揃えなくてもいいから」
「えっ?」
「だって【 運魔(ウマ) 】は脚が四本でしょ? 四本で調整してあげればいいからね。それに脚毎に強弱も違うからね」
城詰めの兵士用に同じ補正値の強化石の大量納品が必要といったケースとは違う訳か…。